49人を残虐な方法で殺害したピチュシキン!! 「公園のマニアック」と呼ばれた男の異常な殺人欲=ロシア

49人を残虐な方法で殺害したピチュシキン!! 「公園のマニアック」と呼ばれた男の異常な殺人欲=ロシアの画像1ビツァ公園

 2005年10月15日の土曜日。ロシアのモスクワ南西部に位置する広大なビツァ公園を巡回していた警察官が中年男性の遺体を発見した。頭蓋骨はぐちゃぐちゃに潰され、周辺に脳みそが散乱しているというひどい状態で、頭の中にはヴォッカの瓶が突き刺さっていた。この公園は市民が散歩したり老人たちがチェスを楽しむ場所として有名で、警官たちは緑溢れるこの場所でこのような恐ろしい殺人が行われたのかと背筋が凍る思いをした。被害者は31歳のニコライ・ヴォロビエフだった。

 1カ月後、ビツァ公園でまた残虐遺体が発見された。被害者は63歳のニコライザ・パチェンコ。その2週間後にも、そしてその1週間後にも、公園内で次々と無残な死体が見つり、クリスマスまでに発見された残虐遺体の数は7体へと増えた。全て脳みそがぐじゃぐじゃになるまで殴打され、頭にヴォッカの瓶を突き刺されているという、むごたらしいものだった。被害者はみな家族とは疎遠で行方不明になっても探す人などいないような者ばかり。何も盗まれておらず性的暴行も受けていなかったことから、犯人の目的は人殺しであることは明らかで、警察は連続殺人鬼の仕業だとして捜査を進めた。

 捜査官は犯人の手がかりに繋がるものはないかと事件現場をくまなく調べた。しかし、指紋など犯人を特定するものは何ひとつ見つからず捜査はすぐさま暗礁に乗り上げた。40年のキャリアを持つベテラン科学捜査官は、凶器はハンマーだろうと特定したが、犯人像は一行に見えてこなかった――。


■難航する捜査

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 憩いの場である公園での連続殺人事件を、マスコミは大々的に報じた。すると、モスクワ市民の間で、「犯人は精神病患者ではないか」という噂が流れた。公園の側には精神病棟があり軽度の患者は公園を散歩することが許可されていたからだ。警察は200人もの警察官を公園に送り込み不審者がいないかを調べさせた。女性のカツラをかぶり、ハンマーを入れたバッグを持っていた女装したトランスベスタイトを捕まえたとき、警察は「犯人だ!」と大喜びした。しかし、トランスベスタイトは「自衛のためにハンマーを持ち歩いている」と主張。しっかりとしたアリバイもあったため、すぐに釈放されたが、警察は彼をマークすることにした。しかし、それは無駄な行為だった。トランベスタイトが逮捕された尾行され始めてから1週間後、またしても残虐遺体が発見されたからだ。

■14人目の被害者女性…

49人を残虐な方法で殺害したピチュシキン!! 「公園のマニアック」と呼ばれた男の異常な殺人欲=ロシアの画像3画像は、「YouTube」より。マリナさんと

 犯人は困惑する警察をあざわらうかのように次々と殺人を犯し、被害者はあっという間に12人へと増加。2016年4月に48歳の女性被害者が発見されたのを境に、立て続けに女性が殺され、14人目の被害者となる女性の身元を割り出すため、警察は被害者のズボンポケットに入っていた地下鉄の切符に記されていた駅の防犯カメラの映像を調べた。犯人が写っているかもしれないと期待もしていたのだが、映像ビデオは膨大な数で調べるのには時間がかかった。

 だが、女性の身元はすぐに判明することになる。息子が「母親ではないか」と警察に届け出たからだ。女性は36才のシングルマザーであるマリナ・モスカノヴァで、息子に「サーシャというボーイフレンドと出かける」とメモを残していた。メモにはボーイフレンドの携帯電話の番号も書かれていた。警察がその番号を調べたところ、32歳のスーパーマーケット店員アレクサンドル・ピチュシキンのものだと判明(アレクサンドルはサーシャという愛称で呼ぶことが多い)。駅の防犯カメラに女性とアレクサンドルが一緒に歩いている記録が残っていることも見つかり、6月16日、警察はアレクサンドルが住むアパートへ行き、彼を逮捕した。

■アレクサンドル・ピチュシキン

49人を残虐な方法で殺害したピチュシキン!! 「公園のマニアック」と呼ばれた男の異常な殺人欲=ロシアの画像4ピチュシキン「YouTube

 マリナ殺しで逮捕されたアレクサンドルは当初殺害を否定していたが、すぐに自供を始めた。6月13日にマリナと駅で待ち合わせてビツァ公園でピクニックデートをしたこと。地面にかがんでランチを並べようとする彼女の頭を背後からハンマーで滅多打ちにしたこと。割れた頭蓋骨にヴォッカの瓶を突き刺しその場を立ち去ったこと。しかしアレクサンドルの話しは終わらなかった。「オレはこれまでに61人殺した。そのうちの60人はビツァ公園で殺した。『ビツァ公園のマニアック』はこのオレだ」「14年間、オレは捕まることなく人を殺しまくった。神になった気分だった」と満ち足りた表情で衝撃的な自白をし始めたからだ。

