死にそうになった時に現れる「第3の男」?多くの者が“見た”と証言

■「第3の男」とは何者か

 1914年、大規模な探検チームを組織し当時最新鋭のエンジンつきの木造帆船「エンデュアランス号」駆って意気揚々と南極大陸横断の旅に出たシャクルトン探検隊だったが、船の遭難により旅の計画が頓挫してしまう。

 それでも長きにわたって南極で救援を待ちながらサバイバルを続けたシャクルトン探検隊ではあったが、1916年のある日、シャクルトン卿はメンバーと共にエンデュアランス号に積んであった救命用手漕ぎボートで南極の海に乗り出したのだった。

 しかし、その航海も辛酸を極めるものであった。一縷の望みにかけて船を漕ぐシャクルトン卿と2人の乗組員には、さらなる試練が待ち受けていた。南極大陸の沖合いでボートが氷に囲まれ進路を塞がれてしまったのだ。

 疲れ果てていた3人は意識が朦朧としながらも、その時、もう1名の隊員の存在を認めたという。その4人目の隊員はボートの放棄を指示し、3人を叱咤激励しながら大陸に繋がる氷の上を先頭をきって歩きはじめたのだ。

 25マイルにも及んでいたことが後に判明したこの壮絶な強行軍の間、3人は黙々と歩き一言も口を開かなかったが、全員がこの「第3の男」(このケースでは「第4の男」)の存在を認識していたという。そして、旅路の果てに見えてきた捕鯨船の港湾施設に辿り着き、一命を取りとめたのである。

「こっくりさん(子供たちの心霊的な遊戯)なんていうものを遥かに超えた心霊の存在を、我々はこのときはっきりと感じていんだ」と、シャクルトン卿は後日、このときの体験を語っているそうだ。

 実はこの「第3の男」は危機に直面したことのある冒険家や軍人を含む船乗り、ダイバーや登山家などにとっては、決して珍しい“同士”ではないようだ。探検中に時折現れるこの「第3の男」は、姿がはっきり見える時もあれば、目にはまったく見えない時もある。肉声が聞こえる時もあれば、ジャスチャーなどでしか表現を行わないときもあるという。いずれにしてもこの「第3の男」はいつも彼ら冒険家たちを安心させ、安全な場所へと導いてくれるのだという。


■911テロ現場にも現れた「第3の男」 

「第3の男」が現れるのは苛酷な自然環境の中ばかりではないようだ。倒壊するビルの中でも「第3の男」の存在を感じた人々がいる。

 2001年、ニューヨークを襲った911テロ事件において、ワールドトレードセンターから救出された者の決して少なくない数の人々が、何らかの“存在”によって安全な場所へ導かれたと話しているのだ。

 旅客機の衝突後、ある者はビルの中で炎に阻まれて逃げ道を失ったと思われたものの、何者かから「通りぬけろ!」と促されて炎の中を突き進み、階下に下りる階段を見つけて無事に非難したという。

 また、事故後に救出されたある者はガレキの下で何者かに慰められたと言い、同じく崩落したコンクリートの塊に囲まれて身動きできなくなっていた者もまた救助されるまでの間、教会の修道士のような格好をした者から勇気づけられたと話している。


■それは絶望の中で生み出された捏造物なのか?

 この「第3の男」現象を、決して無視できない数の人々が語りはじめると、科学者たちは“彼”が現れる状況に着目したのだった。

 例えば作戦行動中の兵士は恒常的に睡眠不足の状態にあるであろうし、登山家は高地の低気圧と低酸素状態に身をさらしている。また船舶事故では、逃げ出した者は救出されるまでの間、直射日光に照らされ極度の脱水状態を余儀なくされ幻覚を見やすいといわれている。さら南極大陸や雪山などの見渡す限りの一面の雪は時に幻覚をもたらすという。

 スイスの神経学者たちは「第3の男」現象を、自他の区別を担う脳の「側頭頭頂接合部」がうまく働かなくなったために起こる症状であると考えている。この研究のリーダーであるオルフ・ブランケ氏は、酸素の不足などによりこの側頭頭頂接合部が機能不全に陥ると、思考に混乱をきたし特に自分と他者との境界線が曖昧になるのだという。これによって「第3の男」現象が説明できるということだ。

 ジャーナリストのジョン・ゲイナー氏は「第3の男に関する」多くの記録から「人を助けない第3の男はいない」ことを発見した。もし「第3の男」が単なる幻覚だとしたら、なぜ現れるときは決まって助けてくれるのか? またなぜこんなにも人に安心感を与えリアリティのある存在として認識されるのか…? 

 科学者はそれもまた脳の奥の働きによるものだと考えているようだ。絶望的状況に直面した人間は、ショックを和らげるために自らの脳内に安心できる指導的な人物を思い浮かべて心の拠り所にするのだという。

 しかし、科学者でありながらも異なる意見を持つ者もいる。ペンシルバニア大学のマーサ・ファラー指導教官はこう語る。

「我々はすべての物事が化学や生物学、物理学で説明できるものでないことを認める必要があります。そして説明できないものを科学の名の下にいたずらに推測すべきではありません」

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