>  >  > 時代錯誤の「がん患者は温泉禁止」
連載「病理医があかす、知っておきたい「医療のウラ側」」第21回

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【健康・医療情報でQOLを高める~ヘルスプレス/HEALTH PRESSより】

がん患者は「温泉」に入ってはいけない? 「根拠なき根拠」が32年ぶり改定された舞台裏の画像1
がん患者は「温泉」に入ってはいけない?(http://jp.depositphotos.com)

 「温泉好きの病理医」である筆者は、全国各地の温泉に入るたびに、まず確認することがある。それは、脱衣所に掲示されている「一般的禁忌症」である。

 禁忌症とは、温泉に入ることによって身体に悪い影響をきたす可能性がある病気をさす。具体的には、「①温泉の一般的禁忌症」「②泉質別禁忌症」「③含有成分別禁忌症」に分けられる。

 つまり「一般的禁忌症」とは、温泉に含まれる「泉質」や「含有成分」に関係なく、すべての温泉に共通する「禁忌症(温泉を利用してはいけない病気)」という意味だ。

 温泉協会から指示されているのか、都道府県の認可に必須なのかどうかはわからないが、「湯治」を売りにするほぼすべての温泉で、一般的禁忌症として「悪性腫瘍」、つまり「がん」を指摘している。

 いわく「急性疾患(特に熱のある場合)、活動性結核、悪性腫瘍、重い心臓病、呼吸不全、腎不全、出血性の疾患、高度の貧血、そのほか一般に病勢進行中の疾患」……。

 がん患者は温泉に入ってはいけない? 医学的根拠のない、そして現実離れしたこの記載は、いったいなぜなのだろう? 秋田県の玉川温泉のように「がん患者さんの湯治」を売りにする温泉があるのに!

 ちなみに、乳がんの女性は、美容上の問題から、温泉に行きたがらない人が少なくない。「患者さんの味方」を自認する病理医としては、特に乳がん患者さんには、ぜひ温泉でリラックスして、心の健康も取り戻してほしい。

「禁忌症及び入浴又は飲用上の注意事項」が32年ぶりに改訂

 「日本医事新報」4728号(2014.12)に掲載された、国際医療福祉大リハビリテーション学の前田眞治教授の記事では、温泉にいける「一般的禁忌症」の「根拠なき根拠」を明白にしていて、一読して、思わずため息と苦笑いが漏れた。

 いわく、明治19年の「日本鉱泉誌」(内務省衛生局編)に、以下のような記述があるそうだ。

 「肺結核、慢性肺炎の末期、壊血病や癌腫のように重症で全治を期待できない者は自宅で静養するのがよい。温泉地へ行くまで体がもたなく、却って命を縮めることになる」

 「温泉地へ行くまで体がもたなく、却って命を縮めることになる」って、交通機関や医療の未発達な時代の遺物にちがいない。やれやれ……。

 所管する環境省は、平成26年7月に公益財団法人中央温泉研究所が主催したセミナーでの前田教授による上記の発表を受けて、同月、遅まきながら改訂通知「禁忌症及び入浴又は飲用上の注意事項(医学的解説)」を公表した。

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