■死刑囚の晩餐の中に“生”がある

―今回の展示のアーティストステートメントの中で「夢と現実の狭間で揺れ動く死の欲動、つまり願望」と書かれていますが、精神分析的な話ですね。僕は死のイメージを笹山さんの作品からは感じなかったのですが、死そのものを表現したいのでしょうか?
笹山 表現したいのは“最大の生”です。そして最大の生とは究極に死に迫ることだと思います。それが死の欲動ということです。そこで沸き上がってくる本当の生の感動や爆発を絵画で表現できればと思っています。死刑囚の「最後の晩餐」というシリーズを描いているのですが、これは、テキサスの死刑囚たちが“死刑になる前、最後にリクエストすれば何でも食べさせてもらえる”というシステムで何をリクエストしたのかを紹介している本をモチーフにしました。私のシリーズでは、その食事を死刑囚の肖像画として描いています。食べるという行為は生を確認する最後の手段です。そこに“生きるぞ!”という気持ちが集約されている。それが描きたいものです。
―画像で見ると笹山さんの作品は生々しく見えますが、決してグロテスクなものを描こうとしているのではないですよね。
笹山 人に不快感を与える気は全然ありません。描きたいのは“美そのもの”です。『エイリアン』の血を美しく感じた時の気持ちをそのまま持ち続けています。だから、スプラッター映画とかは嫌いです。あんなものは美ではない。下品で下らないと思います。
(取材・文=花房太一)
【インタビュー後編は明日20時に配信予定】
■笹山直規(ささやま なおき)
1981年生まれ。画家・現代美術家。2003年~04 年にかけて制作された内臓の触覚感と可塑性を連想させる山のイメージをまとめた「身体の風景body-landscape」で注目を 浴びる。2005年より、死刑システムについて研究。死をテーマに描かくことを続け、「事故現場」を発表。生と死の欲動を表現し続けている。HP→http://naokisasayama.com/ 作品取り扱い画廊「Frantic Gallery」→http://www.frantic.jp/ja/
■花房太一(はなふさ・たいち)
岡山県生まれ、慶応義塾大学総合政策学部卒業、東京大学大学院人文社会系研究科(文化資源学)修了。アートイベントの企画・出演、キュレーションなど現代美術分野で多岐に渡る活動を展開中。
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