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映画『MOTHER FUCKER』大石規湖×谷ぐち順 第1回

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須藤輝

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映画『MOTHER FUCKER』公式サイト」より

 25年にわたり、ある意味で正体不明、謎の集団として日本のアンダーグラウンドシーンで暴走し続ける音楽レーベル“Less Than TV”(以下:レスザン)。パンク/ハードコアを基調としながらも、1992年の設立からU.G MAN、GOD’S GUTS、DMBQ、bloodthirsty butchers、ギターウルフ、BEYONDS、ロマンポルシェ。など多彩かつ一癖も二癖もあるバンドの音源をリリースし、そのレーベルカラーを言語化するのは困難を極める。

 そんなある意味謎のレーベルの代表である谷ぐち順と、その妻・YUKARI、そして一人息子である8歳の小学生・共鳴(ともなり)の日常に1年間密着したドキュメンタリー映画『MOTHER FUCKER』が、8月26日より公開中だ。その内容は、いわゆるロックドキュメンタリーとは一線を画す、かなり珍しいタイプの「家族の物語」に仕上がっている。トカナでは監督の大石規湖と、主演の谷ぐち順にインタビューを実施。『MOTHER FUCKER』はいかにしてできあがったのか、たっぷりと話を聞いた。


■映画を観たら、「MOTHER FUCKER」の意味が変わるはず

――大石さんが、谷ぐちさん一家を撮りたいと思った動機は?

大石監督 たしか2011年、東日本大震災のあとだったと思うんですけど、たまたまLimited Express(has gone?)(YUKARIと谷ぐちが所属するバンド)のライブを撮りに行ったんですよ。そしたらリハで、YUKARIさんがまだ赤ちゃんの共鳴くんをおんぶしたままベースを抱えて、谷さん(谷ぐち)がYUKARIさんのベースのツマミをいじってるんです。その光景を見たときに「なんだこれは!?」と思ったんですよ。

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映画『MOTHER FUCKER』公式サイト」より

谷ぐち代表 そんなに変だった?

大石 いや、変というよりは、信じられない光景というか。そのとき私は20代後半で、やりたいこともできてないし、結婚もしてないし子供もいない、もっと言えば日々の生活すらままならない状態だったんです。だから、谷さんたちが家族でやりたいことをやってることが衝撃だったし、そこに惹かれて「この人たちを撮ってみたいな」って。その後、「METEO NIGHT」(Less Than TVが主催するライブイベント)とかに行ってコソコソ撮影しつつ「映画を撮りたい」っていうのを谷さんの周りの人たちに相談したんですけど、「それ、谷さんに直接言ったら断られるよ。避けられるよ」って言われたんですよ。

谷ぐち 避けないよ(笑)。

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大石規湖監督

大石 たぶん、パンク/ハードコアの映画っていうと、ヒストリーものを連想されると思うんですよね。でもそうじゃなくて、私はあくまで「家族を撮りたい」と思いながら外堀を埋める感じで探りを入れてたんです。それが谷さんに間接的に伝わったらしく、2015年の年末に谷さん本人から電話がかかってきて「映画作りませんか? タイトルは『MOTHER FUCKER』で」って。そこで「やります!」って即答して、すぐ撮り始めました。

谷ぐち 大石さんが家族を撮りたいと思ってるっていうのは知らなかったんですけど、前に会ったときに「密着してみたい」って言われたのは覚えてて。そのときは「密着してもなんも出てこねえよ。誰も見ねえよ」って思ってたんです。でもあるとき、ふと「家族とレーベル」みたいなテーマならいけるんじゃないかって。

映画『MOTHER FUCKER』予告編

――具体的には?

