父が息子にペニスを移植 ― 過激で禁忌な【去勢映画】が描いた究極の愛
――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男・天野ミチヒロが、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り!
【今回の映画『メビウス』】

人一倍性欲が強いと自負する韓国映画界の巨匠、キム・ギドク監督。彼が「性欲の根源である性器がなくなると、男はどう行動するのか」という、男子なら想像したくもない発想を映像化した作品、それが世界中に衝撃を与えた『メビウス』だ。作品は2013年のヴェネツィア国際映画祭で上映され、国内外で賛否両論の物議を醸した。一般公開においては過激な性表現は編集を余儀なくされ、2014年の日本公開では「児童ポルノ禁止法」に抵触するシーンが問題視された。
ちなみに作品には一切台詞がなく、登場人物の名前すらない。<全編セリフ無しで饒舌に語られる「性」「家族」「人間」>とは、配給の宣伝部も上手いことを言う。それだけに役者のハードルは高いわけだが、彼らはこれを見事にクリアし、修羅の家族を演じ切った。
■あらすじ/切断されたペニスをめぐって
若い女と浮気する夫が原因で、夫婦の諍いが絶えない家庭。ある晩、思春期真っ盛りの15歳の息子は、見てしまった父親と女のカーセックスをオカズに自慰に耽る。そこを覗き見した母親はショックで狂い、スッキリして寝ている息子のペニスを切断! 母親は狂気の表情を浮かべ、切り取った息子のペニスを夫の目の前で飲み込む。
母親はそのまま失踪。父親はこうなったのも自分のせいと悔い改め、浮気相手と決別。病院に行き自分のペニスも取ってしまう。息子は同級生達にパンツを下ろされるイジメを受け、不登校となる。
父親の浮気相手は息子まで誘惑するビッチぶりだが、不良グループに輪姦される。居合わせた息子も強姦容疑で警察に連行されるが、ペニスがないことを嘲笑した不良のボスを手錠で殴打して大怪我させ、鑑別所送りとなる。
父親は家で一人、石で足の甲を一心不乱に擦っている。皮膚は破れ血が滲むが、次第に痛みは快感へと変わり、射精する。スキン・マスターベーション。息子のために、ペニスを擦らなくてもオーガズムが得られる方法をネットで見つけ試していたのだ。
接見日、それをプリントアウトした紙を息子に手渡す父親。独房でプリントを見て苦笑いする息子は、それを丸めて床に放り投げる。しばらくして、紙を拾い熱心に読み始める息子。壁の割れた欠片を取り出し、足は嫌だったのか腕で試す。このくだりは完全に『明日のジョー』だ。父親代わりの丹下段平が鑑別所に収監されているジョーに、ボクシングの基礎をしたためて出したハガキ「明日のために その1」のエピソードそのままではないか。
息子が出所すると、父親はネットで検索したペニス移植計画を実行する。彼のペニスは病院で保管されていたのだ。自分の息子に自分のムスコを移植する父親……究極の愛だ。接合は成功したが、試しにAVを見ても、雑貨屋の女の口で試しても(苦笑)一向に勃起しない。そんなタイミングで、家出していた母親が突然帰ってくる。
ベッドで寝ている父子の間に割り込む母親は、息子を愛おしく抱き寄せる。すると息子のペニスが勃起する。それを見て三者三様に驚愕(父子の驚きと母親の驚きは意味合いが違う)。母親と息子は魅かれ合い、ついに禁忌の扉が開かれる。母親は布団の中に手を差し入れ、ペニスを手コキ。背徳の快感に声を荒げ、イク息子。涙する母親。戦慄する父親。布団の中で嗚咽する息子。そして一家は……。
■映倫がNG 問題シーンとは?
この作品の公開に際し、まず韓国では「母親が息子の性器を切断」に批判が殺到。日本の映倫に当たる映像物等級委員会(映等委)が、「公の映画館では公開不可」と審査した。そこでキム・ギドクは、いくつかの過激シーンをカットし、映等委に再審査を依頼。それでも審査が覆らないため、彼は映画制作者や映画批評家から署名を集め、「19歳以上なら鑑賞可」のレーティングを勝ち取ったのだ。
ところが日本では、韓国や他国で「作品の芸術性を表現する上で必要」と認められている15歳の少年が女性の乳房を触るシーンが「児童ポルノ禁止法」に抵触する恐れがあると映倫がNGを出した。キム・ギドクは涙を飲んで該当シーンにハサミを入れ、『メビウス』はR15指定でようやく日本公開に至ったのだ。
■キム・ギドクとパンツ愛
ちなみに、この映画には「ペニス・ナイフ・仏像」という3つのメタファーが存在することは衆目の一致するところだろうが、私が特に注目したのは「パンツ」だ。高校生の子持ちの女が見せるパンツは、あらゆる角度からカメラが攻め入り、オナニストの琴線に触れる。また、やたらパンツを下ろすシーンが多いのも特徴だ。これは、キム・ギドクのパンツに対する偏愛を表現したものと勝手に感じている。
タイトルの『メビウス』とは何を意味するのか。キム・ギドクはこう語る。「家族、欲望、性器は全て一つのものから始まっている。元々私たちは欲望から生まれ、欲望を再生するのだ。私たちはまるでメビウスの輪のように一つに繋がれている。だからこそ羨み、忌み嫌い、そして愛するのである」。本来、夫の浮気相手は別の女優で撮影が進んでいたが、諸事情で降板。だが、このアクシデントが思いがけない効果を生んだ。ピンときたキム・ギドクが母親役のイ・ウヌを一人二役に抜擢。高校生の子持ちと、20代の若い女を見事に演じ分けたイ・ウヌ。双方に絡む父子の性。メビウスの輪は、より複雑に捻じれ、繋がったのだ。
(文=天野ミチヒロ)
■天野ミチヒロ
1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイト ネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物 (UMA)案内』(笠倉出版)など。新刊に、『蘇る封印映像』(宝島社)がある。
ウェブ連載・「幻の映画を観た! 怪獣怪人大集合」
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