>  >  > 「苦痛こそ快楽の源である」伝説のホラー『ヘルレイザー』

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ピンヘッド

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ヘルレイザー

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2月8日発売「ヘルレイザー1,2,3《最終盤》」(キングレコード)

 この世は苦痛で満ちている。快楽よりも苦痛の方が何倍も多い。実際、人は快楽を得るために多くの時間を苦痛に費やしている。にもかかわらず、苦痛という反応について我々はよく知らないし、考えたくもないから考えない。一体苦痛とは何なのか?

 苦痛の効果と重要性を探求した18世紀のフランス貴族作家マルキ・ド・サドは「快楽とは苦痛を水で薄めたようなものである」「そもそも限度を超さない快楽など、快楽のうちに入るだろうか」と書いたが、今なお語り継がれる伝説のホラー映画『ヘルレイザーは、まさにこの“痛みと苦痛、そして快楽”と向き合い、人間に内在する「SM羨望」をスプラッターを通じて滲み描いたビザール映画である。今回は、2月8日にキングレコードから6枚組のHDニューマスター版のブルーレイBOXヘルレイザー1,2,3《最終盤》』が発売されたことを記念して『ヘルレイザー』の魅力について解説する。


■『ヘルレイザー』あらすじ

 時代は現在。物語は、数多の女と関係をもつ真正のヤリチンであるフランクが、「組み替えることで究極の性的官能=痛みを体験できる」ルマルシャンの箱と呼ばれる伝説のパズルボックスを自らの意思で開くことろから始まる。箱を開けるやいなや、魔界から出てきた鉤針に皮膚を引き裂かれ、究極の痛み=快楽を得ながら、肉体を失ってゆくフランク。その姿はキリストの磔刑を彷彿とさせることから、フランクは単なるヤリチンを通り越した“性の知的探求者”だったことがうかがえる。

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ジュリア/『ヘルレイザー』より© NEW WORLD PICTURES 1987

 そんな情熱的なカリスマをもつ男フランクを愛したのが、主人公である新妻ジュリアだ。ジュリアはフランクの弟で平凡なサラリーマンであるラリーと結婚するも、密かにフランクと肉体関係を結んでおり、フランクが失踪(実際には肉体を失って消えた)した後も、その悦びを忘れられずにいた。 

●消えたフランクの家に引越し→フランクの復活

 ジュリアとラリーは失踪したフランクの家に引っ越しをする。その引越し作業中にラリーが怪我を負って出血するのだが、なぜかその血を吸ったフランクの“肉体の残りカス”がみるみる蘇生。皮膚なしのズル剥けクリーチャーとして復活すると、フランクはジュリアに「男の血と肉をもっとくれ。そうしたら昔の姿に戻る」と頼むのである(ズル剥け具合は結構笑える)。フランクとのセックスが忘れられないジュリアは彼の肉体を元に戻すため、男達を次々と殺害。フランクに生贄を捧げてゆく。

 ちなみに、ジュリアが単なる色情女かといえば、そうではない。ジュリアの表情はいつも不満気で、影を背負った魅力的で美しい女だ。夫のラリーはそんな“魔性”のジュリアを心底愛し、彼女の言いなり状態なのだが、ジュリアにとってはこの“満たされ具合”が最大の不満だったようだ。フランクとの出会いによって、彼女もまた、不倫という苦痛の中に快楽があることを知ってしまう。


■「ヘルレイザー」の変態哲学

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魔道師/『ヘルレイザー』より© NEW WORLD PICTURES 1987

「苦痛こそ快楽の源である」

 これこそが、映画「ヘルレイザー」で描かれた究極の世界観である。パズルボックスを開けるという行為はすなわち、“最高の快楽のためであれば、人生が滅茶苦茶になってもいい”という決意のあらわれだったのだ。この、わかるようなわからないような謎の哲学的設定が観る者の想像力を揺さぶるわけだが、中でもとりわけ心を打たれるのが、やはり魔界世界への4人の案内人(魔道師)のうちの1人、「ピンヘッド」の存在である。

 無数の釘を顔に打ち込む究極のマゾヒスト「ピンヘッド」はこんなことを言う。

「涙はご遠慮いただきたい。苦しみの無駄遣いだ」

 そう、驚くべきことに魔界では苦しみとは貯金したくなるほど尊いものなのであった…!


