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 “皮肉”を理解することは人間には容易いことだ。ほとんどの場合学習する必要さえない。しかし、これが機械となると話がややこしくなる。というのもご存知の通り、コンピューターはテクストやイメージ画像を“文字通り”読み取るようにプログラムされているからだ。だがもし、コンピューターが“皮肉”を理解できるとしたら?


■“皮肉”はアルゴリズムで検知できる

 8月29日付の科学情報サイト「Live Science」によると、コンピュータサイエンスが専門のトリノ大学准教授ロサーノ・シファネーラ氏と、米「Yahoo!」の研究グループが共同で、「人間の言葉は文字通りの意味を持たないことがある」と機械に学習させているという。さらに教授らが科学誌「ArXiv」に掲載した研究によると、“皮肉”の理解には文字テクストだけでなく、イメージ画像も重要な役割を担っていることが分かったという。

 容易に想像できることだが、“皮肉”を理解するためには多くの共有された知識が必要となる。その広範な知識を機械に学習させることは困難を極める。たとえば、雪が降るシーンを撮影した1枚の写真の下に、「素晴らしい天気」と書いてあったらどう思うだろうか? このままでは、本当に雪が好きなのかどうか判断できないのではないだろうか。これが皮肉として機能するためには、この写真を見る人が、投稿者が“実は”「温かい気候」の方が好きだと知っている場合だろう。

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「今日は最高の春日和だった!」、「ArXiv」より引用

 かように複雑な“皮肉”の本性をつかむために、シファネーラ教授らは次のような実験を行った。

 英語圏の人間を対象に、SNSに投稿された発言が皮肉かどうかタグ付けしてもらい、どのような特徴が“皮肉”を意味するために必要か探ったそうだ。実験の結果、文字テクストだけでは被験者の判断にバラつきが出たが、テクストに関連した皮肉なイメージ画像がつけ加えられると多くの被験者の意見が一致したという。さらに、その画像に添えられたメッセージに“?”や“!”などの記号が入っていたり、「I love the weather」でなく「I looooove the weather」のように強調された文章だと “皮肉”だと判断する人が増えたという。

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「クソみたいな天気のクソみたいな街で」、「ArXiv」より引用

 教授らが以上の研究データをもとにしたアルゴリズムをプログラミングしたところ、イメージ画像だけだと61%とそれほど高い精度ではなかったが、文字テクストとイメージ画像の組み合わせであれば80~89%の確率で皮肉を検知することができるようになったという。

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「この人ごみを見ろよ!」「ArXiv」より引用

 まだまだ研究は端緒についたばかりで改善点は多々あるが、文法チェックサイト「Grammarly」の研究ディレクター、ジョエル・テトロー氏は、より高性能のコンピューターが世界中のSNSに投稿される画像やテクストを自己学習するようになれば精度はどんどん上がっていくという。

「野球のルールを知らない小さな子どもでも、何度も何度も試合を見ていれば、そのうち自然と『ボールを強く打てばいいんだ』と理解しますよね」(テトロー氏)

 また、ノースイースタン大学のバイロン・ウォレス准教授も、今回の成果を「コンピューターが自然言語を理解する可能性を一歩先に推し進めた素晴らしいもの」と太鼓判を押している。

「皮肉や風刺を理解するには“文脈”を把握することが必要です。これはスパムや、センチメント分析とは別物です」(ウォレス教授)

 ファネーラ教授によると、コンピューターが文脈を適切に理解できるようになれば、発売前の製品に対する世間の反応を予想できるとのこと。たとえば、米共和党大統領指名候補ドナルド・トランプ氏のロゴが性的なイメージを喚起するとして問題になったが、そのような反応を事前に予測して、ネガティブなイメージを与える恐れのある製品を未然に検知することが可能になる。

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画像は「CNN」より引用

 さらに驚くべきことに、政治家のマニフェストが有権者の賛同を得られるかどうかも今よりもずっと正確に予想できるようになるそうだ。なにやら、衆愚政治を招きそうな予感もするが……。

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