ロシアの最新鋭大陸間弾道ミサイル「トーポリM」発射の瞬間!

■冷戦時代の軍事的緊張がよみがえるのか

 実際にアメリカ国内からもロシアの“核の脅威”を訴える声があがりはじめ、一部ではまさに冷戦時代に戻ったかのような様相も垣間見えるようだ。

 昨年7月には、アラバマ州下院議員(共和党)で、戦略兵力小委員会(Subcommittee on Strategic Forces)の議長であるマイク・ロジャース氏が「アメリカは今、米ソ冷戦時代よりも核の脅威に晒されいる」と発言して物議を醸した。ロジャース氏はこの事態はオバマ政権の融和的な外交政策がもたらしたものであると現政権を批判し、1990年代の技術である時代遅れのアメリカの大陸間弾道ミサイルのシステムを一新しなければならないと警鐘を鳴らしている。

 また、陸軍参謀総長のマーク・ミレー大将は昨年7月の上院軍事委員会の席上で「ロシアはアメリカを滅ぼす能力を有している唯一の国である」と発言し、2008年から活発となったロシアの軍事行動に警戒を呼びかけている。

 現在国際社会の最大の懸案であるシリア情勢だが、シリア国内の「イスラム国」拠点への空爆に、アメリカ、フランス、イギリスをはじめとする“有志連合”のほかにロシアも参加しているのはご存知の通りだ。ロシアは空爆だけでなく、海からディーゼル潜水艦「ロストフ・ナ・ドヌー」に搭載の巡航ミサイルで「イスラム国」の拠点を正確に攻撃している。そしてこの巡航ミサイル「カリブル」にも核弾頭を搭載できることを、プーチン大統領自ら言及したともいわれている。さらにこの潜水艦にもしトーポリMが搭載してあれば、シリアどころか世界中のどこでも標的にできるのだ。

 加えてロシアはシリア内の拠点に最新鋭の地対空ミサイル「S-400」配備したことを昨年末に発表している。シリアの内戦、「イスラム国」問題が引き金となり新たな“冷戦”構造が生まれてしまうのだろうか……。2016年も引き続き予断を許さない世界情勢だが、ミサイルはあくまでも抑止力としてのみ機能してもらいたいものである。
(文=仲田しんじ)

参考:「LiveLeak」、「Washington Times」、「Unian」ほか

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
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