>  >  > 「見たらきっと吐く」 渡辺文樹の世界

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――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男・天野ミチヒロが、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り!

【今回の映画  渡辺文樹という監督】

 渡辺文樹(わたなべふみき)という映画作家をご存じだろうか? 

 1953年生まれの福島県出身。彼の作品の多くは、タブーを含む危険なテーマ性から商業ベースに乗ることはなく、正規版DVDは全作品において未だ発売されていない。どうしても観たければ、渡辺の自主上映会に行くしかない。ただし、監督自ら電柱に貼るポスターを偶然見付けて、上映情報を初めて知るというハードルの高さ。

 公安警察に目をつけられた渡辺は、宿泊代踏み倒しやポスター貼りなどで何度も逮捕されながら(渡辺は警察の別件逮捕だと主張)、全国の公民館などに機材を持ち込み作品を公開していたのだ。で、そのポスターのキャッチコピーも凄かった。「失神者続出!」「発禁確実!」「見たらきっと吐く!」。

 会場周辺には公安がうろつき、政治団体の妨害に遭遇する覚悟も必要で(現実にあった)、会場の貸し出し拒否もされた。渡辺文樹の作品を観るのは容易ではないのだ。

 私も上映会に足を運んだが、受付には渡辺の妻子が座り、自主製作盤DVDを手売りしていた。そして、上映前の監督挨拶が尋常ではなかった。「今日は右翼は来てないようですので、安心してご覧ください」。

 観客全員がホッとするのが伝わった。上映がスタートすると、機材に難があり映像から数秒遅れて音声が聞こえ、低予算ゆえの素人役者による方言丸出しの滑舌悪い台詞が余計聞き取れず、本当に辛かった(苦笑)。

 作品のほとんどは渡辺自身が実名で主役を務め、素人役者(夫人も出演)の演技が返ってドキュメンタリーを見ているような効果を生む。そんな渡辺のフィルモグラフィーを製作順に追ってみたい。


■タブーに触れなければ何を撮ってもよいと言われて…

 渡辺が最初に作った『福島県庁汚職』(81年)は、公安により(渡辺の憶測)上映中止と、早くも波乱含みのスタート。リベンジした『家庭教師』(87年)は、教え子の母親と不倫し、不登校女子中学生と関係をもつ(おいおい)など、自らの家庭教師経験を元に描いた。続く『島国根性』(90年)でも渡辺は家庭教師役で、息子が恋する教え子の母親と不倫する。頑張った甲斐もあって、この『家庭教師』と『島国根性』は大手メーカーからビデオ発売された。正規版ソフトは、後にも先にもこれ2本のみに終わるが……。

 この2作を評価した松竹の名物プロデューサー・奥山和由は、「天皇・同和・警察を扱わなければ何を撮ってもかまわない」と3,000万円の製作費を彼に与えた。そこで渡辺は、福島大学の映研に在籍していた76年に県内で起きた「中3知的障害児首吊り自殺事件」を題材に選ぶ。自殺の原因は「窃盗を周囲から責められたことを苦に」ということだったが、渡辺は事件に疑惑を抱いていた。それから15年後、その真相を告発するチャンスが到来したのだ。タイトルは福島県の方言で「葬式」を意味する『ザザンボ』に決めた。

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