>  >  > 【食虫植物】アルドロバンダ―0.01秒の世界
【ワンダフル食虫植物】

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――食虫植物、人呼んで肉食植物……。それは、虫を食べエネルギーを補給する植物のコトである。植物の形状も千差万別なら、虫の捉え方もさまざま。そんな凶暴だけど意外とカワイイ肉食植物たちの、マニアックで華麗なる生態と周辺事情を紹介する。

 食虫植物は虫を誘引し、消化・吸収する植物の総称で、「ハエトリソウ」「サラセニア」「ウツボカズラ」など、12科19属、その数およそ600種類以上、世界中の湿地や岩場に自生し、捕えた虫を養分の一部として補っている。

 その中には、水中に棲む食虫植物もいるので、今回はその生態を紹介しよう。

 その名も「Aldrovanda vesiculosa(アルドロバンダ ベシキュロサ)」。

 根をもたず、水中を漂い、ハエトリソウに似た2枚貝状の葉で、「ミジンコ」や「ボウフラ」などの生物を挟み込み、消化・吸収する。いわば水中のハンター、ジョーズのような存在だ。

動画は、You Tubeより。1:43捕らえられた虫が葉の中で動いている
動画は、You Tubeより。捕虫葉に捕まり、もがく虫
動画は、You Tubeより。1:40あたり、虫を捕らえる瞬間が視えるだろうか?

 1本の茎に車輪のような形の葉が連なるように生え、(その姿から、英名は「Waterwheel plant」と付けられている)その葉は、捕えられた虫がもがく様子が見えるほど透き通っている。

 捕虫葉が閉じるスピードは映像でわかるように、ハエトリソウよりもずっと速く、0.01秒ほど。

■日本にも自生していた「Aldrovanda vesiculosa」

 このような恐ろしい生態をもった「Aldrovanda vesiculosa」だが、実際は非常に繊細で儚い存在である。

「アジア・ヨーロッパ・オーストラリア」など南北アメリカを除く世界中に広く自生していたが、水質汚染により、年々その数を減らしている。

 日本でも、かつては「利根川・淀川・木曽川・信濃川」に自生していた。

 和名を「ムジナモ(狢藻)」といい、発見したのは植物学者の牧野富太郎だ。

 牧野は、明治23年に現在の江戸川区北小岩の、江戸川河川敷の用水池で、柳の実を採集していた際に偶然発見したという。そして、狢(ムジナ)の尾に似ていることから、その名がつけられた。牧野は発見した時の様子をこのように書いている。
 
「私はそこのヤナギの木に倚りかかつて、その枝を折りつつ、ふと下の水面に眼を投げた刹那、異形な物が水中に浮遊しているではないか。『はて、何であろうか』と、早速これを掬い採つて見たら、一向に見慣れぬ一つの水草であつたので、匆々東京に戻つて、すぐ様、大学の植物学教室に持ち行き、同室の人々にこの珍物を見せたところ、みな『これは?』と驚いてしまつた。時の教授矢田部良吉博士が、この植物につき、書物の中で、何か思いあたることがあるとて、その書物でその学名を捜してくれたので、そこでそれが世界で有名なアルドロヴァンダ・ベンクローサであることが分つた」
 (『ムジナモ発見物語り』牧野富太郎(青空文庫)より
 
 昭和41年、埼玉県の羽生市宝蔵寺沼が日本最後の自生地として、国の天然記念物指定を受けたが、その年に台風被害によって絶滅してしまった。現在では「羽生市ムジナモ保存会」が中心となり、人工増殖したムジナモを年に2回放流し、自生地の復元につとめている。

 水中に潜み、虫を捕え、食するタフな生態を持っていながら、保護されるべき対象となっているのが哀しくもある。

動画は、You Tubeより。美しき「Aldrovanda vesiculosa」の姿スライドショー

■木谷美咲(きや・みさき)
 1978年東京都生まれ。食虫植物愛好家/著作家。著書に『大好き、食虫植物』(星野映里名義/水曜社)『マジカルプランツ』(山と渓谷社)『月の光で野菜を育てる』(永田洋子氏との共著/VNC)。「タモリ倶楽部」(テレビ朝日)「中川翔子のマニア☆まにある」(日本テレビ系)などTV、ラジオ、雑誌出演多数。

『大好き、食虫植物。』

『大好き、食虫植物。』

“ベシキュロサ”って毎日言いたい

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