>  > 過去を箱に詰めたジョゼフ・コーネルのシュルレアリスム

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【拝啓 澁澤先生、あなたが見たのはどんな夢ですか? ~シュルレアリスム、その後~】――マルキ・ド・サド、そして数多くの幻想芸術……。フランス文学者・澁澤龍彦が残した功績は大きい。没後20年以上たったいま、偉大な先人に敬意を払いつつ、取りこぼした異端について調査を進める――


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Untitled (Celestial Navigation), 1956-58. 画像は「Royal Academy of Arts」より引用

■バーグマン夫妻のコレクション

 シュルレアリストたちの作品を集めている人は多いけれど、世界一のコレクターはいったい誰なんだろう? ときどきそんなことを考える。たとえば、国内でいえば諸橋近代美術館。サルバドール・ダリの作品を300点以上所蔵するこの美術館は、世界屈指のダリ・コレクションといえるだろう。しかし、これはあくまで団体(美術館)だ。

 では、個人のコレクターは?

 候補のひとりに挙げられるのは、シカゴのリンディ&エドウィン・バーグマン夫妻だろう。

 彼らのコレクションは、作品数でいえばアンドレ・ブルトンやサルバドール・ダリ、マックス・エルンストを含めて118点ほどにすぎないが、ジョゼフ・コーネルの作品を熱心に集めていたという点は特筆に値する。ジョゼフ・コーネルに関しては、バーグマン・コレクションが世界一なのではないだろうか。

 ニューヨーク生まれのシュルレアリスト、ジョゼフ・コーネルに関しては後述するとして、まずは簡単にバーグマン夫妻について紹介しておきたい。


■バーグマン夫妻について

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画像は「CHRISTIE'S」より引用

 シカゴ在住のバーグマン夫妻が美術品の収集をはじめたのは、彼らが結婚した1940年にまでさかのぼる。夫妻はもともと同じ大学に通っていたのだが、美術という趣味を通じて知り合い、結婚。夫・エドウィンは会社勤めをしながら、給料のほとんどをアート作品の購入に注ぎはじめる。そして当然のことながら、妻・リンディも夫の行為を後押しした。

 はじめ彼らはドイツ印象主義作品を集めていたが、コレクションアイテムをすぐにシュルレアリスム作品に変更。買い集める美術品は絵画だけでなく、彫刻やオブジェにまで及んだ。

 バーグマン夫妻はこうして購入した作品を自宅に展示していったので、室内はあっという間に、シュルレアリスム関連の文献に頻出する用語“merveille(驚異)”の部屋と呼ぶべきものになっていく。

 そんなバーグマン夫妻がジョゼフ・コーネルの作品を初めて購入したのは、1958年のことだった。さらに翌59年には、なんと彼らは直接コーネルと会うことに成功。人嫌いで有名だったコーネルに面会できるのは仲の良い知人に限られていたが、バーグマン夫妻はイタリア人画家ピエロ・ドラツィオの仲介により、奇跡的にコーネルと会うことができたのだった。しかもコーネルは、はじめてバーグマン夫妻に会ったとき、夫妻の娘のためにコラージュ作品までプレゼントしたという。

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Habitat Group for a Shooting Gallery, 1943. 画像は「Royal Academy of Arts」より引用

 このように、はじめはコレクターとアーティストの関係は良好だった。

――がしかし、60年代中頃、コーネルの弟と母の相次ぐ死をきっかけとして、関係が悪化してしまう。ふさぎがちになったコーネルは、突如バーグマン夫妻に作品を販売することを拒否するようになったのだった。

「彼らは自分の作品を多く所有しすぎている!」というのが理由だった。

 このようにして両者の関係は断絶し、コーネルは死ぬまでバーグマン夫妻に会おうとしなかった。

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