山本議員・ほこ×たて・特定秘密保護法問題を斬る!

「徹底」と「良心」を忘れた日本から出た錆とは? 森達也が提示する、メディア腐敗時代に持つべき視点

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■悪いメディアが悪い社会を生む!?

――メディアはみのもんたや山本太郎をたたくばかりじゃなくて、特定秘密保護法案のような大事な問題を取り上げるべきだと思うんですが……。

 メディアはわざと芸能ネタ等で騒いで、大事な問題から国民の目をそらそうとしている」と一部の人は言うけれど、僕はそうは思わない。それでは謀略史観です。実際には特定秘密保護法案を取り上げるよりも芸能ネタの方が視聴率や部数を稼ぐから。これに尽きます。

 メディアは社会の合わせ鏡です。メディアが劣悪ならばこの社会も同様なんです。


■特定秘密保護法案の秘密ってそもそも何!?

――特定秘密保護法案が通ったら、『A』や『A2』のような映画は撮れなくなるんでしょうか?

 うーん。その法律をどう運用するのだろう……。現状のまま成立して運用するならば、何が秘密か僕らにはわからないわけですから、これまではありえないことがいろいろ起きますね。オウム真理教の施設に入って撮影することは、「テロ活動防止」に関する秘密に触れるとして、逮捕される可能性もあるでしょう。ただ、特定秘密保護法って、本当は政治家にとっても危険な法律です。彼らだって国家機密を知る立場で何が秘密かわからなければ、どこまでしゃべっていいかもわからない。

 そもそも国家には秘密があるのが当たり前だとよくいわれるけれど、本当にそうなのか。外交と軍事やテロ関連ならば多少はわかりますけれど、「公共の安全と秩序の維持」に関する秘密なんか、実際には必要ないと思う。秘密が漏れて困ったことなんて、これまで一度でもあったでしょうか。「公共の安全と秩序」を守るために、例えばどんな秘密が必要かと訊かれたら、おそらく自民党の誰も明確には答えられないと思いますよ。

 今の日本の法律のままだと機密の共有ができないとアメリカが圧力をかけてきたことは確かだけど、アメリカでは国家機密を期限付きで公開します。政府の背信行為を暴いたウォーターゲート事件やペンタゴン・ペーパーズのスクープなどが示すように、国民もメディアも徹底して情報開示を求めるし、司法もそれを支持します。

 では、日本ではどうか。アメリカでペンタゴン・ペーパーズがスクープされた1971年に起きた沖縄密約事件の際には、メディアは当時の佐藤栄作政権への追及を途中でやめてしまった。だから密約はないものとされてきました。

 ワシントン・ポストやニューヨーク・タイムズの記者たちは国民的ヒーローとして今も称えられています。でも日本では、密約を暴いた毎日新聞の西山太吉記者は国民の多くから批判されながら退職し、さらに国家公務員法違反(機密漏えい教唆)で有罪とされました。

 もちろん、記事の前に政治家に情報をリークしたり情報源を守らないなど、西山さんの行為にも問題はありました。でもだからといって、国家の背信行為を見過ごすことが正当性を持つはずはない。

 結局は民主党が密約の存在を認めます。最後まで嘘をつき続けた自民党にまた政権が移り、そして満を持したように秘密保護法です。密約問題が渦中のときに、佐藤栄作首相が機密保持法が必要だと公式に発言しています。やっと念願がかなうというわけですね。

 民主党は情報公開法の改正を目指していたのに、向きが見事に逆になりました。そんな国でいつまでも機密のままで隠しておけるシステムを作ったらどうなってしまうか。アメリカでは確かに秘密保護法的なシステムはあるけれど、同時に情報公開もちゃんとやっています。そのせめぎ合いが日本にはない。

 裁判も問題です。何が秘密かを明かさないわけですから、捕まって裁判を受けても、被告もなぜ自分が裁かれているかわからないわけですよ。弁護士も弁護のしようがない。検察官もどうやって罰を与えればいいかもわからないということになっちゃう。そんな裁判ありえないでしょう? でも罰則を規定するのなら裁判しないわけにはいかない。どうするつもりなんでしょう。僕にもわかりません。誰がわかっているのだろう。
(インタビュー・文:高橋聖貴)

 

■森達也(もり・たつや)
1956年生まれ、広島県出身。オウム真理教を描いたドキュメンタリー映画『A』で注目を集める。2011年、『A3』(集英社インターナショナル)で講談社ノンフィクション賞を受賞。現在、『小説新潮』でSF小説『チャンキ』を連載中

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