>  > 牛や豚は食べるのに、なぜ犬を救うのか? 

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犬に名前をつける日』山田あかね監督と愛犬のハル

 年間12万8241頭の犬や猫が殺処分され、1日に約350頭の命が失われている日本(2013年度)。そんな現状を、ドキュメンタリードラマという手法を用いてわかりやすく伝えた映画『犬に名前をつける日』が、10月31日にシネスイッチ銀座ほか全国で公開される。前編は、犬の殺処分の現状と未来について語っていただいたが、後編は自身も愛犬家である山田あかね監督の、犬に対する思いや映画の意外な注目ポイントについて詳しくうかがった。

▶前編「生まれてすぐ袋に入れられ殺される子犬たち、劣悪な“ガス室待ち”の環境


■牛や豚の肉は食べるのに、なぜ犬の命だけ救うのか?

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(c)スモールホープベイプロダクション

――取材する前と後では何か心境の変化はありましたか?

山田監督(以下、山田) 取材する前の私は本当にどこにでもいる、単なる犬好きでした。ですが、当時飼っていた2匹のゴールデン・レトリーバー(カナとミニ)が亡くなり、生きていくのも嫌なくらい落ち込んだんです。でも、4年間の取材を通じて、人間の強さを感じることができた。もちろん、殺処分の現場や、福島第一原発の20キロ圏内に残されてしまった犬、ひどいブリーダーに育てられた犬など悲惨なところもたくさん見たのですが、同時に彼らを助ける人たちの姿をみることで、犬をなくした悲しみから抜け出すことができたんです。

 また、自分の犬だけが幸せであればいいという考え方も改められました。取材を通じて、犬が人間に与えてくれる本当のよさみたいなことがわかったことで、他の犬の幸せを考えることができるようになりました。少しでも犬たちにお返ししたいなって思っています。

――たしかに、犬はとても尊い生き物です。ですが、我々は牛や豚を食べています。なぜ犬の命ばかりが尊重されるのでしょうか?

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(c)スモールホープベイプロダクション

山田 それはもう、考えますよね。私も、自分の犬に鶏肉を食べさせるとき「この鳥の命はいいのか?」って思う。でも、生き物である以上、何かを食べるのはしょうがない。申し訳ないって思うけれども、牛や豚を食べるわけじゃないですか? もっというと、私の心のどこかでは「犬だって、無駄に殺されてしまうよりは、まだ食べた方がいいくらい」だと思っているんです。だってそれは生き物として仕方のないことだから。でも、殺処分とか、被災地で放置されて…っていうのは、ちがう。死ななくていい命じゃないですか。殺さなくていい命じゃないですか。無駄に殺す必要はないでしょう。助けられるものは、助けるのが当然だと思っています。

 犬ではないのですが、こんなことも考えます。たとえば、「犬には馬肉を与えるといい」なんていう話もあるんですけど、そういうのを聞くと「馬肉かー」と、思ったりするんですよね。以前、サラブレッドの取材をしたことがあったので、余計そう思うのかもしれません。速く走ることができないサラブレッドもどんどん殺されてしまうでしょう? 生きるためにしょうがなく馬を殺して食べているならまだしも、自分たちの悦びのために馬に競争させて、ダメだったら殺すというのはあんまりですよ。人間の遊びやきまぐれのために殺される命はなくしていくべきなんです。


――まったくそのとおりだと思います。人間の欲望のために命を落とす必要はありませんね。

山田 けれども、こうしたことに憤りを感じる一方で、自分はそんなに立派な人なのかよ? って自問自答することもあるんです。この小さな家で(取材場所)でゴールデンレトリバーを二匹飼って、近所にも狭い公園しかない。自分の中では大切に飼っているつもりでしたが、ある意味「虐待だろ!」と。イギリスのゴールデンのブリーダーのところに取材に行った時、あまりに広大な牧場みたいな場所に15匹くらいがいるのを見て、本当にうちの子は幸せなのだろうか? と疑問に思いましたね。

 だから、結局ペットたちは人間のわがままの犠牲になっているんです。それもわかったうえで、できる限り努力するということが大切なんじゃないかと思っています。

※次ページ「さみしい女が犬や猫にはまるという偏見

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