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『涼宮ハルヒの憂鬱』に駄作はない、長門壊れた説は完全に誤読! 『エンドレスエイトの驚愕』 著者インタビュー(哲学者・三浦俊彦東京大学教授)の画像3
撮影=編集部

――EEは放映中にリアルタイムで観ていたんですか。

三浦 いえ、噂で聞いていました。当時は女子大の文化芸術コースで教えていたので、オタクの学生がたくさん集まっていたんです。教員にもアニメ論をやっている人がいましたし。それで、まずは第一期(※1)をDVDでまとめ買いして観てみました。原作に忠実で作り方も丹念。同時代の他のアニメ作品と比べても抜群によくできている。特に声優の演技がいい(笑)。これは素晴らしいなと。

(※1)『涼宮ハルヒの憂鬱』は同名タイトルで2つのTVシリーズが制作されている。全14話の第一期(2006年)と、全28話の第二期(2009年)だ。ただし第二期のうち14話分は第一期全14話の放送順を恣意的に並び替えた事実上の“再放送”であり、完全新作は残りの14話分。その14話のうち8話が『エンドレスエイトⅠ』~『Ⅷ』で占められている。

 ところが続けて観た第二期のEEはさすがに萎えました。非常に味気なくて、砂を噛むような気分になりました。そのせいで視聴者離れが進んだのももっともだと思いましたし、翌年の映画『涼宮ハルヒの消失』(※2)の布石としてEEが機能するはずだったのに、あの演出で嫌気がさして大傑作の『消失』を観なかった人も結構いる。EEのせいで『ハルヒ』がオワコン化した感もあって、実にもったいない

(※2)2010年公開の劇場版。原作屈指の人気エピソードを2時間44分の長尺で描く、ハルヒシリーズの集大成的作品。TVシリーズ第一期第9話および第二期最終話『サムデイ・イン・ザ・レイン』の直後に起こる「世界の改変」が綴られた。ファンの間で“俺の嫁”人気が異常に高い宇宙人・長門有希(ながと・ゆき)が物語の軸になっている。本格的なSF展開や巧みな構成、長門やキョン(主人公)の見せるウエットな感情描写が際立っており、映画的評価も高い。なお、当初このエピソードはファンの間で第二期に組み込まれると予想されていたため、「EEが8回も使ったせいで『消失』が第二期に入らなくなった」というロジックでEEへの恨みが倍増したという背景もある。


■長門は断じて“壊れて”いない!

『涼宮ハルヒの憂鬱』に駄作はない、長門壊れた説は完全に誤読! 『エンドレスエイトの驚愕』 著者インタビュー(哲学者・三浦俊彦東京大学教授)の画像4
撮影=編集部

――本書前半では「エンドレスエイトが犯した4つの誤謬(ごびゅう)」として、制作サイドがどんな間違いを犯したのかの指摘が痛快でした。このなかでも直感的に理解できるのが「芸術学的誤謬」だと思います。EEで長門が味わった地獄の苦しみ(※3)を、同じような話を8回視聴することによって視聴者に味わわせるというのはおかしい、と。

(※3)長門有希は、ハルヒたちと過ごす夏休みの後半、8月17日から31日までの15日間を、“記憶を保ったまま”15532回も繰り返す。

三浦 登場人物が感じている感情を鑑賞者にもリアルに味わわせるのは、芸術のやり方ではないんです。虚構的感情だから芸術体験になるわけで。子供をなくした登場人物の悲しみを理解するのに、鑑賞者も同じように子供をなくす必要はないでしょう。というか、そもそも「長門がEEで15532回もループを繰り返して苦痛を味わい、彼女にバグが生じて『消失』の世界改変が発生した」は、解釈として完全に間違いです


――15532回のループによる「長門壊れた説」は、わりとファンの間では定説ですが……。

三浦 EEは長門が苦痛を味わって壊れたエピソードではなく、彼女が人間的感情に目覚めたポジティブなエピソードなんですよ、というのを本書の前半で論じています。本来はポジティブであることに制作サイドが気づいていれば、視聴者が退屈を感じるような演出ではなく、視聴者に「夏休みの多彩な楽しさ」を感じさせるものにできたはず。


――本書内で挙げられていた“俺の考えるEE”とも呼ぶべき「可能的エンドレスエイト」は、どれも「観たい!」と思わせるものでした。

三浦 脚本は同じでも回ごとに声優を変えるとかですね。これは今年1月から放映しているアニメ『ポプテピピック』に近い手法ですが、実際Twitter上でも「EEは『ポプテピピック』のやり方で良かったんじゃ?」という意見が見られました。あるいはモノローグを主人公のキョン視点ではなく、回ごとに変えるとか。長門一人称視点のEEだったら、みんな絶対観たいでしょ

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