実在した「人体蘇生」専門のマッドサイエンティスト、ロバート・コーニッシュ! 死刑囚の死体を入手し…
■死刑囚の蘇生実験を企画
彼の究極のもくろみは、人間に対して同一の実験を試みることだった。彼の尋常ではない申し出は、意外にもカルフォルニア州で認められることになる。さらに、トーマス・マクモニグルというサン・クエンティン州立刑務所に収監されていた死刑囚が「実験台になりたい」と志願してきたので、渡りに船となったようだ。
ところが、マクモニグル本人はよくても、刑務所長のクリントン・ダフィーはYesと言わない。ガス室での処刑後は部屋の換気に30分かかるため、執行直後に入室が必要となるコーニッシュ博士の実験には配慮できないというのだ。
この2人の論争は全国紙のヘッドラインを大いににぎわせたが、最終的にマクモニグルの蘇生実験は実現せず、彼はガス室の露と消えていった。
この事件のあと、コーニッシュ博士は完全に狂人扱いとなり、隠遁生活を余儀なくされたという。
心肺蘇生法(CPR)が一般的に広まったのは1950年代なので、それ以前のアメリカで「蘇生」などというと、なにやら宗教的タブーめいていたのではないか。ラザロ蘇生の奇跡は、人類全体の罪をキリストが贖罪し、生に立ち返らせることだというが、コーニッシュ博士の実験は、神への冒涜と受け止められたのかもしれない。
死者を蘇らせる――これほど、マッドサイエンティストにふさわしい実験はないだろう。まさに、天才と狂人は紙一重だ。
(文=佐藤Kay)
参考:「Mad Scientist Blog」、ほか
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