近親相姦、シャム双生児…人間の本質を描く ― 最凶のキング・オブ・カルト映画『江戸川乱歩/恐怖奇形人間』

――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男・天野ミチヒロが、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り!

【今回の映画 『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』】

 宇津井健のモッコリタイツが赤面の和製スーパーマン『スーパージャイアンツ』シリーズ、高倉健主演の『網走番外地』シリーズ、『異常性愛記録 ハレンチ』、以前紹介した『キンキンのルンペン大将』など、さまざまなヒット作・怪作を残した「キング・オブ・カルト」石井輝男作品の中でも最凶の1本。

 公開当時は話題に上らなかったが、80年代から90年代にかけて大井武蔵野館など各地の単館で繰り返し上映されるたびに、支持者を拡大していった。ポルノではないのに成人指定ゆえ地上波テレビでは1度も放送されず、1993年にビデオ発売の告知がありながら諸事情で発売中止になったため、単館上映映画館に足を運ぶしか鑑賞する手立てがなかった幻の映画なのだ。

 内容は、タイトルロールで江戸川乱歩原作の「パノラマ島奇談より」とクレジットされるが、実際には『孤島の鬼』の色が強く、『人間椅子』『屋根裏の散歩者』のエッセンスが取り入れられている。

■あらすじ/日本カルト映画最強のラスト

 映画が始まって、いきなり主人公の医大生・人見広介(吉田輝雄)が精神病院の中にいて「俺はキ○ガイじゃない」と喚いている。やがて広介は自分の出生の秘密をつきとめるため、病院を脱走し、辿り着いた能登半島沖の孤島で、悪夢のような光景に遭遇する。土方巽が率いる暗黒舞踏塾のメンバーが演じる奇形人間たちが、不思議な音楽に乗って絢爛に踊り狂い行進する。

 そこで広介は、行方不明の父・丈五郎(土方巽)に再会する。だが丈五郎は、さらってきた健常者を外科手術で改造し、島に「奇形人間の王国」を築こうとしていたのだった――!

丈五郎「今度はオマエたち正常な人間が、我々奇形人間に服従するのだ!」
広介「狂っている!」

 丈五郎は生まれつき手に水かきがあるコンプレックスから、そのような野望を抱いたのだった。

 つまりタイトルにある「奇形人間」とは、そのほとんどは羊や鳥と合体させられた改造人間などをボディペイントや衣装で表現したもの。睾丸肥大人間とかは出てくるが、いわゆるフリークス映画とは一線を画す。公開当時の映倫も、発表スチールから「睾丸肥大人間は外してくれ」と指導したが(笑)、公開に関しては「田舎の祭りなどでやる因果ものや、見せ物的に考えてますので、あまり神経を尖らせていません」(『内外タイムス・東京版』1969年10月13日)とコメントしている。

 広介は丈五郎に古い屋敷へと案内される。そこで広介が見たものは、醜悪な顔をした猛(これが近藤正臣のデビュー)と、若い娘・秀子(由美てる子)が背中合わせに結合したシャム双生児だった。

広介「医学上、男と女のシャム双生児はあり得ない!」。

 そう、それは丈五郎が作り出した人工シャム双生児だったのだ。背中の秀子にムラムラし、犯そうとしても何もできずにジタバタする猛に、同じ男として痛いほど哀愁を感じる。

 これは酷い…! と、父親に内緒で2人の分離手術をした広介は、やがて秀子を愛してしまい結ばれる。しかし何と、秀子にはとんでもない出生の秘密が隠されていた。

 秀子は、浮気した妻に怒った丈五郎が、下男のせむし男に犯させた結果生まれた娘、つまり広介の妹だったのだ。そしてラストは、ファンの間で語り草になっている伝説の「人間花火」。これから作品を鑑賞する人は、ここから先は読まない方が身のためだ。

 近親相姦を知って世を儚んだ広介と秀子は、抱き合ったまま花火台から打ち上がり、「ドーン!」と空中爆発して心中する。美しい夕暮れの空をバックに四散する2人の肉片。宙を飛んでいる2つの首がそれぞれ「おかあ~さ~ん」「おかあ~さ~ん」。古今東西の全宇宙の映画史上最高の傑作ラストシーンだ!

 この作品は土方巽の存在感に負うところが大きい。土方は1961年に、全身白塗りで半裸や剃髪したダンサーがゆっくりと動く(踊る)前衛ダンス「暗黒舞踏派」を創始した怪人物。「舞踏とは、命懸けで突っ立った死体である」は彼の名言だ。その土方も石井監督の演出をよく理解していて、次のように言及している。「神様でない限り、エログロ好みは人間の本質。非難に屈せず、それを追及する石井さんはエライし、最高の娯楽映画と思う。あまっちょろいオブラートで包んだ愛情物語なんて、みなニセモノだ」(『大阪日日新聞』1969年10月4日)。

 2007年、米国のSYNAPSE FILMS社からリージョンオール(世界中のプレーヤーで再生可能)のDVDが発売されている。必見!
(文=天野ミチヒロ)

■天野ミチヒロ
1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイト ネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物 (UMA)案内』(笠倉出版)など。新刊に、『蘇る封印映像』(宝島社)がある。

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