神田の空きビルをアート・ジャック

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花房太一

■限界藝術大学

 まず、共同ビルで東京藝大の大絵晃世が実行委員長をつとめる「限界藝術大学文化祭」。限界芸術とは鶴見俊輔が『限界芸術論』で提唱した概念で、周縁的(マージナル)なものの中に芸術的価値を見出す態度のことを指す。近年、美術批評家の福住廉が著作で取り上げた概念でもある。

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 また、最近流行しているアウトサイダー・アートもこの概念に含まれるだろう。しかし、この「限界藝術文化祭」の出品者はフツウの大学生である。彼らの生活は周縁的と呼べるほど端に追いやられているわけではないが、同時に社会の中心に位置することもない。また、彼ら自身は学生としてその存在を社会に認められているが、その活動が大学の外部に発表される機会はほとんどない。

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 “社会に認められているが、周縁的な活動を行っている”いわば中心と周縁の中間に位置するフツウの大学生を、“文化祭”という、特殊なイベントに落とし込み、“限界芸術”としてみせる企画力は大したものだ。

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 同じく共同ビルの3~5階では、豪華な講師陣と異端の作家を産んできたことで有名な美学校の現役生、修了生の作品を見ることができる。ドローイングばかりが展示されているおりこうさんたちの美術展示かと思いながら見ていると、台所で1人黙々と壁に向かって色を塗っている女性がいる。私が写真を撮っていても全く振り向かず一心不乱に描いていた。その横には「平和ボケ者立入禁止」と書かれたのれんが下がっている。

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 中では制御不能に陥りつつあるように見える原発と日本を批判する映像が流れている。このあたりに、ただでは終わらない美学校らしさが出ている。

 同ビル4階では、美学校の真髄とも言える狂乱が展開されている。

■若き芸術家のぶっ飛んだ頭の中に迷い込む!

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 至るところから流れる音楽と強烈なネオンサイン、巨大なシャネルマークのオブジェ、自殺用ロープが吊り下がり壁にはストリート・アートのようなペイントがされた部屋、頭に植木鉢を乗せて真面目に本を読む男性とその植木鉢に水をやる男。狂っているのに、見ていると思わず笑みがこぼれてしまう。そうかと思えば、近年アメリカでも回顧展が開かれた戦後の作家、工藤哲巳のパフォーマンスを再演する映像作品など真面目な作品もある。狂乱と笑いと真面目さが同居する空間は不思議と居心地がいい。


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 そのほかにも、旧東京電機大学7号館地下の取り壊し中の建物の地下では、各ジャンルでキャリアのある「石野卓球・黒沢清・小林正人」などの作家たちの作品を見ることもできる。また小学校だった建物を利用して作られたアートセンター「アーツ千代田3331」では、神田の町や人を被写体にした写真展を見ることができる。

 TAT2013ガイドマップは、神田のショップやカレー屋の案内も充実している。歩いて回れる範囲内に様々な会場で展示されているので、休日にのんびりと道に迷いつつ神田を散策するのもいいだろう。

 不親切さも学生運動も気にせず、気の狂った可能性溢れる作家たちの作品を、道に迷い階段を昇り降りして息切れした呼吸を整えながらのんびり眺めること。そいう余裕が持つためのエクササイズとして、十二分に楽しめる展示だ。

 神田がクリエイティブな町になるかどうかは分からないし、そんなことを気にする必要はない。それでも、このイベントに参加している若手作家の中から何人かはビッグアーティストにのし上がってほしい。そのとき彼らに求められるものは、「一点突破・全面展開」のハングリー精神だろう。

 このイベントは今後も続けていくそうなので、注目だ。

■「TAT2013」展示情報
会期:2013年10月19日[土]- 11月10日[日]
会場:3331 Arts Chiyoda, 旧東京電機大学7号館地下, 神田錦町共同ビル等
KANDADA3331, WATERRAS, mAAch ecute 神田万世橋, 錦町TRAD SQUARE, EDITORY 神保町 他
入場料:800円((期間中何度も使えるパスポート制)
主催:東京藝術大学(美術学部 絵画科 油画専攻)

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■花房太一(はなふさ・たいち)
岡山県生まれ、慶応義塾大学総合政策学部卒業、東京大学大学院人文社会系研究科(文化資源学)修了。アートイベントの企画・出演、キュレーションなど現代美術分野で多岐に渡る活動を展開中

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