ローテクを駆使する南国のアート・ユニット「トロマラマ」
まるで初期アニメ ローテクを駆使する南国のアート・ユニット「トロマラマ」
『AKIRA』『ドラゴンボール』『ドラえもん』……子どもの頃、僕らの心をアツくさせた漫画やアニメが、海の向こうに住むアジアの子どもたちの心にも火をつけていた。今や日本人だけのものではなくなった、ジャパニーズ・ポップカルチャー。その影響を受けて育った、アジアの才能豊かなクリエーターたちを紹介します。
アート・ユニット
Tromarama(トロマラマ)
インドネシアのカリスマ的ヘビメタバンド、セリンガイのPV『戦いの狼』は、400枚もの手彫りの木版がコマ撮りされた労作だ。セル画数が少ない初期のアニメのようなぎこちない動きが、何故かヘビメタとびったり合って、不思議な感覚を醸し出す。驚くべきローテクを駆使した、このアニメーションの作り手は、トロマラマ。フィービー、ハーバート、ルディの3人のインドネシア人によるアート・ユニットだ。400枚の木版と格闘した悪夢のような約1カ月半は、彼らのトラウマになった。「それでユニット名が『トロマラマ』なんです」。

しかし、トラウマ体験にもめげず、以降も彼らの作るアニメーションには、山のようなビーズやボタン、磁器の食器などを使った、これでもかというほどの手仕事感が満載だ。身の回りの素材が、彼らのイマジネーションと手作業で、見たことのない映像に生まれ変わる。トロマラマの作品には、病みつきになる何かが仕込まれているようだ。
同じ家に一緒に住んで創作活動をする3人は、「日本のテレビアニメで育った」と口をそろえる。
「たくさん見ましたよ。『ミスター味っ子(Born to Cook-Ajiyoshi Yoichi)』『ドラえもん』、それと、タミヤのミニ自動車が出てくる、なんだっけ、ええと……そう、『ダッシュ! 四駆郎』!」

彼らをテレビに釘付けにしたのは、アニメに出てくる、ありえないほど過剰なアクション。
「めちゃくちゃ面白かった。例えば『ミスター味っ子』で、主人公の陽一が作った料理を食べると、その人の後ろから突然龍が飛び出して、その場が炎に包まれたり」
日本人の、こうした想像力マックスの状況描写は、本当にすごい、と3人。
「コミックもずいぶん読みました。『ドラえもん』『 鉄拳チンミ(Kungfu Boy)』『キャンディ・キャンディ』、上原きみ子の『まりちゃん』シリーズ……」
王道と言うべきか、渋いと言うべきか。
『テレビチャンピオン』(テレビ東京系)や『風雲! たけし城』(TBS系)などのバラエティー番組にも夢中になったという。

「日本の人たちが、奇妙でおかしな競争をする様子がおかしくて。子どもの頃も、今でも、インドネシアのテレビ局は、たくさんの日本のアニメを放送しています。日本のカルチャーは、無意識のうちに僕たちの体にしみ込んでいるんです」
彼らのアニメやビデオ作品自体には、日本のものがダイレクトに映し込まれているわけではない。だが、その制作姿勢やストーリー展開には、彼らの日本カルチャー体験がにじみ出る。
「日本のマンガやアニメのバラエティーあふれるテーマを見ると、”どんなことでも物語になり得る”んだ、と実感します。パン作り大会、タミヤの自動車レース、ドッヂボール、バレエ、カンフー、ビリヤード、パスケットボール、車いすバスケ……日常のあらゆるものが、素材になる」

「私たちの作品に最も影響を与えるのは、普段の生活や、身の回りにあるものです……それは食器だったりボタンだったり、バテック(インドネシアの伝統的な織物)だったりするのですが、そんなありふれたものを素材にし、ストーリーを膨らませてアニメーションにする過程が面白いんです」。
現在は、来年1月6日からジョグジャカルタのギャラリーで開催する個展の準備に忙しいという。
「とは言うものの、ビデオを上映するか、インスタレーションをするか。あるいは他のメディアを使ったものになるか……実は、まだ内容も決まらず、周りを見ながらあれこれ考えている最中です。もう少し時間をかければ、インスピレーションが降りてくるかな……」。彼らの次の素材になるのは、一体何なのだろう。
(取材・文=中西多香[ASHU])●Tromarama(トロマラマ)
インドネシアのバンドゥンを中心に活躍する3人組のクリエイティブ・ユニット。フィービー・ベビーローズ(1985 年生)、ハーバート・ハンス(1984年生)、ルディ・ハトゥメナ(1984 年生)により、バンドゥン工科大学在学中の2004 年に結成。ビデオやインスタレーションを中心に、あらゆるメディアを利用した作品作りを続ける。2008 年のシンガポール・ビエンナーレへの参加以来、国際的な注目を集めている。
<http://tromarama.blogspot.com/>
●なかにし・たか
アジアのデザイナー、アーティストの日本におけるマネジメント、プロデュースを行なう「ASHU」代表。日本のクリエーターをアジア各国に紹介するプロジェクトにも従事している。著書に『香港特別藝術区』(技術評論社)がある。<http://www.ashu-nk.com >
オンラインTシャツオンデマンド「Tee Party」<http://teeparty.jp/ashu/>
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