>  > アップルストア・アイドル誕生物語【前編】

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 6月13日の午前10時。東京都渋谷区に「アップルストア表参道」がオープンした。国内では8箇所め、東京では3箇所めにあたるこの日本屈指のオシャレなエリアに開店した店舗では、先着5,000名へのTシャツプレゼントや限定商品の発売効果もあってか、徹夜組も出現。およそ1,000名が開店前に並ぶ大盛況だったらしい。

“ハングリーであれ 愚か者であれ”

 アップル創業者の故スティーブ・ジョブスが、2005年にスタンフォード大学の卒業生たちへ向けたスピーチを締めくくった有名なフレーズだ。

 このジョブス氏のメッセージを、愛して止まないアップルストア店内で実践し続けた少年がいる。彼の名は、トレバー・モーラン。1998年9月30日カリフォルニア生まれの現在15歳だ。トレバー君は元々、あのストア店員たちのフレンドリーなスマイルを苦笑に変えずにはいられないような“小さなゲリラパフォーマー”だった。そんな彼が2013年、プロのアイドルシンガーへと昇り詰めた。

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Trevor Moran「Facebook」より

 トレバー君はいかにしてスターへの階段を駆け上ったのか? これは、どこにでもいそうな、ちょっとやんちゃで自己顕示欲旺盛なティーンエイジャーが、アメリカンドリームを掴むまでの奇跡の物語。


■YouTubeとアップルストアが少年の人生を変えた

 トレバー君は、幼い頃から歌とダンスが大好きだった。彼の回想によれば、家族や友人知人の前で、しばしば“トレバー・コンサート” を催していたという。陽気でちょっぴりナイーブな雰囲気の彼ではあるが、やっていたことは 「ドラえもん」の“ジャイアン・リサイタル”と同じである。

 7歳の時、彼はYouTubeと運命的な出会いを果たす。すでに自前のコンサートに飽き足らなくなっていた彼は、元々アップルのプロダクトが大好きだったこともあり、「itr3vor」のクレジットで毎日オリジナルビデオを作り、YouTubeに投稿し続けた。しかし、閲覧数、コメント数ともに0の状態が続いていたという。

 そんな冴えない独り遊びを続けるさなか、トレバー君は素晴らしいアイデアを思いつく。歌+ダンス+アップルストア=アップルストア・ダンス。つまり、彼の大好きなものを組み合わせたパフォーマンスだ。「コイツはイケる」と踏んだ彼はアップルストアへと赴き、店内に設置されたデモ機でオリジナルビデオを作成する。内容は、人気のダンスミュージックにのせて歌い踊る姿をMacの内蔵Webカメラで録画した、言わば口パク芸だ。「周りの誰の目にもクレイジーで奇妙に写ったと思う」と本人が言ってはばからない映像を、トレバー君はYouTubeにアップした。

 数日後YouTubeにアクセスした彼は、自分のページが恐るべき事態になっていることに気付く。アップルストアから投稿したビデオの再生数が526,000回を記録、さらに5,000を超えるコメントが寄せられていたのだ。それは、いくら投稿しても鳴かず飛ばずだった彼にとって、思いも寄らない反響だった。再生数はその後60万、70万、80万と増加し、とうとう100万回を突破。「それまで経験したことのない最高の気持ちだった」と彼は後に語っている。

 彼のYouTubeチャンネルにアップされている最も古いアップルストア・ダンスは、2009年12月、家族と訪れたニューヨークで録られたものだ。

最初の投稿「YouTube」より

 当時、彼はまだ11歳。踊りはぎこちなく控えめだ。周囲を見回しても、トレバー少年を気に掛ける人はほとんどいない。チラ見する店のスタッフと、からかい半分で一瞬ダンスに加わる若い女が1人いるだけである。隣にいる黒い上着の大人はガードマンだろうか? 曲が終わる前に切り上げたトレバー君は、「買い物に行かなくちゃ、じゃあね!」と言って撮影を終了している。

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