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怪談

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 どうも。怪談、オカルトを研究している吉田悠軌です。

 クリスマス・お正月と、皆様いかがお過ごしでしょうか? 地元に帰省された方も多いことでしょう。この年末年始、恋人や家族との絆をいっそう深められたのなら幸いです。

 それでは今回は、家族にまつわる、ちょっと不思議な体験談をお送りしましょう。

 ある女性から、家族にまつわるこんな話を聞いたのです。


ちぎれる影(M子さんの話)


M子さんの両親は、彼女が小さい頃に離婚している。
それ以降、母親が女手一つ、M子さんを成人まで育て上げてくれた。

20歳になったM子さんは、今まで育ててくれた母に感謝の気持ちを込め、ささやかなパーティーを催したそうだ。
昔話に花が咲き、「離婚の時は大変な思いをさせてすまなかったね」と母親が涙ぐむ場面もあった。
気にしないでと慰めるM子さんだったが、それが呼び水になったのだろうか、小さい頃の不思議な記憶が蘇ってきた。

「そういえば、あの頃ずっと、変なものを見てたんだけど……」

M子さんが小学3年生の頃。
子供部屋で寝ていた彼女は、階下から響く物音で起こされた。
深夜にも関わらず、両親が大声で口汚く罵りあっているのだ。

「……嫌だなあ」

仰向けのまま、暗い天井を見つめる。
うっすら浮かぶ模様を眺めるうち、そこに何かが写り込んでいるように思えた。

人の形をした影、だった。

その形は次第にハッキリとしていき、おかっぱ頭にスカートをはいた小さな女の子の影だということまで分かってきた。

(ああ、私の影が天井に写っているんだ)

小さな女の子という他は、髪型も服のシルエットも自分とは違う。
もちろん、ベッドの下に光源など無いので、天井に影が写る筈もない。
しかし子供のM子さんは、半分寝ぼけていることもあり、あの影は自分だと思ったのだという。

数日たった深夜。

M子さんはまた両親のケンカで起こされた。
同じように天井を見つめると、やはり、自分のものとおぼしき女の子の影が貼り付いている。

(なんだかキレイ)

水中を漂うように揺らめく影に、慰められている気がした。
下から聞こえる罵声には耳を傾けず、幼いM子さんは一人、いつまでもその影を見つめた。

そんな夜が、何度か続いていった。

その夜も、例によって両親の諍いが始まった。
しかし明らかに、2人の声はいつもより激しい。
何かが割れる音、壁にぶつかる音に混じって、動物のような母親の悲鳴も聞こえてくる。

M子さんは、じっと天井に目をこらした。

やはり自分の影が写っている。
今までよりいっそう大きく揺れて、天井の中を舞っているように見えた。

(あれっ)

ふと気がつくと、影のあちこちがちぎれはじめた。
両手、両足、そして首が、バラバラになっていく。

驚きとともに、M子さんの体を悪寒が走った。
何故だか、その影が笑っているように感じられたのだ

――違う。これ、私の影じゃない

さすがに怖くなったが、そのまま天井から目を放せない。
向こうもまた、自分を見つめている気がする。
そして影が、天井から、ある言葉を呟きだした。

M子さんは、気を失うようにして眠ってしまった。

「あの時は、なんか家が大変だったから、私もおかしくなってたのかな」

自分の体験を語り終えたM子さんは、母親にそう告げた。
妙な幻覚を見たという話を、つとめて明るく、過去の笑い話として喋ったつもりだった。

しかし母親は、こわばった顔でこんな言葉を返した。

「それ、私の伯母さんだよ」

影の正体は、M子さんからみてお祖母さんの姉、つまり大叔母さんだというのだ。
そして当の彼女は、6歳の時に亡くなっている。
変質者に誘拐された末に殺され、遺体をバラバラに切り刻まれたのだ
その6つに刻まれた体は、犯人によって山に埋められたという。

あまりにも陰惨な事件であり、一族に大きな衝撃を残したのだろう。
長い年月を経た後も、親戚たちの間では、こんな奇妙な噂が語り継がれていた。

曰く、親戚のうちで不幸がある時、その前兆として彼女が姿を現す、と。

これまでにも、一族の人間が病死や破産などに見舞われる直前、「殺されたままの姿をした」彼女を見てしまった、という話が幾度も伝えられていたそうだ。

「伯母さん、あんたのお父ちゃんとお母ちゃんが別れちゃうよって、知らせに来てくれたのかもしれないねえ……」

血の繋がった、しかも年の近いM子さんに、頑張れと言いに来たのだろう。母親は静かに、そう呟いた。
M子さんも、その感想に素直に肯いておいた。
そしてそれ以上、母親にはなにも告げなかった。

しかし自分の考えは違うのだ、とM子さんは私たちに語っている。
あの影は、凶事を警告するために出ているのではない。むしろ逆なのではないか、と。

なぜなら。

「私、お母さんを気遣って言わなかったんですけど。あの大叔母さんの影って、良くないものだと思うんですよ、多分」

彼女が最後に見た時、バラバラにちぎれた影は、こんな言葉を囁いてきたからだ。

「あの影、天井から私に言ってたんです。


“死ね、死ね、死ね、死ね”


 ……って」

やはり母方の親戚たちは、死んだ大叔母さんが現れるのをたいへん恐れているそうだ。


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■吉田悠軌(よしだ ゆうき)
怪談サークル「とうもろこしの会」会長。怪談やオカルトを「隠された文化」として収集・研究している。著書に『放課後怪談部』。編集長を務める同人誌『怪処』ではオカルト的な場所を広く紹介。
怪処HP

・吉田会長の過去記事はコチラで読めます。

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