■ピンヘッドの説得力

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『ヘルレイザー』© NEW WORLD PICTURES 1987

 この「ピンヘッド」がなぜホラーアイコンとして広く人に受け入れられたのか? という点においてひとつ発見したことがある。それは彼がモンスターであるにもかかわらず、ゲス要素が極めて少なく、紳士的で時に哲学者のような佇まいをしていたことだ。やたら姿勢がよいところもどこか滑稽で、彼の変態哲学を無下にはできない“圧倒的な説得力”を放っていたからこそ、人気が出たのかもしれない。

 で、後半になると、ラリーの娘でありジュリアの義理娘であるカースティがジュリアと共謀するズル剥けフランクの存在に気がつき、ひょんなことからルマルシャンの箱を手に入れて――!? こうして物語は摩訶不思議な「魔界・現実・エロ・グロ」の渦の中で驚くべき結末を迎える。

 長くなってしまったが、『ヘルレイザー』はとにかく人間に潜む欲望をエログロ交えて、崇高に、そしてファンタジックに描いたホラー映画だ。セックスシーンさえ目隠ししておけば、子どもに見せてもいい映画かもしれない。当時のグロシーンなど、ぶっちゃけそこまでグロくないので、映画『SAW』の痛みに耐えられる人なら余裕であろう。とはいえ『ヘルレイザー』が名作といわれるのは、時代と共にうつりゆく共感としての“痛み”ではなく、もっと普遍的な“苦痛”を描き、そこに創造力を与えているからである。だからこそ、子どもにも見せてクリエイティビティを養ってほしいのだが。(推し過ぎか…?)

 蛇足だが、“皮膚を削って射精する男”を描いた韓国の去勢映画『メビウス』を見た人なら「苦痛こそ快楽の源である」という言葉はピンとくるかもしれない。精神面だけではなく、肉体的・脳科学的にも痛みと快楽は表裏一体であることが指摘される今、『ヘルレイザー』を見て、改めてその哲学的側面に目を向けても面白いだろう。

 とりわけ『ヘルレイザー』1,2,3はそうした哲学的要素とエンタメが絶妙に融合した名作であるが、なんと今回キングレコードから6枚組のHDニューマスター版のブルーレイBOXヘルレイザー1,2,3《最終盤》が2月8日に発売された! 少しでも気になった人はぜひ手に取って、伝説の映画を堪能してほしい。


■Blu-ray情報

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「ヘルレイザー1,2,3《最終盤》」(キングレコード)

「ヘルレイザー1,2,3《最終盤》」

魔道士が大活躍するホラー映画の金字塔シリーズ!!
本編HDニューマスター版!!638分の豊富な特典映像を収録の超豪華6枚組!!32ページブックレット封入

●『ヘル・レイザー』(DISC1)
1987年/イギリス映画/1988年日本公開
原題:HELLRAISER

本編:93分
仕様:カラー 1080p High-Def
音声:①本編 オリジナル英語(リニアPCM/5.1ch)
   ②本編 オリジナル英語(リニアPCM/ステレオ)
   ③日本語吹替(ドルビーTrue HD/モノラル)
   ④オーディオコメンタリー日本語(ドルビーTrue HD/ステレオ)
字幕:①日本語

■音声特典(本編DISC)
 ●『ヘル・レイザー』
   日本語吹替版(1990年テレビ東京木曜洋画劇場にて放送)
   出演:納谷六朗、弥永和子、深実りか、大友龍三郎、高宮俊介、筈見純
  ●バタリアンズ・山口雄大、井口昇によるオーディオコメンタリー 

