暴走老人対談・康芳夫VS花田紀凱

元文春編集長・花田紀凱が語る『週刊文春』スクープ独占の理由! ~暴走老人対談・康芳夫~

元文春編集長・花田紀凱が語る『週刊文春』スクープ独占の理由! ~暴走老人対談・康芳夫~の画像3画像は、『週刊文春 4月7日号』(文藝春秋)

■『週刊文春』はなぜスクープがとれるのか?

「僕が『週刊文春』の編集長をやっていたのは1988年から1994年までですね」

「今の編集長はまだ入社していなかっただろ?」

「いや、僕の下にいました。新谷(学)は僕が『マルコ・ポーロ』をやっていた時に僕の下にいたの。今でもよく会っていますよ。向こうも忙しいから時々ですけどね」

「そうなると君は恩師ってことになるな」

――当時の直属の部下ということですか?

「そうそう、だから“最近よく頑張ってるなぁ”と思ってて、嬉しいですけどね。そもそも、僕は週刊誌が大好きなんですよ。それで、『週刊文春』っていうのはだいたい編集長は2~3年で交代するものなんです。だけど僕は6~7年くらいやって、凄い売れたんですよ。50万部くらいだったのが、僕がやって75万部くらいになった

「80万部くらいじゃなかったか?」

「売れた時はね、それこそ新年号とかは130万部売れた時もありました」

「それは凄いね、今週刊誌の中で『週刊文春』が一番売れているんだけど、それでも最盛期の半分くらいだ」

「そうですね、41万部くらいですね。そうやって段々(部数が)落っこちてきたけれど、新谷くんが頑張っている。雑誌の世界では、どこか一誌が頑張っていれば他のライバル誌も元気になってくるものなんです。だけど、今のあれに追いつくのはちょっと難しいですね。というのは、もう今は出版界全体がダメだからね。今から20年前の1996年は、出版物全体の売り上げが売上が2兆4000億円~2兆5000億円あったんです。今はそれが1兆5000億円くらいだから」

――ほぼ半減ですね。

「ほぼそれくらいですね、1兆円も下がっていますからね。そんな中で週刊誌やらなきゃいけないから大変なんですけどね。今日も巨人軍の野球賭博問題を『週刊文春』がやったから、その掲載号が出る前に慌てて対応して先に発表しましたけど、最近はああいうことも大変なんですよ」


■スクープを新聞社が横取り!?

――それはどういう意味で、ですか?

「というのはね、『週刊文春』が何かをスクープするじゃない? 発売日は木曜だけど、火曜日には新聞に載せている広告の締め切りがくるわけ。そうすると雑誌の内容が新聞社にいっちゃうわけだよ。広告の見出しだけでわかっちゃうの。そうするとね、それを先に新聞が書いちゃうんだよ。それが非常にやりにくいところなんですよ。今度の場合も、そういう流れで巨人は自分たちで取材をかけて先に発表したからね。『週刊文春』に載るなら調べないとまずいってことで取材したら、“やっていました”ってことで発表になったの」

――確かに、報道された印象では、“巨人の自社発表”ということになっていましたね。

「そうなの、でもあれはホントいうと『週刊文春』のスクープなの。だからやってる身としては悔しいわけよ。だって自分のところでスクープしたのが問題になった方が売り上げ的にもいいわけだから」

――新聞広告のせいでそんなことになっているんですね。

「あれは新聞広告のパターンだね」

元文春編集長・花田紀凱が語る『週刊文春』スクープ独占の理由! ~暴走老人対談・康芳夫~の画像4

――しかし、『週刊文春』の新年明けてからのスクープ連発はもの凄いものがありますね。

「そうですね。それで、“なんで『週刊文春』ばかりがスクープをとれるか?”っていうと、その理由はふたつあってね、まずはスクープするには【手間暇とお金】をかけないといけない。でも他の週刊誌の部数は下がっちゃっているわけだから、かけられないのよ。たとえば『週刊文春』は“AKB48の子が男の子とデートした!”っていうようなのもやっているんだけど、あれにしても3~4人は張り込まないとできないことなの。

 ほかにも、たとえば“小泉進次郎が復興省の女を抱いた”っていうスクープもあったけど、これにしてもプリンスホテルの部屋まで突き止めてだよ、中の会話まで録っているかのようだったじゃない。盗聴器を本当に仕掛けたか、どうかは知らないですけど(笑)。それは勘なんですけれど、記事では部屋の中で話しているようなところまで再現しているのよ。まずホテルに泊まろうとしていることをキャッチするだけでも大変じゃない。相当仲のいい人しかできない。しかも、進次郎は用心して、一回車を乗り換えて、それからホテルに入っているのに、その乗り換えるところも押さえているわけ。これはとてもひとりじゃできないから。あとはホテルの廊下にだってスタッフが巡回しているでしょう? そこを押さえるんだから、もの凄いお金と手間と人出がかかる。文春はまだ売れているからそれができるのよ。他の雑誌は売れてないからできないんだよ」

――【売れているからこそ、経費がかけられる】というのはわかりやすいですね。

「それともうひとつはさ、甘利(明前経済再生相)を告発した一色(武)ってのがいるんだけどさ、ああいうように“誰かを告発したい”って思った時に、告発する方はやっぱり“一番効果あるところでやりたい”と思うじゃない? そうすると、“いま『週刊現代』でやるよりは、『週刊文春』でやった方がいいな”って、告発する側が選ぶのよ。多くの人に知ってもらえるというメリットがあるから。よく“多額の謝礼が出ている”なんて言うけど、そんなのないんですよ。そんなことしていたら雑誌はペイしないから。もちろん取材協力費は払いますよ、それは普通の金額ね。でも300万円だとか、そういうものを払うわけじゃないの。【手間暇お金をかけている】ということと、【相手が媒体を選ぶ】ということ。だから僕は文春を【磁石のような雑誌】って言っているんだけど、ネタがさ、向こうから吸い寄せられてくるわけ。そして、そういう状況を『文春』が作ったんだよね」

――それを考えると、他の媒体が『週刊文春』に便乗するのは難しいんですね。

「もっとお金をかけるとか、他にもやり方はあると思いますけど、実際のところは難しいでしょうね。それとね、発売日の問題もあって、『週刊文春』『週刊新潮』は木曜日発売なの。火曜日の夜に校了(※編集作業終了のこと)で、水曜日一日挟んで木曜日に書店に並ぶ。だから、水曜日にはもう見本誌ができている。ところが『週刊現代』『週刊ポスト』は月曜日発売でしょ。そうすると木曜校了なの。だから金曜日にはもうできているんだけど、土日寝ちゃうわけ」

――流通の休日に引っかかるからですね。

「そうなんだよ。それで月曜発売でしょ? そうすると、あんまりホットなスクープネタはできないんですよ。まあそれにしても今売れてないですけどね……。一時はそれこそ100万部くらいいっていたのが、今21万部とかだから、それではやっぱりお金かけられないんだよ。だから、自然とスクープも少なくなるという感じだよね」

「取材力、信用が違うのは花ちゃんが言った通りなんだけど、一時はかなり頑張っていた『週刊新潮』も今はタジタジだかねえ。全部『週刊文春』の後追いだ」

「最近の印象はそうですね」

※次ページ/ベッキースクープの比にならないスクープ

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