ハッピー・フェイス・キラーと呼ばれた凶悪連続殺人鬼の正体 — 血しぶき舞うまで女の顔を殴り倒す狂気の果てに

 1990年1月22日。豊かな森林に恵まれたオレゴン州ポートランドの高速道路横の林に、若い女性が半裸で倒れているのを、車で通りがかった大学生が発見した。

■崩れた顔と、ウォークマン

ハッピー・フェイス・キラーと呼ばれた凶悪連続殺人鬼の正体 — 血しぶき舞うまで女の顔を殴り倒す狂気の果てにの画像1発見された場所付近「YouTube」より

 下半身を露出した状態で横たわっていた女性の首にはロープが巻かれており、強く絞められた痕が残っていた。遺体には繰り返し殴られたどす黒い痕もあり、特に顔を集中的に殴られていた。あまりにもボコボコに殴られていたため、顔面は原型をとどめておらず、白人なのかネイティブ・インディアンなのかも見分けがつかなかったそうだ。司法解剖の結果、被害者は強姦や性的暴行を受けていたことも判明した。

 遺体の近くにはウォークマンのイヤフォンと、被害者のものと思われるジーンズが落ちていた。ジーンズの股の部分は綺麗に切り取られていた。遺体には被害者のものではない1本の髪の毛が付着していたが、毛根はついておらず捜査員たちは落胆した。被害者は身元判明につながるようなものを身につけていなかったため、警察はメディアに事件を公開。身元特定を急いだ。

 公開後間もなく、22歳の娘と連絡がとれないという女性から連絡が入った。


■難航する犯人探し

 娘の名はトーニャ・ベネット。精神的に幼かった彼女は、常にウォークマンを持ち歩く明るい女性で、人を疑わずよくヒッチハイクをしていたそうだ。最後に目撃されたのは、ポートランドのバー。男性2人とビリヤードで遊んでいたが、いつの間にか彼女1人だけいなくなっていたという。

 遺体はこのトーニャであることがすぐに確定されたが、加害者探しは難航した。警察が最初に疑いの目を向けたのは第一発見者である大学生の青年。しかし学生にはアリバイがあり、すぐにシロとなった。一緒にビリヤードをしていた男性2人が、トーニャと待ち合わせて強姦、暴行した上で殺害した可能性があるとも見られたが、男性2人は新顔だったため、誰なのか、どこへ行ったのかも情報が出てこなかった。

■容疑者として浮上した老カップル

 犯人への手がかりがつかめないまま2週間が過ぎた頃、警察に1本の電話が入った。年配の女性ラバーン・パブリネックという人物からの情報提供で、バーで近くに座っていた男性が「若いオンナを殺した」と自慢していたのを聞いたというものだった。

 警察が彼女の家を訪問すると、女性は「実は殺したと自慢していたのは、私の交際相手。泥酔すると何をしでかすかわからない男。私も毎晩のようにボコボコにされる」と告白。警察はすぐに交際相手のジョン・ソスノスキーを事情聴取したが、ジョンは強く否定。ラバーンの証言以外、何も証拠がないため警察はジョンを逮捕することはできなかった。

 するとラバーンは、「実は自分も殺人の手伝いをした」と言い出した。「泥酔したジョンが、ヒッチハイクしていたトーニャをピックアップし、町の外れで強姦、暴行して殺した。私はロープで彼女の首を絞めるように指示され従った」と自供。

 ジョンの車の中から、切り取られたジーンズの股の部分と女性用のバッグが発見された。ジョンは相変らず否定し続けたが、「泥酔すると記憶がなくなる」ことは認めているため、殺害した可能性は大。ポリグラフ検査にもひっかかった。何よりも、ジーンズの股が切り取られたことは世間に公表していなかったため、ラバーンとジョンがトーニャ殺しの犯人だと警察は確信した。

 しかし、トーニャの母親はジョンの車から出てきたバックは「娘のものではない」と証言。ジーンズの股の部分もトーニャのものではないことが判明。警察は混乱したが、警察と犯人以外、知りえない情報を知っていたとして、2人が事件に無関係のはずはないと断定。トーニャ殺しで起訴した。裁判でもラバーンは証言を二転三転させたが、1991年2月、ジョンとラバーンは終身刑に処され、トーニャ殺し事件は解決した。


■真犯人の登場

 この裁判が行われている最中、奇妙なメッセージがオレゴン州ユマティラとモンタナ州リビングストンの大型トラック運転手用休憩所の男子トイレの壁になぐり書きされているのが発見された。

オレがトーニャ・ベネット殺しの真犯人。2人が罪をかぶってくれたから、また殺しができる。真犯人の証拠はジーンズから股の部分を切り取った、だよ」というメッセージで、スマイリーフェイスが描かれていた。警察は気にはなったが、悪戯だろうと流すことにした。

