平成生まれの戦場カメラマン・吉田尚弘「『ミャンマー側のスナイパーに狙われてる』と言われてすごい気が昂った」

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■危機管理 - 首に巻いているストールがポイント

――吉田さんの場合、ナチュラルに危機管理ができている部分もあると思いますが、意識して注意していることはあります?

吉田 危機管理においてもっとも重要なことは、いかに現地の人と同化できるかです。そのためには、彼らと密に接して、彼らと同じように生活すること。たとえば、インドネシアやタイのトイレでは、いまだに素手でお尻を洗います。であれば、自分もそうします。素手でごはんを食べる習慣があれば、それに倣います。そういうのは現地でしか味わえないことですし、それをすることによって現地の人にも受け入れられますよね。

――郷に入っては郷に従え。

吉田 あとは、僕にとっては旅先でいつも首に巻いているこのストールが、ある意味で危機管理グッズなんですよ。スラムって、やっぱり不潔だったり臭かったりするんです。以前、ゴミ山を取材したときハエの大群と出くわしまして、口の中に大量のハエが飛び込んできたことがあったんですね。そういうときはストールを引っぱりあげて。

――なるほど、マスクにできる。

吉田 トイレも、先ほど言ったようにトイレットペーパーがない。水でお尻を洗った手は、自然乾燥させるんです。僕はよくお腹を下すので、すぐトイレに行きたくなってしまうんですが、写真はいつでも撮りたい。でも、濡れた手でカメラは触れないし、乾くまで待っていたらシャッターチャンスを逃してしまうかもしれない。そういうときはストールをタオル代わりにして。

――お尻洗った手を拭いたストールをマスクにしたりするから、またお腹壊すんじゃ……。

吉田 あるいは川で水遊びをしている人がいると、僕も混ざりたくなる。でも水着がない。ならばストールをフンドシみたいに腰に巻いたりと、いろいろ便利なんです。もっとも、これは日常生活レベルの話で、危険な場所に入るときなどは、事前の情報収集も必要です。たとえば、現場の勢力がリアルタイムの今どのような状況になっているのか、現地や海外のメディアでチェックします。それにより、そもそも取材したい対象に近づくためには、どの勢力とコンタクトを取るのか事前に計画をします。場合によっては、必要な装備も変ってきます。たとえば、防弾チョッキが必要なのか、カメラの台数も判断しないとなりません。コミュニケーションの取り方も、宗教ごとに好みが変化しますから、一番受け入れて貰い易い手法を用意する訳ですね。ムスリムの人であれば、抱き合ったり、ボディタッチが好きだったりするので、極力抱きつく様にしてました。すると、宿も値引きをしてくれるんですよ。でも、最も大切な事は現地に居る人からの生の情報を得るということですね。

――「あ、気をつけて話そう」ってなります。

吉田 この界隈では拳銃が売られていると知っていれば、警戒心を持って臨むこともできます。逆に、取材対象には警戒心を抱かせないように注意しなければいけません。そこは旅先での友達づくりの延長で、いかに信頼関係を築けるかにかかっています。「取材したい」と断らなくても、普通に仲良くなって、なりゆきで写真を撮らせてくれることもありますから。

YOSHI3.jpgシリア北部の町に建つ家。家は、政府軍の攻撃で幾つもの傷跡が。すでに、住民は避難しており、誰も住んでは居なかった

――お話を聞く限り、吉田さんはいわゆる「コミュ力」がお高い。

吉田 カメラマンにとって一番必要なのはコミュニケーション能力だと、よく師匠に言われました。コミュニケーション能力がなければたどり着けない場所もあると。それは僕も現場で身をもって学びました。

――カメラマンに限らず、それは必要でしょうね。人間として。

吉田 たとえば野生の、特に群れを形成しない動物だったら、個体の性能が生存能力に直結するわけじゃないですか。でも人間は、コミュニティをつくって他者と関わり合って生きている以上、その関わりの選択肢や太さを増す才能が、生存能力につながるのかなと。

 僕はスラムの人たちから生き甲斐をもらったと言いましたけど、それは彼らによって生かされているということでもあるのかもしれませんね。バックパッカーを続けられたのも彼らのおかげですし、それがいまの仕事にもつながっているわけですから。本当に感謝しきれないですし、これからも写真で恩返ししていきたいです。
(取材・文=須藤 輝)

【吉田尚弘氏・インタビュー第2弾も掲載予定。お楽しみに!】

■吉田 尚弘(よしだ たかひろ)
1991年7月17日(A型)。愛知県出身。クラーク国際記念高等学校出身。スラムと紛争地を専門的に取材を続け、現地に生きる人々の「リアルな生活」を世界中に発信している完全現場主義のフォトジャーナリスト。現在、書籍の出版を計画中(絶賛・版元探し中!)国内での撮影や講演会などの依頼は、HPから。

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