君は、戦車を止められるか? 天安門に散った「無名の反逆者」を今こそ思い出そう

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■ビニール袋を下げた1人の若者

 1989年6月5日、その事件は、ごくヒッソリと起きた。前々日の6月3日未明~4日早朝にかけての、あの「天安門事件」の翌日。北京の天安門広場に続く、長安街の10車線道路。その路上での出来事だった――。

 5日、民主化運動を制圧した59式戦車部隊が、基地に引き上げようと隊列を組んで進む中、なんの前触れもなく、起こったのだ。

 車道に進み出た1人の若者が、10数台は続く隊列の前に立ち尽くし、その行く手を遮ったのだ。文字通り、体1つで。スラックスに白シャツ。両手にはビニール袋。買い物帰りを思わせる、ごく当たり前の姿だった。

 戦車は彼を避けようと、何度も右に左に頭をふるが、その度に若者は、タンクの前に立ちふさがり、行進を邪魔だてした。すると、意を決したらしく、戦車に飛び乗った。そして、ハッチから頭を出した兵士との激しい口論が始まる。やがて、他の市民や私服警官が、若者を群衆の中に引き戻し、戦車の隊列は再び行進を始める…。

 CNNやBBCなどの欧米メディアはこれを絶賛し、青年の捨て身の行動の一部始終を記録した動画と写真はたちまち、世界を駆けめぐった。彼はこう呼ばれた。「無名の反逆者」(The Unknown Rebel)と。あるいは「戦車男」(Tank Man)とも。次の、あるジャーナリストのいささかエキセントリックなリポートは、その興奮の大きさを伝えている。

「1989年6月5日に、天安門広場近くを行進中の戦車の列の前に立ちはだかったその男性は、かつて孫文がした以上に鮮烈に、そして親密に、世界の記憶の上に、彼のイメージを焼き付けたといえるだろう」
「かつてウィンストン・チャーチルやアルバート・アインシュタイン、またジェームズ・ジョイスといった人々に注がれたまなざしを遥かに上回る、世界中の眼という眼が彼の自己超越の瞬間を、映像を通してだが、ほぼ確実に凝視したのだった」

 もちろん、中国政府は、蟷螂(とうろう)の斧にも似た、この一青年の挙を完全に封殺した。また、この行動は、戦車が天安門を引き上げる際のものであるから、実効な意味を持たないとする冷ややかな声も挙がった。しかしそれは「シンボル」の意味を解しない、あまりに朴念仁のいいぐさだろう。

 あれから、早いもので25年がたつ。いまだに「無名」のままの彼は今、どこで何をしているのだろうか? と、筆者の悪いクセで、いつもながら能書きが伸びてしまった。

「歴史事件的含義不会自動呈現」とか「後来他消失在人群中,下落不明」とか「連姓名都難以確認」とか、漢字ばかりのテロップが、また強い迫真性を生んでいる。

 買い物袋を下げた「無名の反逆者」を、1998年4月の『タイム』誌は「20世紀で最も影響力のあった人物100人」に選んでいる。次の興味深い意見も是非、紹介しておきたい。

この衝撃的な映像には2人の『無名の英雄』がいる。戦車の前に立ちはだかった男と、彼をひき殺すことをためらった戦車の兵士だ」。

 まったくもって、その通り。おそらく後に、なんらかの罪に問われたに違いないこの兵士のことも気にかかるが、それはひとまず置いておくとして、なぜ青年が、こんな無謀の挙に出たのか、その訳を考えてみよう。

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