 だが、トーニャ殺しの事件が解決と見なされ3年が過ぎた1994年の秋。何者かがオレゴン州ポートランド新聞社と、ワシントン郡刑事裁判所に、「ジョンとラバーンは無罪だよ。なぜなら私がトーニャを殺した真犯人だからだ」という出だしで始まる手紙を送りつけた。

 謎のスマイリーフェイスが描かれた手紙には、「トーニャは私が最初に殺した女。今まで5人殺しているけど、もうやめようかなと思っている。長距離トラックの運転手という職業がら、犠牲者を見つけるのが簡単すぎてつまらないから」と続き、他の殺人についての詳細も記されていた。

 連絡を受けた警察は、最初、ジョンとラバーンが釈放されたいがために真犯人をでっちあげようとしているのではないかと疑った。しかし、手紙から彼らの指紋は見つからず、また彼らが手紙を書いてくれと頼めそうな近親者の指紋や刑務所で知り合ったような前科者の指紋ともマッチしなかった。

 警察はまたも単なる悪戯かもしれないと思ったが、トイレになぐり書きされていたメッセージと非常に似た筆癖だったこと、告白した殺人事件の詳細の中には、未解決事件と一致し、また一般に公表されていない情報が多く含まれていたため、警察は息を飲んだ。無実の人間が罪をかぶり刑務所に入っているだけでなく、連続殺人鬼が野放しになっているからだ。

 新聞記者はこの連続殺人鬼を「ハッピーフェイス・キラー」と呼び、手紙のことを大々的に報道。警察は手紙の主探しに躍起になったが、指紋は前科者リストにはなく、誰が書いたのか、どこから送られてきたのか、何一つつかめなかった。


■「この5年間で8人の若い女性たちを殺した」

 「ハッピーフェイス・キラー」レター騒動から1年後の1995年3月30日。キース・ハンター・ジェスパーソンという男が、ワシントン州ワシューガルで若い女性、ジュリ・アン・ウィニングハムを殺したとして逮捕された。

 きっかけは、キースが逮捕される6日前に送った兄への手紙だった。手紙には、「この5年間で8人の若い女性たちを殺した」「ほかにも大勢の女性たちに性的暴行をしてきた」「でも運が尽きてきた。もう何もかも終わりだ」と記されており、この手紙を入手したメディアは「シリアルキラー」だと大々的に報じた。その後ポートランド新聞社は警察に、「ハッピーフェイス・キラーの手紙と筆癖が極似している」と通報している。

 キースが逮捕されることになったジュリ・アン・ウィニングハム事件は、トーニャ殺しの現場であるポートランドから車で20分の場所にあるワシントン州ワシューガルで発生していた。トーニャ同様、遺体は高速脇の草原に遺棄され、トーニャと同じく性的暴行を受けていた。そして、ジュリ・アンもまた、バーで飲むことを好む女性だったという。

 キースは、拘置所に入ると、その仲間だけでなく弁護士にも、トーニャら8人を殺してきたと自慢げに明かした。注目されることを嬉しがり、拘置所でメディアのインタビューを受けたりもした。「ハッピーフェイス・キラー」レターについていた指紋とキースの指紋が一致し、また手紙に付着していたDNAもキースのものと一致すると、メディアはハッピーフェイス・キラーが逮捕されたと大騒ぎした。その一方で、ジョンとラバーンをトーニャ殺しで起訴し、刑務所に入れてしまった警察は頭を抱えた。

■暴力が横行する環境下で育ったハッピーフェイス

ハッピー・フェイス・キラーと呼ばれた凶悪連続殺人鬼の正体 — 血しぶき舞うまで女の顔を殴り倒す狂気の果てにの画像7キース・ハンター。Wikipediaより

 身長198cm、体重113kgの大男であるキースは1955年4月6日にカナダのブリティッシュ・コロンビアで誕生。5人兄弟の中間子で、アル中で暴力的な父親のもと育った。父親は「親父(キースにとって祖父)もとても暴力的な男だった」と言い、まるで遺伝だから仕方ないと正当化しながら子どもたちに暴力を振るったという。

 キースは兄弟の中では目立たない子だったが、一家がアメリカのワシントン州に移住してからは、巨体であるため学校でいじめられるようになった。兄たちはそんな彼を救うことなく、一緒になってからかい、キースは内気で一人遊びを好む子ども時代を過ごすようになった。年を重ねるにつれキースは悪い態度をとったり、暴力をふるうようになり、父親にベルトで叩かれるなど激しく折檻されるようになった。折檻はすさまじいもので、電気ショックを与えられたこともあったという。

 キースが一人遊びの中で最も気に入っていたことは、動物虐待だった。動物同士を死ぬまで戦わせるのを見るのが大好きで、年齢が上がると共に、迷い犬や猫、鳥を捕まえてはボコボコに殴り、首を絞めて殺すという遊びをするようになっていった。動物虐待を咎められると、「父さんに褒められたいだけ」と弁解し、止めることはなかった。


