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「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」―川端康成の代表作『雪国』は、北国に向かって進む列車が長いトンネルへと入り、そこから出た瞬間の変化を、シンプルながらも鮮烈な印象を残す描写で幕を開ける。こうした描写からもわかるように、とかく、トンネルというものは、それこそ入口前の世界と、出口後の世界を大きく隔ててしまうような、そんな「長い」というイメージがつきまとうものである。しかしそうした世人の固定観念を覆すトンネルが、静岡県に存在している。

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画像は、『ツィゴイネルワイゼン [DVD]』(パイオニアLDC)

 1980年に公開された鈴木清順監督の映画『ツィゴイネルワイゼン』のロケ地としても知られるこの場所は、浜松から小一時間ほど離れた川根本町の、のどかな田園地帯の中にある。

 SLの運行で知られる大井川鐵道の線路をまたぐようにしてそびえ立つその姿は、一見してわかるように、我々のイメージしがちなトンネルを、ロールケーキを輪切りにしたような奇異な存在だ。その姿から、一般に「日本一短いトンネル」(※全長約11m/実際にはJR呉線の川尻トンネルが約8.7mとさらに短い)として、近隣の住民はもとより、世の好事家たちから親しまれている。

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 このトンネル、その特殊な形状からもわかるように、山間部などの一般的な鉄道用のトンネルではない。実はもともとこのトンネルの上には、かつて川根索道というロープウェイが通されており、そこから転落する物で鉄道の交通に支障が出ぬよう設けられた、「線路の屋根」とも言うべき構造物なのである。そのため、正式名称は『川根電力索道用保安隧道』という。

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