13歳の時祖父からレイプされ… 7人の男を殺害した連続女性殺人鬼アイリーンの一生

 1989年12月1日。サンシャイン・スーテトとして知られるフロリダ州のビーチの近くで、一台の車が乗り捨てられているのが発見された。誰の車なのか身分証明書などはなく、綺麗に拭かれていたため指紋も採取できず。怪しさ満点な事件だったが、地元警察は単なる失踪事件として処理した。フロリダは世界中から人が集まる場所であり、人生をリセットしようと何もかも捨てて姿をくらます人が少なくなかったからだ。

 13日、車が発見された8キロ先のビーチで車の所持者とみられる死体が発見された。亜熱帯気候のこの土地では死体の腐敗の進みが早く、また虫が多いため数日で原型をとどめないほど崩れてしまう。発見された遺体も酷い状態だったため、監察医はマニュアルにそって手首を切断し科学捜査班に送った。遺体はすぐに51歳の離婚歴がある電気工のリチャード・マロリーだと判明。22口径の拳銃で4発撃たれて殺されたことも判明した。財布などがなかったことから警察は物取り目的の犯行だろうと推測。犯人に繋がる手がかりがなかったため事件はすぐにコールドになってしまった。


■珍しい凶器

13歳の時祖父からレイプされ… 7人の男を殺害した連続女性殺人鬼アイリーンの一生の画像1実際に使用された銃「murder pedia」より

 しかしその後、3カ月の間に3人の男性が殺されるという事件が発生。43歳で離婚歴のある重機オペレーターのデイヴィッド・スピアーズ、40歳で近日中に結婚する予定だったロデオライダーのチャールズ・キャルズカドゥーン、50歳で暖かい家庭を持つトラック運転手のトロイ・バーレス。リチャードと、この3人の殺人事件に共通していたのは、22口径の拳銃で殺されたこと。22口径は女性が護身用に購入することが多い銃で、殺人事件の凶器になることは滅多にないため、警察の目をひいた。ほかにも、車から出たところを撃たれていること、運転席の椅子が前向き気味になっていることから犯人に外に出ろと脅されたのではないかということ、車のナンバープレートが外されていたこと、被害者は全員中年の白人男性であることなどの類似点があった。1990年5月19日、既婚者で56歳になる元警察署長/児童福祉官のチャールズ・ハンフリーズが、5人と同じように殺害されたのを受けて、警察は同一犯による連続殺人事件として捜査を開始した。

 被害者の中にはズボンが緩んでいた者がいたこと、現場近くにコンドームが落ちていたケースがあったこと、そして凶器が22口径拳銃だったことから警察はすぐに娼婦の仕業ではないかと睨んだ。しかし、車の中は綺麗に拭かれていたため指紋は採取することができず。事件現場から容疑者の手がかりを得ることはできなかった。

 そんな中、警察は自損事故を起こし放置された状態で発見された一台の車に警察は注目した。車の所有者は行方不明になっている65歳でキリスト教伝統師のピーター・シームズ。事故を起こして失踪するような男ではない。警察は、ピーターが連続殺人事件の被害者タイプにぴったり当てはまることから、犯人は彼を殺害した後、車を盗難したと睨んだ。車の中には事故時に負傷したものと思われる血痕のついた指紋が残されていた。また、車が放置されていた近くの住民が庭の水道蛇口から手や顔を洗う女を目撃したと証言。2つの似顔絵も作ることができ、容疑者逮捕に一歩近づいたと警察は喜んだ。

■同性愛者で、男を相手にした娼婦

 そんな中、11月18日、懸命に捜査を続ける警察をあざ笑うかのように再び連続殺人犯によると見られる殺人事件が起こった。7人目の犠牲者は60歳のトラック運転手、ウォルター・アントニオ。身につけていた腕時計や指輪も盗まれていたことから、警察はすぐに付近の質屋をめぐり、持ち込んだ者がいないかを調べた。また、容疑者の似顔絵もマスコミに公開し、情報を呼びかけた。すぐにいくつかの情報が寄せられ、その中には似たような女性2人がキャミー・グリーンという名前でモーテルに滞在しているという情報があった。付近の質屋に聞き込みに入ると、キャミー・グリーンがリチャード・マロリーから盗んだカメラとレーダー探知機を持ち込んでいたことが判明。この頃、質屋では持ち込み者の指紋を採取することが義務づけられており、しっかりと指紋も残されていた。警察は最初からキャミー・グリーンは偽名だろうと見ていたが、指紋は偽造できることはできない。すぐに照合にまわし、アイリーン・ウォーノスという名の白人女性だと判明した。

