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アブサン

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ヘミングウェイ

画像:Youtubeより

 酒は百薬の長とも呼ばれ、適量をわきまえれば脳梗塞のリスクが減るなどの効能ももたらされることもある。だが、クスリともいえども飲み過ぎれば悪影響があるのも当然。中でも、活躍していた作家や芸術家が「創造力が高まる」と言いながらガブ飲みしたため、相次いで身を滅ぼしたといわれる伝説のアルコールがある。それが“アブサン”だ。

 日本の超長寿野球漫画『あぶさん』(小学館)の語源の一つにもなったといわれるこのアブサン。リキュールに分類される蒸留酒で、度数は40~90度と幅広く取り揃えられており、主だった原産国はスイス、フランス、スペインなどの欧米圏。ストレートで飲むのが乙なものとされていた時期もあり、脳天がシビれると評される味とエメラルドグリーンの色が楽しめる。

■アブサンの歴史

 アブサンの歴史は古く、1700年代にスイス人の医師が、鎮痛解熱作用をもたらす薬酒として開発したものが起源と伝わる。1800年中旬頃からフランスに広がり、北アフリカのアルジェリア侵略戦争に従軍した兵士たちが、赤痢予防のためと愛飲したことをきっかけに本国で大流行。安価な酒として市場を独占し、食前酒としてのシェアは90%を超えたそうだ。

■アブサンを愛し、創造力を高めそして死んでいった19世紀の作家たち

 このアブサンを愛し、想像力を高めて死んでいった作家も多い。名画ひまわりの描き手で生前不遇を被ったことでも知られる激情の画家・ゴッホや37歳の若さでこの世を去ったフランスの詩人・アルチュール・ランボー、またライフルで自殺した作家・アーネスト・ヘミングウェイも「午後の死」と呼ばれるアブサンとシャンパンのカクテルを好んでいた。ほかにも代表作に『幸福な王子』などを持つアイルランド出身の詩人・オスカー・ワイルドが痛飲した際に「パリの酒場からチューリップが生えた」との迷言も残したことで知られている。ちなみにワイルドは梅毒による脳髄膜炎で46歳でその生涯を終えたという。

 そんな名だたる天才から庶民にまで愛されていたアブサンだったが、近年まで飲酒を禁止していた国も多かった。それはアブサンがただの“強い酒”ではなく幻覚効果をもたらすこともあったためだ。

 アブサンは薬草や香草とニガヨモギで作られているが、このニガヨモギにあるツヨンという成分に向精神作用があり、人体に悪影響を及ぼすのだという。だが、ここまでアルコール度数が高い酒を飲めば、床にチューリップを見るまでもなく、酩酊してしまいそうなものではあるのだが……。

 かつて世界で大いに愛されながらも、伴う危険性ゆえに禁止されていたアブサン。現在ではツヨンの残存許容量が、10ppm以下ならばという条件付きで製造され、カクテル原料として人気を博している。アブサンをストレートで飲み、足元に生えたチューリップをつむのはおすすめしないが、信頼できる友である書籍を読みつつ「午後の死」を楽しむのはありかもしれない。
(文=南はにわ)

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