“絶倫屍体”を恐れる警官、謎の媚薬【エクアドル美女誘拐事件】でわかった「サバ・インカ」の恐怖とは?

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 私は日本と世界の違いを研究するドイツ人、ルドルフ・グライナーです。

 2013年12月、新婚旅行でエクアドルを訪れた日本人の若い夫婦が何者かに襲われました。日本では、あまり知られていないようですが、エクアドルは非常に怖い国です。私も仕事で何度か行ったことがありますが、インカの時代からの伝説や風習が息づくエクアドルは、摩訶不思議な体験ができる「呪術国家」でした。


■誘拐事件の捜査を打ち切った警察官たち

 以前に私が宿泊したエクアドルのホテルで、若い女性が誘拐されました。彼女は、インカ帝国を滅ぼしたスペイン人ではなかったのですが、似た感じの美しい女性。その女性がある夜、客室からこつ然と姿を消してしまったのです。すぐに警察の捜査が開始され、部屋の中を捜索しました。すると、部屋の中から、お茶とお香が出てきたのです。警察官は、そのお香の灰を見て、匂いをかぐと、すぐにその部屋の捜査をやめてしまいました。

「もう、捜査は終わりましたか?」

  私が聞くと、少し年配の警察官は

「この部屋の女性が、今どこにいるかわかりました」

 というのです。

 そして、翌日の夜、女性はアマゾンの神殿に隠されたミイラとセックスしているところを発見され、無事保護されました。しかし警察官は犯人を逮捕しないまま、捜査を打ち切ってしまったのです。

■「サバ・インカ」とのセックスを目的とした誘拐は合法か?

 私は、この事件に非常に興味がわき、さまざまな人たちに聞いて回りました。すると、この事件は、インカ帝国の歴史と深く関係していることがわかりました。初めからこの女性は、ある集団に狙われていました。それはインカ帝国の「サバ・インカ」の末裔のミイラを信仰している人々です。

「サバ・インカ」とは、太陽神「インティ」を崇拝し、インティの化身(または子孫)とされた、インカ帝国の皇帝です。彼らは、先祖代々「サバ・インカ」に仕え、ミイラになってもお世話をしていました。その一環として、彼らは「サバ・インカ」のミイラがほしがるであろう、若く健康的な女性を狙うのです。そして、若く健康的な女性が宿泊したホテルの部屋に、呪術の時に使う「アヤワスカ」という植物を主成分にした「インカの神のお茶」、「インカの神の息」といわれるお茶とお香をセットします。

 女性は、これらを何か特別なサービスだと思って、お茶を飲み、お香の中で夜を迎えます。

 このお茶とお香によって、「サバ・インカ」のミイラを信仰している人達は、女性が善良な人なのかどうかを判定します。善良な人は、「インカの神のお茶」「インカの神の息」が効いて、体の中から粘液が出てきます。彼らは、その粘液が外の邪悪なものから善良な人を守ってくれると信じています。

 ミイラも、その土地や空気、水といった「邪悪なもの」に汚されてしまうと、この「善良な人の粘液」で守らなければなりません。そこで「サバ・インカ」に仕える奴隷たちは、善良そうな女性に「インカの神のお茶」「インカの神の息」を仕掛け、善良な女性であるとわかると、その女性をミイラのもとに連れていき、より強い呪術を使って、女性の粘液でミイラを濡らし、覆い尽くすのです。実際には植物性の媚薬を使い、幻覚症状を起こさせてミイラとセックスさせる。


■インカ帝国のシャーマンを重んじるエクアドル社会

 エクアドルは、インカ帝国の末裔が最も多く住んでいる場所といわれています。インカは、南米にあった先住民族ケチュア人が作った帝国です。1533年にスペイン人のコンキスタドールに滅ぼされるまで、80の部族と1600万人の平民、そしてそれ以上の多数の奴隷を抱えた大国でした。インカ帝国の皇帝「サバ・インカ」の呪術力は絶大で、一つの呪文を唱えると、国全体が動くとされたほどの力を持っていたといいます。また、石で精巧な宮殿や神殿を造り、また、高度な金の精製技術を持っていたといわれています。その高度な文明の大帝国が滅びたのですから、滅ぼしたスペイン人だけでなく、外国の人に対するインカの人たちの恨みは、計り知れない大きさなのです。

 インカ帝国は、もともと「死者」や「ミイラ」を信仰する習慣があり、「サバ・インカ」のミイラは、死んでもその呪力が残るとされていて、奴隷たちは、そのままミイラの世話を生前と同じように続けています。インカ帝国の崩壊は、このミイラと現役の皇帝の争いで、現役の皇帝がミイラとその奴隷たちを攻撃し、その資産を「死んだのだから必要ない」として没収したのがきっかけです。その混乱にスペイン人が介入し、インカ帝国が滅びることになったのです。

 現在もエクアドルでは、多くの国民が、インカ帝国の呪術をつかさどるシャーマンを信仰しています。それが、時に「人間が怖い国」といわれるゆえんでしょう。

■警察は「邪悪な人は、自ら死を招く」と判断

「インカの神のお茶」と「インカの神の息」の灰が残された部屋を見て、警察官は、誘拐された女性が殺されていないこと、そして女性がミイラとセックスをしていることがすぐにわかったのです。

 そこでセックスが終わる頃、女性を保護しに行きます。保護をする時間が、夜なのは、「サバ・インカ」が太陽神の化身であり、昼よりも夜のほうが、霊力が弱まると考えられているからです。

 一方、この「インカの神の息」「インカの神のお茶」で「邪悪な人」ということになるとどうなるのでしょうか。それは、「自ら死を招く」といわれています。実際、「邪悪」と判定された人は、強盗にあって殺されてしまったり、インカの人々に自分から喧嘩を仕掛けて、返り討ちにあったりしたようです。「自ら死を招く」言動と、これらのお茶やお香に含まれる、強い幻覚症状を引き起こす成分とは、無関係ではないからでしょう。

 エクアドルでは、このような誘拐事件に似せた、またはそれ以上に凶悪な犯罪も多くあります。今回の日本人の夫婦のいきさつは、凶悪な犯罪であったのか、あるいは「インカの神の息」で自ら死地に向かってしまったのかはわかりません。しかし、これらの呪術が息づいている国ということは、少し気に留めておいたほうがよいのかもしれませんね。
(ルドルフ・グライナー)

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