>  > 2つの巨大ブラックホールが合体!!

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※イメージ画像:Thinkstockより

 銀河系の中心には我々の太陽の何百万倍、何十億倍もの質量を持つ大質量ブラックホールが存在し、銀河系とはともに進化をとげてきた可能性がある。記録によれば、銀河と銀河が衝突合体し、より大きな銀河になっており、同時に中心部にあるブラックホールもまたより巨大化したという。

 ブラックホールの周辺は強力な重力で空間がゆがみ、光でさえ出られないので直接その形を見ることができない。だが、重力によりガスが円盤状(この円盤を「降着円盤」という)に渦巻き、ガスどうしの摩擦により熱と強力なX線、ガンマー線を発生する。このようにして自ら光を発する大質量ブラックホールは「クエーサー」と呼ばれる銀河系のどの星よりも明るく輝く天体となるという。

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■衝突寸前の巨大ブラックホール発見!

 アメリカAstronomy誌が、Center for Data-Driven Discovery at Caltech(CDDD)のジョーゴフスキーたちは遠方のクエーサーからの不可思議な光の信号(光の強度の上下変動)について、2つの大質量ブラックホールが合体する最後の過程で発せられたものであると発表した。理論上は予言されていたのだが、これまで実際に観測されたことはなかった現象だ。

 また「互いに近づき合体する巨大ブラックホールは、互いの距離が数十から数千光年離れているものしか今まで発見されていなかったが、それだけ離れていると衝突して合体するのに数百万年から数十億年もの時間がかかる。一方PG1302-102のブラックホールは数百分の一光年しか離れておらず、百万年以内に合体するとみられる」とNASAジェット推進研究所のダニエル・スターン氏も話している。


■衝突寸前のブラックホールは偶然発見された

 ジョーゴフスキーたちは、最初からブラックホールの合体を発見するために観測を始めたわけではなかった。当初はクエーサーの変光から物理学上の新しい発見のカギをつかむために観測していたのだという。だが、観測結果からパターンを見つけ出す方法をグラハムが開発し、データをふるい分けしていたところ20個のクエーサーから周期的な光のシグナル(光の強弱)が出ていることが判明。ほとんどのクエーサーの光は、ブラックホールの周囲を周る物体の不規則な反射によって変化している。

 この発見には、Catalina Real-Time Transient Survey (CRTS)の観測結果が大いに影響している。PG1302-102クエーサーが不可思議な光の信号を発しているのもこのCRTSで発見された。またCRTSはアメリカとオーストラリアの望遠鏡で夜空の80%をカバーし、5億個もの天体の光を観測している。「かつて科学者は、わずか数十から数百程度のクエーサーの変光しか観測できなかった。この(CRTSを使った)新しい方法では25万個ものクエーサーを観測し、数百もの同じ場所のデータをまとめることができるようになった」とジョーゴフスキー氏は言う。

 CRTSが確認した周期的に変光する20個のクエーサーのうちPG1302-102はもっとも状態が良い例だ。強くて明瞭な信号で、周期は5年くらいだという。「それはサイン波に似た滑らかな波の信号で、他のクエーサーには見られない」とグラハム氏は語る。

 ハーバード大学天文学部のアヴィ・ローブ氏も、このクエーサーが接近した大質量ブラックホールの連星系である考えを支持している。氏は「光の放射はブラックホール周辺をとりまく狭い範囲からのもので、放出されている物質の速度は光速の10分の1以上であろう。2つ目のブラックホールの存在を仮定すると定期的な変光現象を合理的に説明することができる」は語っている。つまり、2つのブラックホールが互いに相手の周りを周っているというのだ。

■技術の進化で宇宙の謎がまたひとつ新たに!

 ブラックホール合体の最終段階を観測できたという前例のない事例に加え、この発見が「ビッグデータサイエンス」によってなされたことも着目すべきことであろう。質の高い情報を得ることだけでなく、たくさんのデータの中から有益な情報を発掘するしくみを作ったことは画期的だ。
 
 かつての全天の写真を数枚撮影するか宇宙の小さな領域を繰り返し観測していた時代から、全天を常にビデオ撮影する時代になった。ビデオに写っている天体のほとんどは、何も注目すべき動きを示さないだろう。しかしその中には今まで発見されてこなかった現象が多く含まれている。

 クエーサーが光の信号を発する物理的な仕組みは未だに分かっていない。だが「ブラックホールが降着円盤にある物質を吸い込むときにプラズマのジェットを出す。ブラックホールが回転するときにジェットを出している向きが一時的に地球の方向に向いてあたかも港の灯台のように信号をおくっているのではないか」とグラハム氏は言う。

 あるいはこのような可能性も考えられる。ブラックホールを取り巻く降着円盤は大きく歪んだままブラックホールの周囲を周る。降着円盤の一部が他より分厚いとき、バックの光をさえぎるかもしれない。それがシグナルとなって観測されるのであろう。あるいは降着円盤上にある物質が回転とともに定期的にブラックホールの中に投げ込まれ、バーストを起こす可能性も考えられる。

 グラハム氏によれば、周期的な光の変化はこのようにさまざまな原因が考えられるが、これらは基本的にすべてブラックホールの連星系の存在によって説明できるという。

 いざPG1302-102が衝突するとき、いったい何が起こるのだろうか。残念ながらそれがおこるのは何十万年も先の話で、我々はそのたどり着く先を見ることはできない。しかし現代のビッグデータを処理する技術を使えば、衝突しつつあるブラックホールのさまざまな過程を見ることができるだろう。それができる日はそう遠くない。
(文=山本 睦徳)

■山本 睦徳(やまもとむつのり)
ドキュメンタリー作家。地球科学のドキュメンタリー映画製作、記事を執筆。面白くて楽しく読める文章で読者を地球科学の世界へ誘う。
http://www.earthscience.jp

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