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 14人を殺したと睨んでいた警察は、アレクサンドルが捜査を混乱させようとしているのではないかと懸念。彼の自白はウソのものでそんなには殺していないだろうと疑ったが、その考えはすぐに打ち消されれることになる。アレクサンドルの自宅からます目に番号が書かれたチェスボードが発見され、何なのかと尋問された際、「チェスボードのマス目の数である64を目指して殺したんだ」とニヤリと笑ったからだ。そして、2003年10月に行方不明になったヴァルディマー・ファミン殺害など、被害者の名前を挙げていき、「殺した人たちの父親になった気分だよ。別の世界に続くドアを開けてあげたんだから」「最初の殺人は初恋と同じだ。いつまでも忘れらない」「相手が自分と親しければ親しいほど、殺すことに大きな喜びを感じるようになる。感情的なものになるんだよ」とのたまった。

■ハンマーで顎を砕いた

49人を残虐な方法で殺害したピチュシキン!! 「公園のマニアック」と呼ばれた男の異常な殺人欲=ロシアの画像6実際に、ピチュシキンが再現していた時の映像より「YouTube

 警察はアレクサンドルをそれぞれの犯行現場へと連行し、マネキンを使い殺人を再現させた。アレクサンドルはベテラン捜査官が驚くほど饒舌で、「自分がどうやって相手をハンマーで殴り、相手がどういう呻き声をあげて、どちら向きに倒れたのか」「倒れた相手の頭部をどう殴り、どのようにヴォッカの瓶を頭につっこんだのか」などなど、こと細かく説明した。氷のような感情のない目で、「死んでるくせに、口からゼーゼーって音が出続けてたからハンマーで顎を砕いた」などと言った。2002年1月18日に飛び降り自殺として処理された40歳のホームレスも、アレクサンドルがヴォッカをあげるとアパートの屋上に誘い突き落として殺害したこと認めるなど、殺す機会があれば即実行に移すという異常な心理を曝け出した。被害者は年配のホームレスが多かったが、それは“酒でつりやすい”からで、殺せるのなら子どもでも、若者でも、女でも誰でもよかったとも明かした。

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被害者たち「mibba」より

 しかし61の殺人事件はアレクサンドルの自供によるもであり、証拠はゼロ。殺すため使ったと提出したハンマーが本当に使用されたのかも分からない。そんな中、ベテラン科学捜査官は2005年12月19日に公園で殺害された64歳のボリス・クリシンの遺体傷口からプラスチックのかけらを発見。アレクサンドルが提出したハンマーを調べたところ一部がはがれており、被害者の遺体からでてきたかけらと一致した。警察は求めていた「アレクサンドルが連続殺人鬼だという確実な証拠」をやっと手に入れたと大喜びした。


■ピチュシキンの生い立ち

 1978年から1990年にかけて52人の女子どもを殺害したアンドレイ・チカチーロを超える連続殺人鬼だと自白したアレクサンドル。悲惨な生い立ちだったアンドレイと比べるとそれほどでもないが、アレクサンドルの幼少時代も、またつらいものだった。アレクサンドルは1974年4月9日にモスクワに誕生。人懐っこい子どもとして周囲の大人に愛されながら育った。ビツァ公園近くにある住宅街のアパートで母と姉妹と共に暮らし、勤務先であるスーパーマーケットでの評価もよく、大人になっても人あたりは相変らずよく、誰もが彼をフレンドリーだと証言している。

49人を残虐な方法で殺害したピチュシキン!! 「公園のマニアック」と呼ばれた男の異常な殺人欲=ロシアの画像8幼少期のピチュシキン

 しかし、彼は幼い頃にブランコで遊んでいた際、後ろ向きに倒れ落ち、勢いよく戻ってきたブランコで額を強打するという事故にあっており、その後、かんしゃくを起こすことが多くなった。恐らくブランコの事故で脳になんらかの障害を負ったのだろうと見られている。集中力がなく反抗的な彼のことを「手に負えない」と感じた母親は普通学級から特別支援支援学級に無理やり編入。そのことで、普通学級のクラスメイトからいじめられるようになり、彼は内面に怒りをためこむようになっていった。

 そんなアレクサンドルのことを「この子は頭のよい子だ」と認めてくれたのが母方の祖父だった。「頭がいいのに、本当にもったいない」と、高学年になった彼をひきとり、チェスを教えこんだ。ビツァ公園で開催されるチェス大会にも参加させた。祖父の期待以上にアレクサンドルはチェスのセンスがあり、大会では好成績をおさめるようになった。アレクサンドルは内面にためこんだ怒りをチェスで勝つことで発散させていった。チェスで勝つことで支配感を得られ、いじめっこたちに勝ったような気分になれたからだ。

