持ち主を悩ます鬼を斬った? 天下五剣の1振り「鬼丸国綱」とは(前編)
鬼丸国綱の拵えは室町時代初期に作られたものと推測されており、戦国時代の武将である細川藤孝(ふじたか)、またの名を文武両道のチート武将「細川幽斎(ゆうさい)」によって修復されたと言われています。つまり鬼丸国綱の拵えは、室町時代に作られた拵えがほぼ同じ形で現代に伝わっている、と考えられるのです。
先ほど「拵えと一緒に伝わる、古い時代の日本刀は少ない」と述べましたが、鬼丸国綱は、古い拵えを現代に伝える貴重な資料とも言えるのです。
さて、鬼丸国綱の拵えは「鬼丸拵(おにまるこしらえ)」「鬼丸造り」と呼ばれています。これは元々「楠(くすのき)造り」「楠拵え」と呼ばれるものでしたが、鬼丸国綱の拵えが広く知られると、鬼丸拵は鞘を革袋で覆った「革包太刀拵」の代名詞となるにまで至りました。
この拵えの特徴は「実戦向けの防水加工」とまとめられます。いわば刀を覆うカバーのようなもので、これを付けておけば鞘に水などが入るのを防げるため、雨が降っていても刀の錆びの心配をしなくてよいのです。その防水性は非常に高かったらしく、合戦の最中で雨に降られても大丈夫、ということで、実戦向けの拵えと言えるでしょう。
また、旧日本軍の軍人が持っていた「軍刀」にも鬼丸拵の意匠が取り入れられていたようで、現代に伝わる軍刀を見るに、鞘が革で包まれたものや、同時に柄から鐔までをすっぽり覆うカバーも付属しているものが多く見られます。
余談となりますが、鬼丸拵は幕末(1850年前後)に江戸で大流行した、という記録が残されています。
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