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怪談

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 どうも、怪談・オカルトを研究している吉田悠軌です。寒さと乾燥が厳しくなってきた今日この頃、火の元には皆さん充分お気をつけください。

 さて今回は、寒気ばらいを兼ねて、じっとり蒸すような怪談をお送りしましょう。関西在住のTさんが高校生だった頃。梅雨の時期のお話です……。


雨降るカーブ(関西在住・Tさんの話)


梅雨の雲が、山間の町を濡らし続けていた。

ある日の部活帰り、リトルカブに乗ったTさんは、いつもの山道を走っていた。鉄道が巡りにくい山間部ということもあり、彼の高校では通学に原付を使うことができたそうだ。

陽が長くなってきたとはいえ、雨もよいの峠はすでに闇に包まれている。

制限速度を守りながらゆっくりとカーブを曲がったところで、原付のライトが路上にある何かを照らした。


猫の死骸だった。


四つの足を横向きにだらりと垂らし、そぼ降る雨に打たれている。

まだ生前の姿をとどめており、死んで間もないように見えた。学校に向かう時には見かけなかったし、車に轢かれたとしても、つい先ほどなのだろう。しかし――。

この峠道は交通量も少なく、そもそも周りには民家すら無い。

(なんで、こんなところで猫が死んでるんだ?)


不審に思いながらも、Tさんは死骸を避けるためにハンドルを切った。
 

数日後も雨だった。学校帰りのTさんが山道を走りつつ、猫の死んでいたカーブにさしかかった。すると斜面の脇に、なぜか大きなダルメシアン犬がいた。さすがにおかしい、とTさんは思った。

ダルメシアンは尻尾を振りながら、Tさんのカブ目指して勢いよく走ってくる。法定速度のスピードしか出ていなかったので、その突進はすんなり避けることができた。

次の瞬間、




 ドンッ!!!!




という重い音が響いた。

後ろからTさんを追い抜こうとした車が、ダルメシアンをはね飛ばした。

犬の体はカーブの先へと落ち、Tさんの目の前で死んだ。

車通りの少ないこの道で追い越しをかけられるのは初めてだったし、ましてや犬がいるところなど見たこともない。雨粒か汗か分からない水滴が、じっとりとTさんの
体をつたっていった。

黒く濡れた道路を家に向かって走る途中、

(……次は、あそこで何が死ぬんだろう)

思わずよぎった言葉を、Tさんは慌てて頭から振り払った。
 

それから幾日も経たず、また雨が降り出した。

午後から雲がはりだしたかと思うと、放課後には雨粒が地面を叩く音が聞こえてきた。

あのカーブを通らなければならないと思うと、Tさんは暗澹たる気持ちになった。

結局、その日はかなりの遠回りになる迂回路を使って帰宅したそうだ。

そして次の日。

あのカーブで事故が起きたことを知った。




原付に乗った高校生が車に轢かれ、死んでしまったというのだ。


連日の雨で土砂崩れが起き、それを避けようとハンドルを切ったところ、相当スピードを出していたのか原付がスリップ。対向車線に出たところを大型トラックが激突したということだった。

確かにそれからすぐ、カーブの脇には花束や供え物が置かれるようになっていった。

そして高校生が乗っていた原付は、Tさんとまったく同じ色をしたリトルカブだったそうだ。

それ以降、Tさんは朝の登校時だけは例の峠道を利用するが、陽が落ちてしまった後は必ず遠回りをするようになったという。

ただ雨の日には、明るい時間といえども何かが後ろから迫ってくるような恐怖につきまとわれる。

そんな時だけ、いつも守っている法定速度を破り、フルスロットルでカーブを通り過ぎるようにしていた。

時速60kmを回したリトルカブの悲鳴のようなエンジン音が、Tさんの高校時代の思い出なのだそうだ。

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■吉田悠軌(よしだ ゆうき)
怪談サークル「とうもろこしの会」会長。怪談やオカルトを「隠された文化」として収集・研究している。著書に『放課後怪談部』。編集長を務める同人誌『怪処』ではオカルト的な場所を広く紹介。
怪処HP

・吉田会長の過去記事はコチラで読めます。

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