前科7犯・逮捕歴22回! 伝説の武闘派ヤクザ・花形敬の墓に行ってみた
■力道山を一喝、ヤクザ界の“花形”
たとえば昭和の大スターとして知られる力道山が、一時期、渋谷にオープンしたばかりのキャバレーで用心棒の真似事をしていた際に、その地域を取り仕切る安藤組への挨拶を行わなかったため、筋を通そうとした花形が同店に乗り込み、出迎えた力道山を一喝して退けたという逸話が残されている。こうした花形の活躍は、70年代のヤクザ映画全盛期にヒットした映画『安藤組外伝/人斬り舎弟』などに描かれているほか、後年、ヤクザをテーマにした数多くの作品に、そのキャラクターモチーフとして取り入れられている。その短い生涯は、まさにヤクザ界における“花形役者”とでも言うべき、特異なものであっただろう。
刺殺事件後、経堂にある実家へと運び込まれた花形の遺体を前に、変わり果てた息子の無念を想った母は泣き崩れた。だが、その通夜の際には、花形の母らしく気骨にも涙ながらに息子の弔い合戦をしないよう、安藤組の諸衆に訴えたといわれる。おそらく獄中の安藤もまた、ほどなくしてその訃報を知ったと思われるが、その無念さは想像をするに余りあるものであったと言わざるを得ない。
現存する花形の墓には、施主として、小池光男、安藤昇、友人一同と刻まれている。その死後、数十年の時を生き、自身が見ることのなかった激動の時代を眺め続けた友との再会を、花形はどのような気持ちで待ちわびていたのだろうか。
(写真/文=Ian McEntire)
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