■殺し願望の芽生え

 動物殺しに飽きてきたキースは、10代になると「人間も殺したい」と、思うようになる。10歳の時には、悪友マーティンを、タコ殴りにしたが、後に「殺すつもりだった」と告白している。さらに11歳の時には、湖で泳いでいた男子の足をひっぱり溺れさせようとし、その後もプールで別の男子を溺れさせようとしているところをライフガードに見つかっているが、この2つも「殺すつもりだった」と明かし、周囲の大人たちから嫌われるようになった。

 14歳の時に強姦をして童貞を喪失したというキースだが、男女交際にはオクテで、高校卒業前のダンスパーティーにも欠席。1973年に高校を卒業したが、父親から「大学なんて卒業できるわけない」と言われたため、進学はせずに肉体労働をするようになった。

 そんな彼も1975年の20歳のときに結婚し、娘2人、息子1人の3人の子どもに恵まれ、長距離トラック運転手として家族を養うようになった。


■殺人は、離婚がきっかけか?

 暖かい家庭を築くことで精神的にも落ち着いたかのように見えたキースだったが、妻は仕事で不在がちなキースが浮気をしているのではないかと疑うようになり、結婚して14年目に子どもを連れて実家に戻り、離婚を申請。1990年に成立したが、その後もキースは子どもたちと会い、父として交流を持ち続けた。

「妻を見返してやろう」と警察官を目指し奮闘したが、訓練中に怪我をしてしまい断念。遠距離トラック運転手に戻り、全米を移動しながら憂さ晴らしのように女性を強姦、性的暴行するようになっていった。そして、トーニャを殺したのをきっかけに強姦殺人するようになったのだった。


■ジョンとラバーンの釈放

 キースが真犯人だと判明し、終身刑で服役していたジョンとラバーンは釈放された。ラバーンはジョンから地獄のようなDVを受けており、「彼から逃れるためにウソを言った」と告白。犯人しか知りえない情報は、警察が自宅捜索をする際に見せてもらった書類に記されているのを読み、知ったと明かした。もし、彼女がウソをつかなければ…と、批難する声もあがったが、キースは証拠を残していなかったため、トーニャの件で捕まることはなかったと見られており、ラバーンはお咎めなく釈放された。

 キースだが、トーニャをバーで見かけて、駐車場で声をかけ借りていたアパートに連れ込んだものの、セックスをしようとした際、トーニャが「さっさと終わらせてよ」と言ったため逆上したそうだ。片手で首を締め上げ、もう片方の手で顔がぐちゃぐちゃになるまで殴った。あまりにも強い力で殴ったため、血が天井にまで飛び散ったが、かまわず気が済むまで殴り続け、その挙句、首を絞めて殺したと供述した。死体を捨てる前に、ジーンズの股の部分を切り取ったのは、自分の指紋が残っていると思ったからだとも証言。「完全犯罪」をしたことにとても満足したと、警察をあざ笑いもした。

 血も涙もない凶悪犯のキースだが、警察から逃げられないと分かると怖くなり、2度自殺未遂をしている。また、出頭したのは罪が軽くなるようにと計算したからだったとのこと。しかし、裁判官は彼に同州で最も重い終身刑を下した。なお、キースが殺したと認めている身元不明の若い女性が誰なのかは今なお判明しておらず、本当は8人以上の女性を殺したのではないか、オレゴン州近辺の未解決事件の多くは彼によるものなのではないかとも見られている。


■目立ちたがりのキースの娘

 犯行声明を送るなど、注目されるのが大好きなキースだが、キースの実の娘もメディア好きで、たくさんのトーク番組に出演し、「私は連続殺人鬼の娘です」「父は私たちの前でも猫を殺して笑っていた」などと証言。連続殺人鬼の娘として感じたことを綴った本も出版し、世間から白い目で見られた。

 また、キースから1990年に殺されそうになったと証言した女性もメディアに登場。夫と口論の末、赤ん坊を連れて逃げ出した際にキースと出会い、意気投合。トラックの中で赤ん坊を足元に置いてキースにフェラチオをしたが、口論になってしまい首に手をかけられ殺されそうになったと涙ながらに告白した。この女性は、赤ん坊が泣いたため殺されずに済んだとも語り、世間からは「気の毒ではあるけど、自業自得」「赤ん坊が気の毒」と叩かれた。この女性だが、今年3月に放送されたキースの連続殺人事件を題材としたテレビ映画で、「私のことを娼婦として描いていた」とTV局を起訴。気の毒ではあるが、とんでもない女だと批難を浴びている。

 ハッピーフェイス・キラーことキース・ハンター・ジェスパーソンは、今年59歳。オレゴン州の刑務所に収容されている。囚人仲間相手に、「実はオレ、160人くらい殺した」と豪語しまくり、新入り相手に自分の殺しの手口を自慢げに話すなど、反省の色はまったくないと伝えられている。

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