■映像特典(特典DISC1)
 220分
 ・ダグ・ブラッドレイ『ヘル・レイザー』で魔道士ピンヘッドを演じて
 ・ショーン・チャップマン『ヘル・レイザー』でフランクを演じて
 ・クライヴ・パーカー~『血の本』シリーズおよびその他の著作~
 ・『ヘル・レイザー』製作の裏側
 ・地獄のサウンドトラック~コイルが製作した幻の曲たち~
 ・リヴァイアサン~『ヘル・レイザー』の製作~
 ・ヘル・レイザー予告編

●『ヘルレイザー2』(DISC2)
1988年/イギリス映画/1989年日本公開
原題:HELLBOUND:HELLRAISER Ⅱ

本編:99分
仕様:カラー 1080p High-Def
音声:①本編 オリジナル英語(リニアPCM/5.1ch)
   ②本編 オリジナル英語(リニアPCM/ステレオ)
   ③オーディオコメンタリー日本語
字幕:①日本語

■音声特典(本編DISC)
 ●『ヘルレイザー2』
  バタリアンズ・山口雄大、井口昇によるオーディオコメンタリー 

■映像特典(特典DISC2)
 210分
 ・ダグ・ブラッドレイ『ヘル・レイザー2』で魔道士ピンヘッドを演じて
 ・ショーン・チャップマン『ヘル・レイザー2』でフランクを演じて
 ・ヘルレイザー物語(本編、副音声)
 ・素材集
 ・リヴァイアサン~『ヘル・レイザー2』の製作~
 ・迷宮の迷い子たち
 ・ヘル・レイザー2予告編

●『ヘルレイザー3』(DISC3)
1992年/アメリカ映画/日本未公開
原題:HELLRAISER Ⅲ:HELL ON EARTH

本編:93分
仕様:カラー 1080p High-Def
音声:①本編 オリジナル英語(リニアPCM/ステレオ)
   ②オーディオコメンタリー英語(ドルビーTrue HD/ステレオ)
   ③オーディオコメンタリー英語(ドルビーTrue HD/ステレオ)
字幕:①日本語

■音声特典(本編DISC)
 ●『ヘルレイザー3』
   ①英語オーディオコメンタリー(脚本ピーター・アトキンス)
   ②バタリアンズ・山口雄大、井口昇監督によるオーディオコメンタリー 

■映像特典(特典DISC3)
 208分
 ・テリーという人物~ポーラ・マーシャルとのインタビュー
 ・ヘルレイザー3が出来るまで~監督アンソニー・ヒコックスとのインタビュー~
 ・ダグ・ブラッドレイ『ヘル・レイザー3』で魔道士ピンヘッドを演じて
 ・素材集
 ・地上の地獄~『ヘル・レイザー3』の製作~
 ・CLIVE BARKER’S SALOME AND FORBIDDEN
 ・Clive Barker’s SALOME
 ・Clive Barker’s THE FORBIDDEN
 ・ヘル・レイザー3予告編

★予告編はSD収録になります。
★映像特典の一部にノイズがある箇所がございます。古い映像のためマスターに起因するものです。ご了承ください。

http://www.kingrecords.co.jp/cs/g/gKIXF-447/

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コメント

6:匿名2017年2月12日 20:38 | 返信

「苦痛こそ快楽」は、吸血鬼映画の吸血シーンだな。
血が出るくらいに咬まれているのに、なぜか最後は恍惚
とした表情になっていく犠牲者達…。

5:匿名2017年2月11日 14:56 | 返信

メビウスの方が気になった。宣伝失敗だな

4:匿名2017年2月10日 23:37 | 返信

ただの宣伝だ!でも涙はご遠慮いただきたい。苦痛の無駄遣いや!

3:匿名2017年2月10日 22:31 | 返信

ただの宣伝だ。
だがヘルレイザーはいいの!


……でもゲートオブインフェルノが好きなんだよな……ヘルレイザー好きとしては異端か……

2:匿名2017年2月10日 18:56 | 返信

ピンヘッド素晴らしい。涙はご遠慮いただきたいwww

1:匿名2017年2月10日 18:35 | 返信

ただの宣伝?(°Д°)

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