警察署内で集団レイプ ― 背景にインドの“残酷な”カースト社会、実験動画で浮き彫りに

2014.06.18 18:00 文＝仲田しんじ

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■低カースト層への無関心も一因か

　インド社会の“異常さ”は、一部のインド人からも問題提起されている。インドの中で様々な「社会実験」を行ってYouTube上のにその“実験の模様”を投稿しているインドの団体、「イエスノーメイビー（YesNoMaybe）」がこの度アップロードした動画が今、話題を呼んでいるのだ。

　今回の「社会実験」動画は、ニューデリーのある寂れた裏路地で夜間に撮影されたものである。停めた車の中に設置したスピーカーから響く、助けを求める女性の声(と男性の罵声)に、どれくらいの通行人が反応するのかという実験だ。

　車の中から聞こえる女性の叫び声に気付く通行人たちだが、少し中の様子を覗こうとして近寄るものの（車のウインドーはスモークガラスで外からは覗けない）、暫くして興味を失い立ち去っていく姿が序盤から続いていく。しかしながら動画の後半では、女性を救出すべく力尽くでドアを開けようとしたり、ウインドーを割ろうとする（実際に割る前に実験主催者から説明を受けて制止されるが）剛の者もいる。

【インド】警察署内で集団レイプ ― 背景に残酷なカースト社会、実験動画で浮き彫りにの画像2

女性の叫び声に気付いたものの…　画像は「YouTube」より

　これを見てどう感じるかは、動画を見た各人が判断すべきことであるし、また穿った見方をすれば、動画の編集次第でどうにでも味付けできる種類の素材でもある。しかしながらこの実験と投稿を通じて、インド人自身に問題意識を持つ機会を与えるという意義はあるだろう。

　同団体は「レイプ犯罪に抗議するためにデモ行進に加わる人は多いが、実際に事件が起こっている現場で行動できる人がどれくらいいるのかを調べたかったのです」と記している。インド社会では低いカーストに属する者（あるいはカースト外の者）を無視する傾向が根強く、これが他人に対する無関心に繋がっているとも指摘されている。

　インド国内にインターネットが普及される以前には窺い知ることのできなかった、インド社会におけるこうしたレイプ犯罪の横行ぶりが昨今次々と報じられるようになり、我々の“インド観”に少なからぬ修正が加わっていることは否めない。このような事件のニュースをまたすぐ耳にすることのないよう祈るとともに、実質上まだまだインド社会に残っているカーストの弊害などを含めた、根本的な解決が望まれているのだと思う。
（文＝仲田しんじ）

参考：「Channel News Asia」、「IBTimes」、「Yahoo!ニュース」ほか