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(C) 2017 A&E Television Networks, LLC | Our Time Projects, LLC


 国外に逃げても度々送られてくる脅迫メールは暗殺をほのめかし、メンバーたちは隠れ家から隠れ家へと逃亡を続ける。

 RBSSの中心メンバー、アジズは学生時代にアラブの春を体験し、アサド政権との戦いを決意。彼は英語が話せたことからスポークスマン的な役割を担う。NYで行われた国際組織「ジャーナリズム保護委員会」でRBSS代表として国際報道自由賞を受け取るのはアジズの役目である。彼には、受賞の喜びよりも、それまで失ってきた多くの仲間や家族への思い、これからも生命を賭けて真実を伝え続ける責任がこみ上げる。

 RBSSの記者モハマドは、元数学教師で自らの教え子がアサド政権に逮捕されたのをきっかけに自由のために戦う市民ジャーナリストとなった。カメラマンのハムードは、ISに殺されかかって国外に逃げるが、本国に残した父と兄弟をISに殺される。他のメンバーも最終的にはドイツでアジズと合流する。

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(C) 2017 A&E Television Networks, LLC | Our Time Projects, LLC

 しかし、ISは欧米のイスラム過激派にもテロを呼びかけ、それに感化された者たちによるテロがヨーロッパ各地でも勃発する。ベルリンの街中ではドイツ市民による移民難民の排斥のデモが行われ、アジズたちはここにも安住の地がないことを痛感させられる。

 カメラは厳しい現実ばかりでなく、それに落胆し、戸惑うメンバーたちの姿も容赦なく映し出していく。まるで彼らの心の傷口を押し広げて見せようとせんばかりの冷淡さまで感じられるが、これも事実である以上、彼らの真の姿であろう。

 ネット時代の今、情報戦争もまた戦いであり、世界中のどこにいてもそれは終わりなく継続する。

 現在、ISの勢力は驚くほど小さなものとなっているが、アサド政権はロシアの支援によって蘇り、クルド人勢力がアメリカ主導の有志連合のサポートを受けて勢力を拡大している。つまり、いまも各勢力がシリアを戦場として争いを続けている。21世紀になってもなくならない現代の戦争の姿をマジマジと見せつけられる、残酷かつ真摯なドキュメンタリーである。
(文=ケロッピー前田)

【上映情報】
映画『ラッカは静かに虐殺されている』
マシュー・ハイネマン監督が前作『カルテル・ランド』に続いて、全米監督組合賞(DGA)ドキュメンタリー部門賞受賞を2作品連続受賞の快挙!(2017年/アメリカ/92分/英語)◎配給:アップリンク
http://www.uplink.co.jp/raqqa/
2018年4月14日(土)より、アップリンク渋谷、ポレポレ東中野ほか全国順次公開

【公式SNS】
https://twitter.com/raqqamoviejp
https://www.facebook.com/RaqqaMovieJP/

【映画概要】
戦後史上最悪の内戦で勃発したニュータイプの戦争。『カルテル・ランド』監督がおくるドキュメンタリー史上、最も緊迫した90分。次々に殺されていく仲間や家族、そして自らにも忍び寄る暗殺の魔の手ーー。2014年、シリア内戦において過激思想と武力で勢力を拡大する「イスラム国(IS)」が制圧したラッカ、穏やかだった街はISNO首都とされ一変する。爆撃により廃墟では残忍な公開処刑が繰り返され、市民は常に死の恐怖と隣り合わせの生活を強いられていた。海外メディアも報じることができない惨状を国際社会に伝えるため、匿名の市民ジャーナリスト集団「RBSS」(Raqqa is Being Slaughtered Silently=ラッカは静かに虐殺されている)は、結成された。彼らはスマホを武器に「街の真実」を次々とSNSに投稿、そのショッキングな映像に世界が騒然となるも、RBSSの発信力に脅威を感じたISは直ぐにメンバーの暗殺計画に乗り出す。

ケロッピー前田
1965年東京生まれ、千葉大学工学部卒、白夜書房(コアマガジン)を経てフリーランス。世界のカウンターカルチャーを現場レポート、若者向けカルチャー誌『ブブカ』『バースト』『タトゥー・バースト』(ともに白夜書房/コアマガジン)などで活躍し、海外の身体改造の最前線を日本に紹介してきた。近年は、現代アート、ハッカー、陰謀論などのジャンルにおいても海外情報収集能力を駆使した執筆を展開している。書著に、前田亮一『今を生き抜くための70年代オカルト』(光文社新書)、『クレイジートリップ』(三才ブックス)など。昨年は、TBS人気番組『クレイジージャーニー』でノルウェーのボディサスペンション世界大会を紹介し、過去の番組で反響の大きかった“極限の光景”ベスト10にて、第一位に選ばれている。

コメント

1:匿名2018年4月14日 22:38 | 返信

東南アジアはまだ新たなイスラム国の付け入る隙を見せていない様だな

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