「PG12」の限界グロに挑んだ映画『不能犯』が、ホラーじゃないのにマジで恐い!見たら最期…白石晃士監督インタビュー

■怪しくも美しいスクリーンで展開される映像トリップ

――宇相吹がマインドコントロールをかける時の演出が印象的でした。

白石 万華鏡とフラクタル的な要素を使ったイメージでマインドコントロールの威力を演出したのは、単純に私がやってみたかったからですね。原作の漫画では、そこにはないものを幻視として描いていますが、実写では宇相吹がマインドコントロール的なことをしているというのが伝わりにくい。だからもっと、イリュージョンに翻弄されている感じを見せないと、映像的には物足りないなと感じたんです。抽象的な表現なので言葉で説明するとなかなか伝わり辛いんですが、あの映像に関しては相当やり直しをしています。


――毎回違う柄だったので、面白いなと思いました。

白石 毎回同じだと、「またか!」というように、驚きがありませんからね。マインドコントロールをかけられる側の要素を反映したイメージにするように作りました。


■現代版「笑ゥせぇるすまん」

「PG12」の限界グロに挑んだ映画『不能犯』が、ホラーじゃないのにマジで恐い!見たら最期…白石晃士監督インタビューの画像9(c)宮月新・神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会

――そういえば、宇相吹が「笑ゥせぇるすまん」とキャラクター的に似ているという話があるんですが。

白石 原作者の方にはそのあたりのことは聞いていないですけれども、脚本やプロット段階の打ち合わせをしているときに『「笑ゥせぇるすまん」的な要素がありますよね』という話が出ていて、松坂くんともそんな話をしました。確かに、スーツも黒いし謎の存在ですから、重なる部分があると思います。

「笑ゥせぇるすまん」をもっとセクシーにして、エログロとバイオレンスの要素を加えて現代風にアレンジしてさらにイケメンのキャラクターにして…という構想はどこかにあったのかもしれませんね。


■『不能犯』にまつわる不思議な話

「PG12」の限界グロに挑んだ映画『不能犯』が、ホラーじゃないのにマジで恐い!見たら最期…白石晃士監督インタビューの画像10(c)宮月新・神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会

――ここでTOCANAならではの不思議系の質問をさせていただきたいと思います。たとえば、松坂さんに本当にマインドコントロールされたとか、撮影にまつわる不思議なこととかありませんでしたか?(笑)

白石 先日の完成披露試写会の時のことですが、新田くんと間宮くんも揃って会った時に話していたことが不思議でしたね。

 映画『不能犯』と 2017年に関西テレビで放送されたドラマ『僕たちがやりました』との共通項が不気味なぐらいありまして。まずは両作品に新田くんと間宮くんが出演している。そして、間宮くんの先輩として『不能犯』に出ている今野浩喜さんが『僕やり』でも先輩として出演している。そしてシナリオも一部『僕やり』と似ている要素があって「やけに重なっているね」と。本当に偶然の一致でごく自然にそうなったんですけれども、驚きです。


――ほぼ同時期に、すごい繋がりがあるのは不思議ですよね。

白石 ただ、そういうのってヒットするいい兆候かなと感じています。もしかすると、映画の神が見ているのかな。最高のキャスティングとか神の采配でやっているのかも(笑)。


■海外で超大作ホラーに挑戦!

「PG12」の限界グロに挑んだ映画『不能犯』が、ホラーじゃないのにマジで恐い!見たら最期…白石晃士監督インタビューの画像11白石晃士監督/撮影・編集部

――最後に、白石監督のこれからの野望などありましたら教えてください。

白石 野望ですか。これは昔から願っていることなのですが、自分が本当に心底面白いと思える作品でもっと大ヒットを飛ばして金持ちになりたいなと思っています。


――大金持ちになったとしたら、お金を何に使うんですか?

白石 特に……、生活のことを心配したくないだけです(笑)。銭勘定に気を取られずに、映画のことだけを考えていたいのです。


――海外進出も?

白石 ハリウッドも含めて海外進出ができたらいいですよね。ちょうど今、マレーシアの映画を進めている最中なんですが、少し前の中国の映画祭に『不能犯』と『貞子vs伽椰子』を出品した時はとても高評価をいただいて。中国は市場が非常に大きいので、中国に受けるホラー映画を撮りたいなと思いましたね。表現の規制もあるせいか、今中国産のホラー映画って下火なんですよ。


――ホラー映画の規制ですか?

白石 共産主義なので本質的には宗教をを禁止していますし、目に見えない世界があると思っちゃいけない社会。なので、幽霊は存在してはいけないし、超能力や超常現象もあってはいけない。だから中国の映画の中で、幽霊的なものが出てきても最終的に「まぼろし」とか「妄想」で済ませてしまうんです。よくあるのが夢オチらしいんですけれど。でも逆に、最終的にそんな感じで締めれば問題ないらしいので、そのあたりの規制を守りつつ、中国で受けるホラー映画を作りたいなと。できる幅が自分にはあると思っているので、ぜひ挑戦してみたいですね。

――ありがとうございました!

 映画『不能犯』で、【立証不可能犯罪】スリラー・エンターテインメントという新たなジャンルをスタイリッシュで刺激的に見事に表現した白石監督。カルト的な作品からメジャー級の作品までどんどん世界を広げて発展して行く白石監督は、これから海外でどのような白石ワールドを展開していくのだろうか? 白石監督が作る映画の面白さは、どんな作品でも保証されている。今後も最高の映画作品を我々に提供してくれるに違いない。

(取材/白神じゅりこ)

映画『不能犯』
公開時期:2月1日(木)
出演:松坂桃李、沢尻エリカ、新田真剣佑、間宮祥太朗、テット・ワダ、菅谷哲也、岡崎紗絵、真野恵里菜、忍成修吾、水上剣星、水上京香、今野浩喜、堀田茜、芦名星、矢田亜希子、安田顕、小林稔侍
原作:『不能犯』(集英社「グランドジャンプ」連載)原作:宮月新/画:神崎裕也)
監督:白石晃士
脚本:山岡潤平、白石晃士
主題歌:GLIM SPANKY「愚か者たち」
(c)宮月新・神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会
HP:http://funohan.jp/

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文=白神じゅりこ

新感覚オカルト作家。ジャンルを問わず幅広く執筆。世の中の不思議を独自の視点で探求し続けている。

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