パキスタンの「ラットピープル」― 原因は近親相姦か虐待か?全員ネズミ顔の謎
■パキスタンではなぜ小頭症の子どもが多いのか?
だが、そもそもパキスタンではなぜ小頭症の子どもがこんなにも多いのか? この謎を追求したジャーナリストたちがいる。
1998年に「BBC」でこのラットピープルの問題をリポートしたリチャード・ガルピン氏は「金と引き換えに健康な幼児が売られている疑惑がある」と指摘している。マフィアに売り渡された健康な幼児はその後、頭にアイロンを当てるなどして頭蓋骨の発育を止められてラットピープルに“作り変えられる”というのだ。もしこれが本当であれば重大な人権侵害であり犯罪でもある。
一方、2006年に「Telegraph」紙上でこの問題を考察したアーマンド・レロイ記者は、小頭症児が多い理由としてパキスタンで近親婚が繰り返されていることが原因であるとしている。あるデータによればなんと、パキスタン社会では結婚の60%がいとこ同士の結婚、いわゆる“いとこ婚”であるというのだ。これにより、新生児に小頭症などの遺伝疾患リスクが高まっているというのだ。
また、イギリス・イングランド北部のブラッドフォードは歴史的な事情により多くのパキスタン系住民がいるのだが、このパキスタンコミュニティでも結婚の約37%がいとこ婚という実態があり、不幸にも現地の先天性異常児の31%がパキスタン人のいとこ婚によって生まれた子どもであることが「2013年のイギリスの研究」で明らかになっている。ということは、やはりパキスタン社会特有の近親婚の伝統が小頭症児の多さの原因なのだろうか……。ともあれ小頭症で生まれた子どもには何の罪もなく、大人たちに利用されるなどもってほかであることは言うまでもない。
(文=仲田しんじ)
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