>  > 記憶が定着する劇場!? ~記憶術の歴史~

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 本や雑誌、インターネット、そしてSNSによって膨大に情報が飛び交う現代社会において、その情報の真偽をチェックする判断力は重要だ。しかし、ウソかホントかばかり気にしていては「ケツの穴が小さいヤツだ」「細けえことはいいんだよ」などの誹りは免れない。むしろ、真実よりも甘く、大事なウソを楽しめてこそ、余裕がある大人として認められるのではないだろうか。本連載「教養としての神秘主義」では、そんな大人のためのミステリー情報をお伝えしていく――。

教養としての神秘主義 第4回
記憶術者たち


 長い正月休暇が明けて、大学受験を控える高校生にとってはセンター試験が目前に迫っている今日この頃。大学入試制度をめぐっては、平成30年以降に制度改革が予定されており、日本政府は今後“記憶力重視の試験制度”を見直し、「人物本位」の選抜へとシフトしていくという。

 とはいえ、来春大学入学を目指す受験生にとっては今の試験傾向が重要である。本番の日が近づくにつれ緊張感は高まり、藁にもすがる思いで漫画雑誌などに広告が出ている「記憶術」などの教育商材に手を出す人もいるかもしれない。


■記憶力の超人

 受験生たちが暗記に四苦八苦する一方で、世の中には超人的な記憶力を持つ人物が存在する。

「どれだけ長いテキストでもたった1度読んだだけで暗唱できる人」「1度曲を聴くだけでその音楽をピアノで再現できてしまう人」…こうした「記憶の天才たち」は歴史を紐解くと珍しくはない。

 6世紀に中国の僧侶、慧皎が記録した中国仏教の偉人伝『高僧伝』(岩波文庫 全4巻)には、長大な仏典を暗記してしまう天才たちのエピソードが豊富に書かれている。また、20世紀最大のピアニストのひとりと言われるスヴャトスラフ・リヒテルは幼少期から1度見た楽譜はすべて暗譜で演奏できたと言われている(晩年のリヒテルは、必ず楽譜を見ながらステージに立っていたが)。

 こうした天才的な記憶力の持ち主の記憶メカニズムは、常に科学研究の対象にもなってきた。旧ソ連の神経学者、アレクサンドル・ロマノヴィチ・ルリヤが記した『偉大な記憶力の物語: ある記憶術者の精神生活』(岩波現代文庫)によれば、ある記憶術者は共感覚(音や文字などの認識と共に、色や匂いなどの異なる感覚が生じる知覚現象)を持ち、数字や文字を共感覚で生じたイメージと結びつけることで記憶をおこなった、とある。

 また、1920年代からルリヤが研究したシィーという記憶術者は、20の数字からなる表を35-40秒で完璧に覚えてしまったと言う。彼にはやはり文字や言葉からイメージを得る共感覚者であった。そして、シィーには言葉や文字がこんな風に「見えていた」という。

およそ2~3歳のころ、古代ヘブライ語でお祈りのコトバを習いはじめたとき、私はその意味がわかりませんでした。そして、それらのコトバは、私には、水蒸気の雲や水煙に見えました……

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