>  > 現代における「妖怪と幽霊の違い」とは?

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座敷わらし

初出 日刊サイゾー 2011.09.21

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『本当にいる日本の「現代妖怪」図鑑』
(笠倉出版社)

UMA、心霊現象、都市伝説、オカルト......科学や情報技術が発達した現代でも、今なお話題に上がり続ける真贋不明な有象無象を、"摩訶不思議"のオーソリティー・山口敏太郎が縦横無尽にぶった斬る!

 昨今、アニメや小説に見られた過剰な妖怪ブームも落ち着き、妖怪や怪談が趣味の一分野として定着した感がある。そのせいだろうか、講演会やライブで地方に行ったりすると妖怪や幽霊、怪談に関して質問を受けることがある。

 よく聞かれるのが、「妖怪と幽霊の違い」である。これに関しては、過去に柳田国男が当時の妖怪の概念である「おばけ=妖怪」という言葉を使って、「おばけ=妖怪」と「幽霊」の違いを分かりやすく説明している。

 柳田の定義付けによると、幽霊は、場所に関係なく特定の相手の前に姿を現すが、妖怪は特定の場所に住み、誰でも分け隔てなく脅かすという。つまり、出現地域が定まっているのが妖怪であり、特定の相手に対して付きまとうのが幽霊であるわけだ。

 また、柳田は出現する時間によっても違いを指摘している。「おばけ=妖怪」は、黄昏時やカワタレドキに姿を現し、幽霊は丑三つ時に姿を現すと結論付けたのである。

 だが、この柳田による妖怪と幽霊の違いは、あくまで昭和初期、中期の概念であり、今となっては大幅なずれを感じてしまう。特定の場所に縛られ、誰それ構わず驚かす幽霊もいるし、出現時間に縛られることなくアトランダムに出現する。いや、そもそも平成の時代にいたっては、幽霊はともかく妖怪の目撃談は非常に少なくなっている。

 そこで、筆者・山口敏太郎は以下のように説明している。

「妖怪はオフィシャルな存在であり、相手が誰でも時間に関係なく人間を驚かす。幽霊はプライベートな存在であり、恨みや妬み、愛情など個人的な感情を持っている相手の前に時間に関係なく出現する。つまり、出現する動機が社会の構成員全員に無差別に姿を現すのが妖怪であり、あくまで個人的な理由により出現するのが幽霊であるのだ」

 このように説明すると、以下のような反論が返ってくる。

「妖怪や幽霊は時間に関係なく出現することは分かったが、俗に心霊スポットに出現する幽霊は、幽霊なのにある一定の場所に出現し、不特定の人間を脅かすモノもいる。これはなぜなのか」

 これは簡単である。既述したが"妖怪の目撃談が減っている"という事実は、深く掘り下げていくと"かつて妖怪扱いされた存在を、現代では幽霊扱いしている"といえるのだ。

 平たくいえば、現代の幽霊目撃談の中には、多くの妖怪目撃談が含まれている。

 話を戻して説明してみよう。幽霊なのにある一定の場所に出現し、不特定の人間を脅かすモノもいる、という概念は最初から間違えている。一定の場所に出現し、不特定多数の人を脅かしている時点で"妖怪化"しているのだ。

 つまり、個人的な感情(恨み、妬み、愛情)などを持って出現し続けていた幽霊は、時代が進み、その人が生前に感情を抱いていた相手も全て死に絶え、"○○○○さんの幽霊"と呼ばれていたものが忘れ去られ、単なる"女の化け物""男の化け物"となってしまう。こうなった場合、既に個人の霊魂ではなく、妖怪化しているわけだ。

 こういう変換はよく起こる。雪山で死んだ女の幽霊はいつしか「雪女」に、旧家に出現する子どもの幽霊は「座敷わらし」に、○○さんの人魂はいつしか「怪火○○」に変化していく。あくまで山口敏太郎流の呼び方だが、これを「幽霊の妖怪化」と呼んでいる。

 だが、現代人はこの妖怪化した幽霊さえも、幽霊と解釈しており妖怪の減少化につながっているのだ。

 結論をいえば、かつて妖怪と呼ばれたはずの固有名詞がとれた古い幽霊も、現代では依然として幽霊扱いされており、幽霊と妖怪の違いが希薄になっているが、出現する動機で、幽霊と妖怪は区別できる。妖怪(妖怪化した幽霊含む)は一定の場所に留まり、誰でも彼でも脅かすが、幽霊は生前感情を抱いた特定の相手の前に出現する。また、24時間人間が生活している現代では幽霊も妖怪もフルタイムの出現が可能になっている、ということである。あなたが聞いた話は、妖怪談だろうか幽霊談だろうか。
(文=山口敏太郎)

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●やまぐち・びんたろう
1966年7月20日生まれ、徳島県出身。血液型AのRHマイナス。作家・漫画原作者・ライター・オカルト研究家などさまざまな肩書を持つ。UMAや心霊・都市伝説など、あらゆる不思議分野に精通する唯一のオールラウンドプレイヤー。

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