>  > 自動演奏機械はベートーヴェンの夢をみるか? ~78本の指でギターを弾く「Z-MACHINES」の登場~
教養としての神秘主義

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 本や雑誌、インターネット、そしてSNSによって膨大に情報が飛び交う現代社会において、その情報の真偽をチェックする判断力は重要だ。しかし、ウソかホントかばかり気にしていては「ケツの穴が小さいヤツだ」「細けえことはいいんだよ」などの誹りは免れない。むしろ、真実よりも甘く、大事なウソを楽しめてこそ、余裕がある大人として認められるのではないだろうか。本連載「教養としての神秘主義」では、そんな大人のためのミステリー情報をお伝えしていく――。

教養としての神秘主義 第8回
機械による音楽演奏の歴史


 テクノ・ミュージック・シーンにおいて、Aphex Twinとともに超高速ドラムンベースで一世を風靡し、今なお根強い人気を誇るミュージシャン、Squarepusherの新譜が面白そうだ。

 大規模レイヴ・イベント「electraglide 2012」に出演したSquarepusherが、暗闇のなかに設置された巨大なLEDスクリーンから放たれる白い光と音楽との完全な同期によって、ライヴ・パフォーマンスの新境地を切り開いたのは記憶に新しい。

 そのSquarepusherが4月に発売を予定しているアルバム『Music for Robots』は、なんと、アルコール飲料ブランド「ZIMA」が開発した自動演奏ロボット「Z-MACHINES」との“共演”だという。音楽とアートを越境する試みは、このアルバムにも通じている。

■自動演奏ロボット「Z-MACHINES」とは?

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78本の指でギターを弾くロボット「Mach(マッハ)」YouTubeより

 78本の指でギターを弾くロボット「Mach(マッハ)」、背中の22個のドラムを叩きまくる「Ashura(アシュラ)」、目から放たれるビームと無数の関節でピアノやシンセサイザーを演奏するキーボードロボット「COSMO(コスモ)」の3体で構成される自動演奏ロボット「Z-MACHINES」。人間の身体能力を超越した演奏能力は、類い稀なテクニックをもつベーシスト、Squarepusherの共演者として申し分ない。

 もともとドラムマシンやサンプラーを操作しながらの超絶技巧のベース・プレイでオーディエンスを湧かしてきたSquarepusherの音楽には「人間と機械との共演」という要素が見いだせる。そうした意味では、今回の「ロボットとの共演」は原点回帰的なものとも捉えられるかもしれない。アルバムの発売まで、昨年夏に「Squarepusher & Z-MACHINES」名義で発表された『Sad Robot Goes Funny』を聴いて、期待を盛り上げておきたい。

動画は、「Sad Robot Goes Funny」YouTubeより


■人間ミュージシャン×自動演奏機械の歴史

・オーケストリオン

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画像は、19世紀ドイツの自動演奏楽器メーカー、ウェルテ社製のオーケストリオン

 さて、超絶技巧のミュージシャンと自動演奏機械の共演といえば、アメリカのジャズ・ギタリスト、パット・メセニーの2010年のアルバム『Orchestrion(オーケストリオン)』が思い出される。オーケストリオンとは19世紀後半に欧米で人気を博した自動演奏楽器だ。ピアノや弦楽器、オルガン、打楽器などを組み込んだこの複雑な機械は、コインをいれると、楽曲が記録されたパンチカード式のロール紙に従って音楽を演奏し、人々の耳を楽しませた。

 オーケストリオンは、好きな楽曲を好きなときに聴かせる夢の機械だった。しかし、オーケストリオンの役目は蓄音機やラジオに取って代わられ、ほとんど忘れられた存在となった(今では美術館に保存される貴重な工芸品扱いであり、日本では河口湖オルゴールの森美術館や、長野県東御市立梅野記念絵画館でその演奏を聴くことができる)。

 パット・メセニーが共演したオーケストリオンは、この楽器を現代の技術で蘇らせたものだ。19世紀のオーケストリオンが空気圧で演奏を制御していたのに対して、現代版オーケストリオンは電気制御の大がかりな舞台装置のようである。19世紀のオーケストリオンがコンパクトにまとめられていたのに対して、演奏装置を取り付けられた様々な楽器が並ぶ様子は、Z-MACHINESのインパクトにも勝るとも劣らない。

動画は、「ORCHESTRION - An Excerpt from The Orchestrion Project」YouTube

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