歌人が選ぶ 「前世が詠まれた秀逸な歌」!! きっと、あなたの感性に響く歌がある!
連載:笹公人のワクワクするオカルタンカ~言霊念力トレーニング~
※この連載は、読者のみなさまの短歌の投稿を元に展開します。今回ご応募する短歌は「卑弥呼」です。ぜひ、ご応募ください(応募方法は、記事下ボタンより)
浪人時代のことです。授業中に「前世は織田信長じゃ!」と豪語する先生を見たことがあります。ふだん標準語を喋っているのに、その時だけ語尾を「じゃ」にしたところが印象的でした。教室の後方からは女子たちのクスクス笑いが聞こえました。
信長の生まれ変わりともあろう男が、予備校で講義中に浪人生女子たちからクスクス笑いを浴びているという状況に、若干「カルマの清算」めいたものも感じましたが、先生がそれで良い授業をしてくれるならば構わないと思い、僕は静かに前世での武勇伝に耳を傾けていました。
その告白を機に、受講していた生徒が4、5人減ったようですが……。
そもそも輪廻転生を信じていない人もいますし、前世の話をするのはそれだけリスクが高いということでしょう。でも、そんな風に歴史上の人物の生まれ変わりと思い込んで生きている人は意外とたくさんいそうですね。
前世は信長という弟の割り算解けぬ様を見ていつ 笹公人/『念力図鑑』(幻冬舎)
前世といっても、何千回、何万回と生まれ変わっていれば、ありとあらゆるパターンの人生を経験しているでしょうから、「前世は〇〇だ」と言われても、それに似た人生を送っていた可能性はありえるでしょう。
肝心なのは、いまの自分の人生をしっかりと味わい、役割を全うすることだと思います。
……と平凡な結論に落ち着いたところで、前世(過去世)が詠まれた秀歌を紹介します。
■前世(過去世)が詠まれた秀歌
妻子(つまこ)率(ゐ)て公孫樹のもみじ仰ぐかな過去世・来世にこの妻子無く 高野公彦 『雨月』
たとえ家族が同じ魂で別の家族として生まれ変わったとしても、性別が違っていたり、親子が逆転したり、どこか変わっているでしょうから、来世でまったく同じ家族を生きるということはないわけです。そう思うと儚いものがありますね。寿命の長い「公孫樹」を仰いでいるところも象徴的です。
荒武者は輪廻の果てに純白のセーターを着てわれのらんるの 水原紫苑 『くわんおん』
合戦で敵兵を斬りまくった荒武者も、その後何度か生まれ変わって今世では、草食系男子として彼女の編んだセーターを着てほのぼのしているという歌意です。「荒武者」と「純白のセーター」の取り合わせが絶妙です。
では、短歌の入選作品の発表に移りたいと思います!
〈前回の課題【前世】〉
●特選
該当作品なし
●秀逸(今回は2作品)
楊貴妃とクレオパトラと小野小町全て私が生まれ変わり (BP)
<笹先生のコメント>
自信満々の美女の姿が浮かびました。来世からは、三世続けて醜女の人生が待っているかもしれません。
メタリカを聴きつつ首を振っている たぶん前世はニワトリか鳩 (あんまさ)
<笹先生のコメント>
上手にできています。「メタリカ」が効いてますね。
●佳作
あの頃から隣の席に座ってる 佐藤の前世の前世の伊藤 (栗生えり)
<笹先生のコメント>
伊藤くんは「寺子屋」時代? たしかにこういう細かいところまで繰り返されているような気がします。
ヤシの木が規則正しく立っている生まれる前の記憶のなかに (むぎたうろす)
<笹先生のコメント>
前世は南国で人生を送ったのでしょうか。「あの頃はよかった」というニュアンスも感じとりました。
前世で契りしひとに声をかけ しかとされたり悲しき現世(ふじたま)
<笹先生のコメント>
あると思います。「前世ではもっとイケメンだったのに……」とか言われてフラれるのも納得しがたいですね。
〈次回の課題【卑弥呼】〉
■笹先生の見本短歌
FBI超能力捜査官の描く卑弥呼の似顔醜女なりけり『遊星ハグルマ装置』
三角縁神獣鏡を磨くのみ卑弥呼の家来の家来の一日
笹 公人(ささ・きみひと) プロフィール
1975年東京生まれ。歌人。「未来」選者。現代歌人協会理事。大正大学客員准教授。文化学院講師。NHK学園講師。歌集に『念力家族』『念力図鑑』『抒情の奇妙な冒険』。他に『念力姫』『笹公人の念力短歌トレーニング』、絵本『ヘンなあさ』(本秀康・絵)、和田誠氏と共著 『連句遊戯』、朱川湊人氏との共著 『遊星ハグルマ装置』、編著に『王仁三郎歌集』(出口王仁三郎・著)などがある。「サイゾー」にて、「念力事報」(写真・江森康之)を連載中!
・公式HPはコチラ→http://www.uchu-young.net/sasa/index.html
【オカルタンカ 募集!】
以下のリンクより、応募フォームに必要事項(ペンネームと短歌、賞品を狙う方はメールアドレス)をご記入の上、ご送信下さい。たくさんのご応募お待ちしております!
(上のボタンと同じものです)
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