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 手を叩く、もしくは手や足で自分の身体や身の回りにあるモノを叩くことによって音を鳴らしたことが打楽器の起源であるといわれている。もはや証拠もいらないほど説得力のある楽器の起源説である。

 少し暖かい地方に住んでいるとなかなか自然にできた氷を目にすることも少なくなってきてはいるが、寒い地方では氷はごくありふれたものである。「CNN」のレポートによると、テリエ・イースングセットは、この自然の氷を使って楽器を作り、それで演奏をするという世界でただ一人の氷のミュージシャンであるとのこと。


■世界でただ一人の“氷のミュージシャン”

 ノルウェー生まれのテリエ・イースングセットは、10年以上にわたり天然の氷のみで作られた楽器を演奏する唯一のミュージシャンであり、ノルウェーのゲリオで毎年開催されるアイス・ミュージック・フェスティバルの発起人でもあるとのことである。

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画像は「Terje Isungset」より

 パーカッショニストであり、作曲家でもあるイースングセットは、20代の頃にはすでに氷の魅力にとりつかれていたと語っている。自分の周囲にある自然を利用し、音楽を創ることを目指したイースングセットが最初に作り出した氷の楽器は、シンプルなチャイムであった。

 それから、ドラム、トランペット、ホルン、ハープ、複雑なものでは、ギターやマリンバ、ノルウェーの伝統楽器であるランゲレイクなども制作し、演奏をしている。ひとつ一つの氷に個性があり、その氷を叩いた時にその音がすぐに収束してしまうものあれば、最大15秒も鳴り響くものもあるという。

 イースングセットによれば、氷は、自然に凍ったものでなければならず、氷の採集にも自分の手で行っているとのこと。冬場のノルウェーでは、氷を見つけることはそれほど難しいことではないが、その氷をとり出す作業は、危険の伴う重労働である。特に湖の表面近くの氷などは、気泡が多く含まれているために楽器には適さず、マイナス20度を超える真冬のノルウェーの山中の湖で何時間もかけて氷を切り出すことを思い浮かべてみれば、いかに過酷で困難な状況下であるか少しは想像できるだろう。

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画像は「Terje Isungset」より


■“1回限り”の天然氷の楽器

 楽器の寿命も短い。マウスピースなど、口に触れるものは使っているうちにどんどん溶けていき、チューニングが変わっていってしまう。数回のステージでほとんどの楽器は使えなくなってしまうという。イースングセットによれば、すべてのステージがその1回きりの個性あふれた自然との調和のであり、楽器の音色は自然が決めているものであるとのことだ。

 3000メートル級の氷山にある天然のドームで、マイナス33度という環境のなか行われる演奏会もある。イースングセットの奏でるなんとも幻想的な音楽と、氷で囲まれた会場。寒さが苦手な人にとっては、まず無理なコンサートであるかもしれないが、一度リアルでその演奏を聴いてみたいものだ。もちろん、完全防寒で。
(文=高夏五道)


2016年4月に行なわれたコンサートの模様 「Terje Isungset」より


参考:「CNN」、ほか

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