谷ぐち いろいろとタイミングが合ったんですよね。まず、2015年の年末に電話したのは、翌年の2016年に「METEOTIC NIGHT」っていう地方イベントを何本も打つって決めてたんで、それに密着してもらったら「家族の珍道中」みたいになるかなって。それから、ちょうど共鳴がチーターズマニアっていうハードコア・バンドを結成してて、その初ライブがきっと来年にあるだろうと。あと、Limited Express(has gone?)に「MOTHER FUCKER」っていう曲もあったから(アルバム「ALL AGES」に収録)、「MOTHER(=YUKARI)」と「FUCKER(谷ぐちは「FUCKER」名義でフォークシンガーとしても活動中)」でちょうどいいんじゃないかって。

――『MOTHER FUCKER』というタイトルで、難儀しませんでした?

大石 難儀しまくってます(笑)。最初に谷さんから電話で聞いたときはめちゃくちゃ面白いと思ったんですけど、いわゆる卑語なので、ラジオではまだ1回も告知できてないし、活字メディアでも伏字にしなきゃいけなかったり

谷ぐち 俺はぜんぜん気にしてなかったですね。というか、『MOTHER FUCKER』以外ありえない。『MOTHER FUCKER』じゃなかったらたぶんこの映画はできてないですよ。

大石 たしかに。私としては、タイトルとか見た目とか肩書きとかで中身を判断しないでほしいなっていう気持ちも込めてるんですよね。実際、映画の中に中指立てて悪態ついてる人なんて1人も出てこないし、きっと映画を観た方々の中で「MOTHER FUCKER」という言葉の意味が変わるはずなので。


■谷ぐち家では毎日何かしら“事件”が起きていた

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――映画の軸として「METEOTIC NIGHT」と共鳴くんの初ライブがあったとはいえ、ドキュメンタリーである以上、出たとこ勝負な部分もありますよね?

大石 むしろ完全に出たとこ勝負でした。レスザンというレーベルも、別に専属のバンドがいるわけではないし、地方で何が撮れるかわからないし、共鳴くんの初ライブの日程もまだ決まってなかったんですよ。でも、幸いにも、撮り始めたら毎日何かしら事件が起きて

谷ぐち 起こってました?

大石 谷ぐち家にとっては日常なのかもしれないけど、私にとっては事件ですよ。だって、普通は家の中で選挙とかしないでしょう。

――選挙?

大石 映画では使われてないシーンなんですけど、ちょうど参院選の時期に。

谷ぐち なんで選挙することになったかというと、あるとき共鳴が「なんで家の中でパパが一番偉いことになってるの?」みたいなことを言い出したんですよ。だから「いや、別に偉くないし。じゃあ誰がリーダーか、民主的に決めよう」って。

――立候補者および投票者は、共鳴くんと谷ぐちさんとYUKARIさんの3人?

大石 そうです。なのにわざわざ投票用紙と投票箱を作って、友達に投票所係員になってもらって。

谷ぐち 不正がないようにね。

大石 で、蓋を開けてみたら、YUKARIさんは谷さんに、谷さんは共鳴くんに、共鳴くんはYUKARIさんに投票してて。

谷ぐち 同票(笑)。

大石 でも、「ちゃんと自分の意思を表示しなきゃいけないから、白票はナシだよ」みたいなやりとりの中で、共鳴くんに選挙とは、民主主義とは何かっていうのを教えてる感じがしたんですよ。

谷ぐち 子供の持つ疑問て、わりとハッとさせられるものが多いですよね。家の中で誰が偉いかなんて意識したことないし、「試しに決めてみる?」って選挙して、結局決まらない。「じゃあこれからは、何かを決めるときは全員で意見を出し合って決めていこう」と。そのためにわざわざ投票箱を作ったりするのって、バカバカしくていいじゃないですか。

大石 ほぼ毎日、谷ぐち家を撮りに行って、泊まりがけになることも多いんですけど、子供の質問に対して「そこまで真剣に全力で答えるんだ?」って思ったんです。絶対にごまかさないで、納得するまで説明して、なんなら体験させるみたいなことが毎日おこなわれていて、それが私には全部事件みたいに見えたんですよね。

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