13歳の時祖父からレイプされ… 7人の男を殺害した連続女性殺人鬼アイリーンの一生の画像3アイリーン・ウォーノス「Murder Pedia」より


 彼女は1974年に飲酒運転しながら22口径拳銃を発砲したことがあり逮捕歴があった。ほかにも、1986年にも盗難車を運転し警察に停められ、車内から22口径拳銃が発見されたことから重窃盗罪で逮捕されたり、暴行罪や窃盗罪で何度か逮捕されているという前科も持っていた。

 アイリーンが滞在している近くには彼女の行きつけのバーがあり、同性愛パートナーのティリア・ムーアと足しげく通っていたという情報も寄せられた。また、アイリーンは同性愛者だが酒とドラッグと生活費のために男に身体を売っていることも分かった。そして、ティリアとは最近別れて荒れているという情報も入ってきた。


■あなたのためなら死ねる

 警察はアイリーンが拳銃を所持している現場を抑えられば殺人罪で起訴できると見て、バーにおとりを送り、売春に合意して店から出てきたところを拘束した。アイリーンのバッグからは拳銃は出てこなかったが、キリスト教宣教師のピーター・シームズの車に残されていた血痕がついた指紋がアイリーンのものだと確定したため逮捕。しかし、ピーターの遺体は見つかっておらず、殺人罪では起訴できない。警察はティリアに協力を求め彼女は了承。アイリーンに電話をさせ「警察が来た。わたしに罪をかぶせる気なのか」「だからわたしと別れたのか」と責めさせた。アイリーンは「そんなことするはずがない。あなたのことを今でも愛している。あなたのためになら死ねる」と言った。逮捕から8日後、尋問していた刑事の「主犯はどっちなんだ? ティリアなのか?」という問いに、アイリーンは「あたしよ。ティリアは関係ない。あたし1人で殺したの。早く電気椅子送りにしなさいよ」と吐き捨てるように言った。警察の睨んだ通り、アイリーンはティリアのために自分の罪を認めたのだった。

■13歳の時、祖父から強姦される アイリーンの生い立ち

13歳の時祖父からレイプされ… 7人の男を殺害した連続女性殺人鬼アイリーンの一生の画像4アイリーン

 アイリーンは1956年2月29日、ミシガン州ロチェスターで生まれた。母親は14歳で父親は16歳で結婚し、アイリーンと一つ年上の兄をもうけたが、たった2年で離婚。

13歳の時祖父からレイプされ… 7人の男を殺害した連続女性殺人鬼アイリーンの一生の画像5血が繋がった父親

 母親はアイリーンが4歳のときに自分の母親に子供たちを押しつけ家出。祖母は仕方なく2人の孫と養子縁組をして育てた。ちなみに、アイリーンが一度も会うことがなった父親は統合失調症を患う児童性愛者で7歳の少女を強姦した罪で終身刑に処されカンサス刑務所に収容。1969年に刑務所内で首つり自殺をしている。

13歳の時祖父からレイプされ… 7人の男を殺害した連続女性殺人鬼アイリーンの一生の画像6祖父母とアイリーン

 アイリーンの祖父も問題を抱えた人物で、アルコール依存症のDV男だった。アイリーンは幼い頃から素っ裸にさせられ殴らた。ペニスを挿入はされなかったものの性的虐待も頻繁に受けた。虐待されている事実から逃れようとアイリーンは無感情な子どもに育ち、8歳頃にはタバコや金のために見知らぬ男にフェラチオをしたりセックスをするような少女になっていた。自暴自棄になっていた彼女は兄ともやるようになり、13歳でとうとう祖父からも強姦されるようになった。14歳のとき祖父の友人に強姦された際に妊娠し男児を出産。すぐに養子に出した。同じ頃、アル中だったが比較的まともだった祖母が亡くなり、アイリーンは家出し学校も中退し、売春をしながら路上や森で暮らすようになった。その後、祖父は自殺し、兄はガンで病死。壮絶な環境の中育った彼女は言葉通りの天涯孤独となった。


■夫を杖で殴るなど犯罪重ねる

13歳の時祖父からレイプされ… 7人の男を殺害した連続女性殺人鬼アイリーンの一生の画像7結婚した夫

 10代の半ばにはアルコールを浴びるように飲むようになっていたアイリーンは、1974年、前出の飲酒運転をしながら銃を発砲し逮捕。その2年後にはヒッチハイクしたときに乗せてくれた69歳の裕福な男性と結婚したが、金を出せと杖で殴るようになり、男性から婚姻無効の申し立てをされてしまう。その間にもアイリーンは、バーで傷害事件を起こし逮捕されるなど犯罪を重ねた。飲酒運転でも逮捕されたが、兄の生命保険金1万ドル(約121万円)が入ったため罰金を支払い、残りは散財。金はすぐに底をつき、1981年、コンビニ強盗をし逮捕、刑務所送りとなった。

