想像力だけで動物を描き続けた男 ― 死後評価の無名画家、アロイス・ツェトルの非現実的アート

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■アロイス・ツェトルのプロフィール

aloys22.jpgツェトルの作品。「http://my.mail.ru/」より

 ここで簡単にアロイス・ツェトル(Aloys Zötl)のプロフィールを記しておこう。1803年4月12日(Wikipediaでは12月4日生まれになっているが、おそらくこれは間違いだろう)オーストリアの山間部に皮革染色を営む職人の息子として生まれる。アロイスもまた皮革染色を生涯の仕事にし、一生のほとんどを生まれた土地から出ることなく過ごす。1887年10月21日没。老衰による自然死だった。


■死後、再発見・再評価

aloys33.jpgツェトルの作品。「http://my.mail.ru/」より

 ブルトンがオークションカタログ序文で書いているように、アロイス・ツェトルの生涯は長い間、謎に包まれていた。が、2004年になり、突如、パリでシュルレアリスム研究を行っていた美術史家フランツ・ライティンガーによって、決定打とも言える研究成果が発表される。

 この論文によればアロイス・ツェトルは大方の予想通り、その生涯を生まれ故郷の村から出ることなく終えたとのこと。つまりすべての動物画は想像力(と、わずかな資料)のみで描かれたということになる。

aloys44.jpgツェトルの作品。「http://my.mail.ru/」より

 澁澤龍彦はアロイス・ツェトルの人生について「八十四歳まで孜々として絵筆をとりつづけたのだから、孤独で無名のうちに終始したとはいえ、うらやましいような生涯だったといえるだろう」(「アロイス・ツェトル ー 動物たちの楽園」「みづゑ」美術出版社より引用)と言っているが、筆者にはこれがなんとも微笑ましい。

 先に筆者はアロイス・ツェトルの情熱はフェルディナン・シュヴァルやヘンリー・ダーガーと似ているのではないかと書いたが、自身の想像力だけを頼りに自分だけの個人的な世界を創造した偉大なる先人として、ここにもう一人、澁澤龍彦の名前を付け加えてもいいかもしれない。
(文=天川智也)

【連載:「シュルレアリスム、その後」まとめ読みはコチラ


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■天川智也(あまかわ・ともや)
1980年生まれ。早稲田大学仏文科卒業。古今東西の奇書を求めて日々奔走している。おもな作品にNHKドラマ『ルームシェアの女』(フランス語作詞)等がある。

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