>  > 死体解剖医に聞いた“いまだ解明されない死体の謎”

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画像は、『死体格差 解剖台の上の「声なき声」より』(双葉社)

 解剖医が語る死体の不思議。幽霊の存在、魂のありか、死体蘇生……日本のメディアではなぜ死体の映像がタブーなのか? 兵庫医科大学法医学講座主任である西尾元教授の新著『死体格差 解剖台の上の「声なき声」より』(双葉社)の出版記念インタビュー第1回目では、日本が抱える「悲しい死」の闇や知られざる解剖医の世界について生々しく語ってもらった。

 出版記念インタビュー第2回目は、死体と日々向き合う西尾教授に「幽霊」「魂」「死体蘇生」など、TOCANAならではの死にまつわる質問をぶつけてみた。

<第1回/死体格差とは何か?>


■解剖医が見た不思議な現象

――先生から事前にいただいたTOCANA宛の取材アンケートによれば、「不思議な現象として認識されることがある」とありました。これは、どういうことでしょうか?

西尾先生(以下、西尾)「法医学は科学の一分野であり、UFOなどという不思議な現象を扱う分野とは対極をなすものではありますが、あくまでも、理由がいまだわかっていないという意味での“不思議な現象”はあります。たとえば…

・アルコールを長年摂取してきた人の皮下脂肪は普通の人より白っぽく、メスで皮下組織を切る時に切りづらい。

・精神疾患を持っていた方の中には、頭蓋骨の骨の厚さが厚い人が多い。

 というものなどですが、これも、あくまで私個人がそのように“思っている”だけで、医学的に根拠があるという話ではありません。法医学解剖医の中には同じことを感じている人がいるかもしれませんし、そうは思わない人もいると思います。

 ちなみに本書でも紹介しましたが『人は死後腐敗していくと、緑色になる』というのも不思議話として語られることがあります。でもこちらは確かな理由がすでにわかっています。緑色は血液の中に含まれるヘモグロビンが死後、主に腸管の中で産生した硫化物と結合した時の、出てきた色なのです」


■奇妙な形の死体

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西尾先生

――では、先生がこれまで解剖された中で、奇妙で不可解な死体があれば教えていただきたいのですが。

西尾「奇妙な……とは、たとえばどんなものでしょうか?」

――座った状態で飛び降り自殺したら、衝撃で背骨が上方へ飛び出て、頭が股間の辺りまでずり落ちてしまった……という死体の話を聞いたことがあるんです。真実かどうかは分かりませんが、そのような“非現実的”なことが遺体に起こり得るのかと思いまして。

西尾「飛び降りた時に、どのように落ちたかにもよるかと思います。たとえば、足から落ちると、力が真下から真上に向かいます。頭蓋骨は、背骨の上に乗っていますから、落ちた時の下から突き上げられる衝撃で頭蓋底の底がズドンと割れ、背骨に頭が串刺し状態になるかもしれません。私はそんな死体は見たことはないですが」


■謎の死因

――死因についてお尋ねしたいのですが、分からない場合は死体検案書に「不詳」と書かれるわけですね。その中でも先生が特に悩まれたような、印象に残っている謎の死因というのはありましたでしょうか?

西尾「不詳といってもいろんな理由があります。腐敗が進んで白骨化したものや、ミイラ化したものなど、骨や皮ばかりになった遺体では、解剖しても死因を究明することは難しいです。ただ、死後まもなくの新鮮な遺体であるにもかかわらず死因が分からない場合もあり、こちらとしてもフラストレーションがたまります。

 法医解剖では原則的に頭蓋腔(ずがいくう)、胸腔、腹腔を開け、体内の臓器をすべて取り出してくまなく観察するので、遺族からすれば、『遺体に傷をつけて解剖までして、なぜ死因が分からないのか?』と疑問に感じますからね。でも、残念ながら、分からないものは分からないのです。『死因は、今の法医学の診断技術ではとらえきれませんでした』としか、言いようがないのです」


――では、どういった技術が進めば、死因が分かるようになるのでしょうか? 

西尾「法医学では、肉眼で見て診断するということを重要視します。実際に亡くなっているんですから、肉眼で見て見つかる死因もたくさんあるんです。ただ、死因が見つからないとなれば、肉眼以外の手段を取らざるを得ない。今は、薬毒物に関しては、質量分析器があります。けれど、それでも危険ドラッグのような類いの薬物を分析するのは非常に難しいのです。なぜなら、それらは単一の化合物だけでなく、いろんなものが混ざっているので、質量分析器にかけても調べるのが非常に難しいのです。ですから、法医学の知識が蓄積された上で、進歩した科学的診断技術を取り入れれば、現状では不詳の死因も分かるようになると思うんです」


■「弁慶の立ち往生」を法医学的に紐解く

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「弁慶の立ち往生/Wikipediaより」

――これは戦争映画で見たのですが。たとえば、亡くなった方が、死後硬直が始まる時に動きだすということはあり得るのですか?

西尾「その映画を見たわけでもないので、なんとも言えませんね……。ただ、死後硬直に関しては、こんな話があります。 「弁慶の立ち往生」という有名な伝説があるでしょう? しかし、あれは法医学的な現象でいえば、死後硬直だろうと言われています。死後硬直は、死体の筋肉が硬化する現象で、死後徐々に全身に広がって行くんです。弁慶の場合は、筋肉量が多かったと思いますし、運動などで筋肉が熱を持った状態にあったので硬直の反応が早く進んだと考えられます。『即時性死後硬直』(死亡直後から全身の筋肉がほとんど同時に強く硬直することがあり、激しい筋肉疲労、精神的衝撃、頭部射創による即死などで見られる現象)で、弁慶は死んだ時に立ったままだったのではないかと考えられています」


――そういえば本書にも、「凍死した遺体は服を脱いだ状態で発見されることがある」と、書かれてありましたが、映画『八甲田山』でも、雪中行軍の際、雪山で遭難して精神を病んだ兵士が服を脱いで死ぬシーンが描かれていました。

西尾「人の脳内には体温調節中枢があるのですが、凍死する過程でそこになんらかの異常が起こるんだと言われています」


――「法医学で紐解く歴史ミステリー」というのも面白そうですね!

西尾「紐解くとは大げさですね(笑)。でも、法医学で歴史的な死を説明するのは面白いかもしれません」

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コメント

1:匿名2017年5月17日 20:46 | 返信

いい記事。
内容がしっかりしているからだろう。
もっと別の媒体でも扱う価値のあるものだと思う。

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