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香港

初出 日刊サイゾー 2010.06.13

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『AKIRA』『ドラゴンボール』『ドラえもん』......子どもの頃、僕らの心をアツくさせた漫画やアニメが、海の向こうに住むアジアの子どもたちの心にも火を付けていた。今や日本人だけのものではなくなった、ジャパニーズ・ポップカルチャー。その影響を受けて育った、アジアの才能豊かなクリエーターたちを紹介します。

ウェブデザイナー&ピクセルアーティスト
フランシス・ラム

 画面をちょろちょろと動きまわるNudemen(ヌードメン)。ウェブデザイナーであり、ピクセル・アートのカリスマ的存在、フランシス・ラムが生んだ人気キャラクターだ。蟻んこのようなNudemenがわらわらと沸き出て、人文字のメッセージを作ったり(Nudemessenger)、時計になって時を刻んだり(NudemenClock)。裸男たちの動きが、妙にキモ可愛らしくて、ついハマってしまう。

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「ENJOY THE PLANET,2003」

 フランシスは、ネット上のポルノサイトに影響を受けて、このNudemenを作ったという。実は、フランシスの出身地である香港では、性表現に対する規制が日本に比べてとても厳しい。彼がNudemenを作った頃、香港の大学生が発行する新聞が自分たちのセックスライフに関する記事を掲載し、当局から告発されたというニュースが大手の日刊紙の見出しを飾ったことがあるほどだ。その時フランシスは、「自分たちの日常生活にごく普通にあることなのに、公に口にすると社会的パニックになってしまうなんて!」と、大いに憤ったらしい。フランシスのピクセル・グラフィック作品にやたらと登場する「裸男」や「裸女」たち、そして、カーソルをあわせると「Don't touch me! (触るな!)」とか「Leave me alone!(ほっといてよ!)」というセリフを残して逃げていくウェブ上のNudemenたちは、そんなフランシスの気持ちを、皮肉をこめて代弁しているのかもしれない。

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「Pixel World, published by IdN,2003」「Bitboxland
<クリックすると拡大されます>

 背後で走る超高度なプログラムに繰られた、手作り感のあるピクセル・グラフィックが作りだす、"アナログデジタル"的な、懐かしくも不思議な世界。自分の作品のスタイルを、フランシスは「ビデオゲームへのノスタルジーから生まれている部分が大きいと思う」と自己分析する。余計なものをそぎ落とした「形」の美しさに取り付かれて、限られた□(ピクセル)だけを使ってアート制作をしているのだと。

 フランシスがピクセルの美しさや楽しさに目覚めるきっかけとなったのが、任天堂の『スーパーマリオブラザーズ』。

「子どもの頃の僕には、とにかく衝撃でした。僕の人生そのものに影響を与えたと言ってもいいぐらい」

 世界中の大人も子どもも夢中にさせて、社会現象とも言える空前の大ブームを巻き起こしたこのゲームの、何にフランシスは惹かれたのだろう。

「シンプルさ、ユーモア、そしてロマンスがあるところ。今でも、作品を作るときのインスピレーションになっています」

 また、「単純でありながら、ディティールにまで気を配ったハイレベルな"質"を保ち続けるという本質的なことは、日本の文化から学んだと思う」とも。

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「Illustration for THE FACE magazine,2002」「Pornostars,2002」
<クリックすると拡大されます>

 現在は上海にもベースを持ち、活動の幅がぐんと広がっているようだ。つい最近発表したiPhoneのアプリは『Bitboxland (サウンド・トイ&音楽演奏ツール)』 と『Goldfish Music Box (インタラクティブ音楽生成ツール)』 で、いずれもフランシスの超人プログラミングスキルと遊び心が満載されたインタラクティブ・アプリ。自分が子どものころに体験したピクセル・ゲームの楽しさが、そのままiPhoneで再現されている。

 さらに、そうした"デジタル"活動の傍ら、なんと、上海に、ファニチャーショップをオープンさせたという。木製のシンプルな家具を中心に扱うお店で、「一見、デジタルの世界とは真逆なんだけど、ピクセルと木片には、何か通じるところがあると思わない?」。確かに。両者に共通するのは、"アナログデジタル"な懐かしさと温かさ。フランシスの中では、その二つは、喧嘩をせずに共存しているものなのだ。
(文=中西多香[ASHU])

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Francis Lam(フランシス・ラム)
香港出身のウェブデザイナー&ピクセル・アーティスト。独自のユーモアセンスと、デジタルメディアの美的、社会的側面に焦点をあてたアートワークで、多くの関心を集める。MIT Media Laboratoryにて、Sociable Media Group学位取得。さまざまな出版物で作品が紹介されており、オーストリア、香港、日本、台湾、アメリカでのエキシビションにも参加している。オリジナルウェブサイト「db-db loves you」は、同じ感性を持つ個人個人をつなぐ、新しいブログツールとプラットフォームの実現を目指す。
<http://db-db.com/loves/francis/>

なかにし・たか
アジアのデザイナー、アーティストの日本におけるマネジメント、プロデュースを行なう「ASHU」代表。日本のクリエーターをアジア各国に紹介するプロジェクトにも従事している。著書に『香港特別藝術区』(技術評論社)がある。<http://www.ashu-nk.com >
オンラインTシャツオンデマンド「Tee Party」<http://teeparty.jp/ashu/>

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