■娼婦として売れなくなったアイリーン

13歳の時祖父からレイプされ… 7人の男を殺害した連続女性殺人鬼アイリーンの一生の画像8アイリーン

 その後も犯罪を繰り返していったアイリーンがティリア・ムーアに出会ったのは1986年のこと。場所はゲイバー。一目惚れだった。ホテルの清掃員だったティリアに苦労をかけたくないからと仕事を辞めさせ、自分が娼婦をして必死に金を稼いだ。しかし、30歳になっていたアイリーンは酒や薬物のせいで50歳に見えるほど老け、なかなか客がつかなかった。

 そんな時、最初の犠牲者リチャード・マロリーが“襲ってきた”ため、自己防衛で射殺。「なんで、いつも私が被害者じゃなきゃいけないの。これからは私が加害者になってやる」とスイッチが入り、次々とヒッチハイクをした男を殺し、金目当てのものを奪っていったのだった。

 裁判では最初の殺人が自己防衛だったということは認められていない。リチャードは強姦暴行罪で10年服役していた前科があることから、アイリーンの供述が正しい可能性も十分にあったにもかかわらず、だ。

13歳の時祖父からレイプされ… 7人の男を殺害した連続女性殺人鬼アイリーンの一生の画像9ティリア・ムーア

 アイリーンは「車のハンドルに首を押し付けられ窒息しそうになった。殴られ出血もし殺されるかと思ったから自分を守るために殺した」と具体的に証言したものの、証拠がないとしてアイリーンが金目当てにリチャードを殺したと見なされた。犠牲者から盗んだものは運転しながらいたるところに捨てたとしていたが、すべて持っていたことが判明したりと供述の信ぴょう性が低かったことが決定的となった。

 なお、一連の殺しに使った拳銃はバッグに入れて川に投げ捨てたと供述しており、それは発見された。拳銃はさびていたが、科学捜査官は事件に使ったことを証明することができた。


■「早く死刑にしてほしい」

 1992年1月31日、アイリーンはリーチャドに対する殺人で有罪となり裁判官から死刑を命じられた。その後も、遺体が発見されていないピーター以外、6人全員を殺害した罪で、それぞれ死刑となり、最終的に6つの死刑に処された。

 アイリーンの弁護士チームは、彼女が精神的に障害を持ち、殺人をしたときは正気ではなかったとして上告しようとした。しかし、アイリーン自身が「わたしは正気だった」と言い「早く死刑にしてほしい」と言い放った。裁判所でも「上告などしない。死刑を受け入れる。わたしは天国に行くけど、みんなは地獄よ」と鼻で笑った。拘束後、アイリーンは熱心なキリスト教信者となり「神はわたしのことをお許しになった」と目を見開き、ますます死刑を恐れなくなっていった。

■モンスターの最期

 その後、「アイリーンは気の毒な人生を送って来た」「彼女は精神異常者であり、それは生まれ育った環境のせいだ」と同情し、死刑に処さないようにという運動が行われたが、彼女は死刑を強く望み続け、2002年10月9日に薬物注射による死刑が執行された。

 南部の女性らしく最期の晩餐として、ケンタッキーフライドチキンとポテトを食べた彼女は、処刑場に向かう時、嬉しそうに笑顔を浮かべた。最期の言葉は「わたしはこれから航海に出るけど、『インディペンデンス・デイ』って映画みたく、イエス・キリストともに母船に乗って帰ってくるわ。6月6日にね。また戻るのよ。戻ってくるわ」だった。

 アメリカ史上10人目の女性死刑となったアイリーンの事件は2003年にハリウッドの人気女優シャーリーズ・セロン主演で映画化された。『モンスター』というタイトルのこの作品はアイリーンに同情的に描かれていたため被害者遺族らは不快感をあらわにしたが、作品は大ヒットし迫真の演技をしたシャーリーズはアカデミー主演女優賞を獲得した。

 映画の影響でアイリーンは可哀想な身の上の女というイメージが強くなったが、彼女を知っている者はみな、映画のタイトルにもあるモンスターそのものだったと語っている。アイリーン自身もそう思っていたからこそ、一日も早い死刑を望んだのだと伝えられている。

Murder Pedia」「YouTube

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