かつての熱狂は取り戻せない? エヴァンゲリオンと90年代の古臭い関係

 というのも、『エヴァ』は、2000年に起こった「セカンドインパクト」で人類の大半が死滅したあとの世界が描かれているからだ。舞台は2015年。人類の運命は21世紀最初年である2001年に産まれた14歳の子どもたちに託されている。つまり、アニメ版が放送された95~96年から見た「近未来」が設定されているのだ。

 これに対し、新劇場版の製作が開始されたのは2006年。すでにセカンドインパクトも過ぎ去ったあとの世界にまで現実世界の時間が進んでしまい、近未来という設定が霞んでしまった。整合性を付けるためか、最新の新劇場版である『Q』は時を14年進めた、2029年を舞台としている。

■監督の熱も、90年代で終わったのか?

『AIR/まごころを、君に』(’97)に登場する実写パートは、庵野秀明監督が翌年に実写映画に初挑戦した『ラブ&ポップ』を連想させる。97年の夏休み、『劇場版エヴァ』の結末にファンが右往左往している時、監督はすでに次の仕事に取りかかり、東京都内で女子高生を撮影していた。

 この『ラブ&ポップ』は、村上龍の小説を原作とする映画なのだが、当初はテレビ東京の深夜帯のドラマとして連続してオンエアされる予定だったようだ。ちなみに、『エヴァ』にはシンジのクラスメイトとして相田と鈴原という人物が登場するが、両名は村上龍の小説『愛と幻想のファシズム』(講談社)に登場する政治結社のメンバーから取られたという。

 90年代は誰も彼もが『エヴァ』の熱にやられていたように思う。『エヴァンゲリオン新劇場版』は一作目以降、順調に興行収入や人員を伸ばしてはいるが、90年代のような社会現象を巻き起こすことはないのだろう。
(文=平田宏利)

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