>  >  > 心が辛くなるほどオタクに迫った映画『堕ちる』

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村山和也

 AKB48誕生から10年、本格的に“アイドルブーム”と言われだして5年近くになる。最近では大手事務所にはない、インディーズならではの個性を持つ「ライブアイドル」「地下アイドル」をメディアで見ることも珍しくなくなった。映画界でも『リリカルスクールの未知との遭遇』『神宿スワン』『女の子よ死体と踊れ(ゆるめるモ!主演)』など、人気グループが出演する映画が立て続けに公開されている。

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画像は、『堕ちる』公式サイトより

 そんな中「群馬の織物職人が地下アイドルにハマって、地味な生活が一変。果たして無口な職人が地下アイドルに堕ちていくその先には何が待っているのか!?」というストーリーの映画『堕ちる』が話題だ。9月に第6回きりゅう映画祭2016で公開後、渋谷ロフト9を中心に上映会を行っており、都内では6度の上映会が全て超満員。さらに、短編ながら、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のオフシアターコンペティション部門にノミネート。アイドル映画という枠を越えて話題を呼びつつある。

 アイドルファン以外をも惹きつける『堕ちる』の魅力について、村山和也監督にお話を伺った。

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村山和也監督


■「職人」×「アイドル」という意外な組み合わせの理由

――まず、「なぜ群馬県桐生市でアイドルの映画を?」というところからうかがいたいんですけれども。

村山監督(以下、村松) まず『堕ちる』は、きりゅう映画祭が主催する企画コンペありきの映画なんですけど、そのコンペの条件が「桐生市で映画の大半を撮る」ということだったので、舞台は桐生市ということになってます。応募のために現地に足を運んでみて、織物が有名なファッションの街だというのを知ったんですね。のこぎり屋根の伝統的な建物もあって、職人もいると。そこで「職人」ってのが1つ頭に浮かんで、それと今までやってきたMVなどの仕事から「アイドル」というのを組み合わせました。


――アイドルというネタも話題になるだろうと。

村山 そうですね。ちょっと遅いかな、くらいではあるんですけど、どこの地方にもローカルアイドルはいますし、それに今まで仕事してきたアイドルも出てもらえるかなっていうのもあって。


――アイドルのめめたん役の錦織めぐみさんも監督が過去に撮ったアイドルグループ(Luce Twinkle Wink☆)のメンバーですもんね。もともと監督は群馬に縁があったとかそういうわけではなかったんですか?

村山 まったくないです(笑)。映画を作りたい、という熱がピークになってて、そのタイミングでこのコンペの話を聞いて参加してみようと思いました。前も同じコンペに参加したことあったんですけど、それはネットの情報だけで企画を考えた感じでダメでした。今回は桐生まで足を運んでうろうろして考えて、真面目に作りました(笑)。

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堕ちる』より


■自分の映像を見ないアイドルファンの姿に奮起

――もともと若い時からニューヨークに渡って、22歳で帰国されたそうですが。

村山 ずっと映画を勉強してたんですが、家庭の事情で急遽帰ってこなきゃいけなくなって。帰国してから映画関係の方にお会いしたりもしたんですが、やっぱり映画じゃ食えそうもないし、まずはビジネスとして成り立ってるMVやCMなどの監督になってから映画に挑戦しようと思って、一度CM制作会社に就職した感じですね。


――まずは映像を自分の仕事として成立させようと。

村山 そうですね。でも半年でその会社は辞めちゃって、フリーランスで映像制作の色々な業務をやって26歳ぐらいから映像ディレクターとして食えるようになりました。それで日々の請負仕事で映画への情熱を忘れかけていた時に、1つきっかけがあったんです。某アイドルのライブのOP映像を監督して武道館に自分の映像を観に行ったんですが、映像の前にそのアイドルが先に出てきて、1曲歌って盛り上がった後に、自分の映像が流れてお客さんが誰も観ていないというのを体感しちゃって。そこで、やっぱりみんなが観にきてくれる自分の映像を作りたいな、と改めて思いました。自己実現欲求じゃないですけど「やっぱり映画作りたいな」って思い出したのが3、4年前で。


――それから映画撮るためのアプローチはされてたんですか。

村山 経団連がやってるVIPO(映像産業振興機構)って知らないですか? 映画作家を育てるプロジェクトとかあって、そういうところに脚本出したり、映画のプロデューサーに会いに行ったり、やれることはやってたんですよ。でもどれも上手くいかなくて。だからもう結局は自分で企画通すしかないなと思って。それで桐生に至るって感じです。だから「桐生に拾ってもらった」って思いはすごいありますよね。


――自主映画とかそういう方向は考えなかったですか。

村山 自分でお金出して作るというのもあったんですけど、自分としてはふつふつと内面から湧き出るよりは、与えられたお題の中で考える方が得意になっちゃってるっていうのはありますし、あくまでも仕事の延長で責任感持ってやりたいってのはありました。


――このテーマで撮りたいという衝動よりは、とにかく映画が撮りたいと。

村山 オープンに何でもいいからってよりは、アイドルとか地方とか企画の大枠を作ってくれた方がいいですね。あと締め切りがあった方が(笑)。それがないと延々と終わらなくなりそうなんですよ。そういう仕事にどっぷり浸かってたんで……。


■ストイックな男が何かにハマっていく姿がしみる

『堕ちる』の主役は桐生市の織物職人。ひょんなことから地元アイドル・めめたんのライブに行くことになり、そのステージを一目見た瞬間、彼女に“堕ちる”。それからCDにサイリウム、ポスターと買いあさり、それまでの彼の地味な毎日が一変していく。


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堕ちる』より


――今回の『堕ちる』は村山監督が脚本も書かれてるわけですけど、アイドルではなくてアイドルオタク側を主役にしようと思ったのは?

村山 オタクっていうよりは、ストイックな男が何かにハマっていくって話にしたくて。自分も何かを好きになったらそれしか見えなくなるところもあるんで、自分の物語として描きつつエンターテイメントとして成立させなきゃなって思ったんです。


――主人公の耕平は地下アイドルにハマるわけですけど、「何かにハマる」という部分では普遍的な話ではありますよね、特に男だと。ハマるほどに、愛が濃くなるほどにどんどんキモくなっていく感じというか、それがうまく描かれてて笑えるし身にしみる。

村山 そうなんですよねー。周りから見ると「どうなんだそれ?」って事をやってしまう感じはありますよね。


――そこが共感できるから、アイドルオタクのためだけの映画になってないと思うんですよ。何かハマるほど好きなことがあった人なら身にしみると思います。

村山 そう言っていただけるとね、嬉しいんですけどね。


――雲が「めめたん」に見えてしまう感じ、あの「それしか考えられなくなる感」てのはわかる人はわかると思います。

村山 それは恋してる感じなのかもしれないですけどね。

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堕ちる』より


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