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危険ドラッグ

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川口友万

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製薬会社

 危険ドラッグは文字通りに危険な薬物だ。あれはそれまで合法ハーブや脱法ハーブといった名称で呼ばれていたものとは、まったく完全に別物である。

■恐怖の体験! 危険ドラッグを吸引した!

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 私は今の規制がされる前に吸った。ハーブ自体の見かけは、それまで売られていた合法ハーブ類と変わりなかった。乾燥した緑色の植物の葉である。価格も同じだ。パッケージも大差ない。だから中身が違うとは思わずに買った。それまで何度か合法ハーブは試していたが、酒を飲む感覚で安心して使っていた。合法ハーブの酩酊は酒とは別ものだが、危険を感じることは一度もなかった。せいぜい気分が悪くなるぐらいである。しかしこれは違ったのだ――。

 タバコに混ぜ、吸って30秒である。30秒までは覚えている。30秒後、私は近所中に響き渡るほどの叫び声を上げ、暴れたらしい。その間の記憶がまったくない。私は完全に脳の中の幻覚に入り込んでしまっていたのだ。現実は覚えていないが、見ていた幻覚の断片なら覚えている。思い出すのも恐ろしく、言いたくない。従来品ではそんなことは起きなかった。正気に戻るのに1晩かかった。正気に戻って、その間の記憶が完全になくなっていることを知り、血の気が引いた。これは死ぬ、と思った。

 今年6月に起きた池袋の事故では、危険ドラッグを吸引したドライバーが歩道に突っ込み、通行人を殺傷した。1人が死亡、6人が重軽傷を負った。犯人の名倉佳司被告(37)は、運転中に危険ドラッグに火をつけてタバコと同じように吸引し、その1分後に突然意識を失ったという。事件後、車から引きずり出された名倉被告はニヤついていた。その絵に描いたようなジャンキーぶりに、周囲の反応は嫌悪と嘲笑だった。たぶん記憶のない夜の私も、同じ顔をしていただろう。私は池袋の事件をまったく笑えない。


■危険ドラッグに至るまで カンナビノイドが放置されていた時代

 合法ハーブが出回り始めたのは今から10年以上前のことだ。当時は幻覚性のマッシュルームを粉末にしたものやサルビアなどの幻覚性植物、液体や粉末の化学合成麻薬が主流だった。当初、若者は面白がって飛びついたが、結局、問題になるほど流行ることはなかった(電柱によじ登るなど、奇行に走る若者がたまにニュースになったぐらいである)。当時の危険ドラッグには、通過儀礼と呼ばれる摂取後の激しい嘔吐が伴ったのだ。血を吐くほどの激しい嘔吐と風邪を引いた時のような嫌な寒気に1時間も耐えなくては気持ち良くならないのだ。量がちょっと多いと、気持ちよくなるどころか、そのまま昏倒する。人工的に病気になるような薬なのだ。そんなものを使いたがるのはよっぽどの変人だ。だから常用者の数は限られていた。

 それが一変するのがスパゴ(商品名スパイスゴールド)の登場だ。スパゴとそれ以降に発売された一連の合法ドラッグは、主成分に合成カンナビノイドを使っている。カンナビノイドはマリファナの向精神成分の総称で、これが合成できるようになったのだ。

 スパゴの登場により、ユーザー数も店舗数も拡大する。マリファナと効果が変わらない、合法の麻薬なのである。通過儀礼もなく、パーティードラッグとして、複数で使うこともできる。こうして規制と新製品のイタチゴッコが始まる。厚生労働省が薬物を麻薬に指定するブラックリストを作ると、合法ハーブ側は規制されていない別の薬物を用意する。

 このイタチごっこの結果、2013年3月20日、合成カンナビノイドは包括指定を受け、市場から事実上撤退する。次にコカイン様物質がパウダーやリキッドの総称で売られた。コカインや覚せい剤と効果は近いが、持続時間が30分程度と短いのが特長だ。どだいは合法の範囲内の麻薬であり、いずれはすべて規制の網がかけられただろう。

 そうして売り物の幅が狭くなってくる中で登場したのが危険ドラッグなのだ。

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