■他人に認められない不満が爆発していく

 しかし、いじめは収まらず、チェスで得る支配感だけでは全ての怒りは解消できなくなった。思春期まっさかりの時期に祖父が亡くなるとアレクサンドルはまた母たちと一緒に暮らすようになり、祖父恋しさからヴォッカを浴びるように飲むようになった。相変らずチェスはしており、老人たちとヴォッカを飲みながらゲームをした。どんなに飲んでもアレクサンドルのチェスの腕はにぶらず最強だと褒められては満足した。

 年を重ねるにつて、アレクサンドルは次第にチェスで勝つことだけでは物足りなくなり、小さい子どもを「遊ぼう」と誘い、アパートに連れ込み、片足をつかみベランダの外に逆さ吊りにするところをビデオ撮影するようになった。恐怖に泣き叫ぶ子どもに向かって「お前の命はオレが握っている。オレが手を離せばお前は落ちて死ぬ」と繰り返し言い、子どもの命を支配していることに酔いしれた。そしてそのビデオを繰り返し見ては気分を高めることを趣味にするようになった。


■初めての殺人

49人を残虐な方法で殺害したピチュシキン!! 「公園のマニアック」と呼ばれた男の異常な殺人欲=ロシアの画像9ミハエル・オーディンシュック「YouTube

 そして1992年。アレクサンドルは支配欲を満たす究極の“殺人”に手を染めるようになったのだった。最初の被害者は18歳のクラスメイト、ミハエル・オーディンシュック。2番目の被害者は9歳の少年、そして次々と人を殺していった。

 アレクサンドルは警察に疑われず殺人を行うことを、「自分は神にちがいない」と酔いしれた。実は警察は2002年にアレクサンドルを逮捕するチャンスがあった。病院に運ばれてきた妊婦の女性が事件に巻き込まれたようだと看護婦から通報を受けていたのだ。事情を聞きに来た警察官に女性は、「アレクサンドル・ピチュシキンという男に声をかけられ『自分は高価なカメラを持っている。安く売ってあげる。公園に隠している』と連れて行かれた。井戸のような下水渠に隠してあると言われたので覗いたところ突き落とされた。酷い怪我をしたが、幸い水量は少なく助かった。赤ん坊のためにと必死によじ登った」と訴えたが、警察官は「ホイホイついて行った女性も悪い」と見なし、「ゴミみたいな事件」として捜査対象から外してしまったのだ。

49人を残虐な方法で殺害したピチュシキン!! 「公園のマニアック」と呼ばれた男の異常な殺人欲=ロシアの画像10実際に遺体を捨てた下水渠「YouTube

 実はアレクサンドルは長い間、殺害した被害者を下水渠に投げ捨てていた。この女性が落とされた下水渠にも「16人ほどの死体を捨てた」と供述している。公園の下にある下水溝ネットワークはモスクワ南部一帯に広がっており、また水圧がすさまじいため、何年も前に投げ込まれた遺体を回収することは不可能だった。アレクサンドルは「全部で43人、下水渠に捨てた」と言い、「被害者の遺体が出ないのなら立件することは難しい」と頭を抱える捜査員たちに、「お前たちが無能なせいだ。ちゃんと仕事をしていたらすぐに発見できたはずだ」と冷ややかに言い放った。

 殺した遺体を下水渠に捨て続ければ、逮捕されることはなかったかもしれないアレクサンドルだったが、遺体を犯行現場に放置するようになり、足がついた。専門家は、アレクサンドルは自分が何人もの人を殺していることを世間に誇示したくなり犯行現場に放置するスタイルに変更したのだと見ている。

 最終的に、アレクサンドルに無能呼ばわりされた捜査官たちは必死で証拠を集め、49人を殺害した罪で起訴することができた。2007年9月13日に開始した裁判で、アレクサンドルは大勢のメディアに囲まれ、冷酷な殺人鬼として注目を浴び、満足そうだった。「後悔していること?特にないけど、逮捕された2日後に殺す予定だった女性を殺せなかったことかな」などと遺族の神経をさかなでるようなことを平気で言い、起訴状に対して「間違いない」と述べ、49件の殺人について、落ち着いた様子で「自分がやった」と認めた。

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 責任能力があるのかないのか注目されたアレクサンドルだったが、返り血を浴びないように常に背後から被害者を襲っていたこと、証拠を残さないようにしていたことから、正常な状態で殺人を犯していたと見なされた。そして、10月29日、ロシアで最も重い終身刑が言い渡された。

 最初の15年は独房で過ごす条件がついているアレクサンドルは現在40歳。今でも61人を殺したと主張しているが、遺体が出てこないため正式には「49人を殺害したロシアの連続殺人鬼」と語られている。

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