プロテウス症候群 ― 頭蓋骨が変形・体が肥大、一体なぜこんな奇病に…24歳の若さで旅だった青年と母の闘病記録

 皆さんは1980年に公開された「エレファントマン」という映画をご存知だろうか? 奇病に犯された体はその当時とても衝撃的だったが、穏やかで知的な人柄を理解されずに僅か27歳で波乱続きの人生を終えた青年の物語はあまりに切なく、悲しいものであった。

 そのエレファントマンの主人公と同じ病に冒された青年に関する記事が7月16日付の「Daily Mail」で報じられている。


■世界にたった200例! 原因不明の難病とは!?

プロテウス症候群 ― 頭蓋骨が変形・体が肥大、一体なぜこんな奇病に…24歳の若さで旅だった青年と母の闘病記録の画像1ロバート・スミスさん 画像は「Daily Mail」より

 イギリス東部のケンブリッジシャー州、ウィスベッチ近くの村、ウォルソキンにある自宅にて、母親のリタ・スミスさんの懸命な看病にも関わらず24歳のロバート・スミスさんは息を引き取った。その命を奪った病とは、19世紀に「エレファントマン」と呼ばれたジョセフ・メリックを苦しめたと言われている「プロテウス症候群」である。

 この病は現代医学でもはっきりとした原因は解明されておらず、女性よりも男性に多く見られるのだそうだ。家族性の遺伝病ではないとされ、今現在もその治療法を研究者達が模索中である。

 この病気の特徴は通常、新生児にその症状は見られないが年齢と共に皮膚や骨、筋肉や脂肪組織が肥大してくるものだという。中でも頭蓋骨の変形は多く、映画のモデルになったジョセフ・メリックの例は症例の中でも変形の度合いが激しいようだ。世界でも200例程度しか確認されておらず、今現在も世界中で120人がこの病気と闘っているという。


■苦難の連続・・・病に襲われ続けた人生

 ロバートさんはノーフォークにある病院で、予定日よりも4週間早く帝王切開にて生まれた。しかし医師達は出産直後にロバートさんが深刻な病に冒されていると判断し、母親のリタさんに「1カ月も生きられないでしょう」と告げた。

 その後、髄液が頭蓋構内に溜まり脳室が大きくなってしまう水頭症の症状が現れ、ケンブリッジにある病院に移り治療を受けるようになる。2歳になる頃には溜まった髄液を頭から取り除くために、8つの側路が頭部に形成された。その後、同様の手術を受けるにあたり側路のスペースを確保するべく、チタンの板が頭の中に埋め込まれた。それからも彼にはいくつもの苦難が襲い掛かる。

 成長が止まらなくなる巨人症の他、ロバートさんは視力、聴力にも問題を抱えていた。16歳で発症したと見られるプロテウス症候群と巨人症を併発していたロバートさんの体は身長2,13m、体重120kgで足のサイズは40cm。股下は1mもあったそうだ。

 そして3年前には発熱と持続する頭痛を伴う髄膜炎に倒れ7週間もの間、意識を失っていたことにより歩行が不可能になってしまった。これ以降、彼が亡くなるまでの間に家を出られたのはたったの4回だったといわれている。ちなみにロバートさんが24年間の人生の中で受けた手術は何と74回だった。

■息子を看護し続けた母親の壮絶な苦しみ

プロテウス症候群 ― 頭蓋骨が変形・体が肥大、一体なぜこんな奇病に…24歳の若さで旅だった青年と母の闘病記録の画像2最愛の息子と。笑顔を見せる母親のリタさん 画像は「Daily Mail」より

 7週間にわたって意識を失っていたロバートさんが意識を取り戻した後、彼は自力で歩くことが出来なくなってしまったが、なにしろ体重は120kgもある。自らも関節炎と骨粗しょう症に苦しむ66歳の母、リタさんにはロバートさんを車椅子に乗せることは重労働すぎた。

 リタさんは息子のためにリビングルームを寝室に改造し、心停止や呼吸困難になる症状とも戦う息子の側に寄り添い続けた。息子の眠る横にリクライニングチェアを置き、眠れる時に自分も眠ったのだという。

 リタさんはロバートさんの死後「私は息子が亡くなる瞬間も側にいました。打ちのめされた気分です。息子なくしてこれからどうしていけばいいのか分かりません」と語った。


■乗る事のなかった車椅子

 昨年11月にロバートさんの家族や友人は、彼に電動車椅子を購入しようと募金を募った。様々な病に苦しむロバートさんを支えるべく、わずか1週間で全国から日本円にして約173万円が集まった。

 母であるリタさんは「この基金を立ち上げてくれた主催者の方々に感謝しています。皆さんの誠意を改めて感じました」と感謝の気持ちを述べた。しかし、ロバートさんがこの車椅子に乗る事はかなわなかったようだ。

 姉のマリー・ルイスさんと、新しく購入した車椅子で自宅近くの店へ行き、DVDやCD、そして好物だったチョコレートキャラメルを買いに行くのをとても楽しみにしていたが、そのささやかな楽しみを味わえずにロバートさんは亡くなってしまった。

 最後にリタさんは「とても辛く、苦しい経験でしたがこれだけ愛された優しい巨人が私の息子で本当に良かったと思っています」と述べた。

 数々の苦難に苛まれ、24年という短い生涯を終えたロバートさんやその息子を看取った母のリタさんのことを思うと胸が締め付けられるようだ。しかし医学は日々、進歩している。

 19世紀に「エレファントマン」と呼ばれたジョセフ・メリックや幾つもの病に冒されたロバートさん、そして今日もプロテウス症候群と戦う人々のためにも原因究明や有効な治療法が解明されることを切に願うとともに最愛の息子を失ったリタさんの心が癒される時が訪れることを願ってやまない。

参考:「Daily Mail」、「X51.ORG」ほか

文=清水ミロ

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