【教養としての神秘主義】

ビンラディンは死んでいるのに生きている?「陰謀論」 ~その矛盾と危険性~

 本や雑誌、インターネット、そしてSNSによって膨大に情報が飛び交う現代社会において、その情報の真偽をチェックする判断力は重要だ。しかし、ウソかホントかばかり気にしていては「ケツの穴が小さいヤツだ」「細けえことはいいんだよ」などの誹りは免れない。むしろ、真実よりも甘く、大事なウソを楽しめてこそ、余裕がある大人として認められるのではないだろうか。本連載「教養としての神秘主義」では、そんな大人のためのミステリー情報をお伝えしていく――。

教養としての神秘主義 第6回
陰謀論

ビンラディンは死んでいるのに生きている?「陰謀論」 ~その矛盾と危険性~の画像1画像は、『日経サイエンス2月号』(日本経済新聞出版社)

 海外の科学雑誌に掲載された記事の翻訳を中心に現代科学の最先端を伝える雑誌『日経サイエンス』(日本経済新聞出版社)の2月号では「だまされる脳」という特集が組まれている。脳科学や心理学などの知見を元にして語られる「プラセボ効果の脳科学」「サブリミナル効果の真実」……など科学ファンだけでなくとも興味深いものだろう。

 その中の「超常現象が見える理由」という記事では「幽霊がなぜ見えてしまうのか」といった問いに対して、人間の脳が生み出す強い認知パターンが強く影響しているという。簡単な例をあげるならば

(∵)

 こんな記号の集まりを人間の脳は「人の顔」のように認識してしまうというのだ。これもまた強力なパターン認知能力のひとつだ。このパターン認知能力によって、人はさまざまなもの(壁にできたシミや、ヒザにできたシワ、あるいは火星の人面岩など)に顔を見いだしてしまう。こうした現象は「パレイドリア」と呼ばれ、多くの心霊写真もこの効果によって「錯覚」されているのだ。

 今回の特集では、個人的に「陰謀論をなぜ信じるか」という記事に期待していた。これまで陰謀論関連の書籍を何冊も読んできていたが、認知科学や脳科学の立場から陰謀論信者の心理メカニズムが説明するものには出会わなかった。なので、そうした新たな切り口からの説明があるのでは・・・と思っていたのだ。

 が、これは残念ながらちょっと期待はずれだった。筆者であるS. ファン・デア・リンデンは、陰謀論を信じるメカニズムを解明するというよりも、陰謀論信者の傾向や陰謀論がもたらす社会的な影響にフォーカスを当てている。根本的な陰謀論の原因について語ったものではない(記事の原題は『What a Hoax(なんというでっちあげなんだ!)』。ちょっと編集部のミスリーティングを感じてしまう)。


■陰謀論者の頭の中

ビンラディンは死んでいるのに生きている?「陰謀論」 ~その矛盾と危険性~の画像2画像は、『ビンラディン―アメリカに宣戦布告した男』(毎日新聞社)より

 とはいえ、記事の内容が無意味なものというわけではない。紹介されている研究や実験はどれも興味深いものだ。たとえば「オサマ・ビンラディンが米軍の急襲によって殺害されたという公式説明をどの程度支持するか」を調査した実験では、ある陰謀論を信じる人々は(互いに矛盾しているものでも)別の陰謀論まで信じる傾向にあることが示されている。

政府の説明を疑問視し、襲撃時にビンラディンはすでに死んでいたと考えた人たちは、驚いたことに、ビンラディンがまだ生きていると主張する傾向がほかの人よりも強かった

 以上が実験の結果である。ビンラディンは死んでいながら、生きている。一体、どちらを信じているのか結果を見る方も迷ってしまうが、このような矛盾は陰謀論者のなかには珍しくない。日本語で手軽に読める(学術的な)陰謀論研究書として評価が高い辻隆太朗の『世界の陰謀論を読み解く: ユダヤ・フリーメーソン・イルミナティ』(講談社現代新書)を紐解いてみると、同じような例がザクザクとでてくる。ここではフリーメーソン陰謀論の矛盾について触れておこう。

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